『ガシャン！』
「きゃぁっ！」
大きな音で飛び起きた。
母さんの声！　両親の寝室か！
両親の寝室のドアを開けると勢いよく風が吹いた。そして薄暗い部屋の中、ベッドの上で震えている母を見つけた。
「母さん！　どうしたの？」
「わからないけど、大きな音がして……窓ガラスが割れたみたいなの」
僕は部屋の照明を付けて周りを見た。
窓ガラスが割れて飛び散り、そこから勢いよく風が吹き込んでいる。
ベッドに目をやると、父の足元に金属バットが落ちている。
「父さん！」
「ああ　父さんは大丈夫だ」
父はそう言ったが、父の足は感覚を失っていて、バットが当たっていてもわからないはずだ。
父の足を母と確認する。
とりあえず当たった形跡はなかったが、念のため救急車を呼んだ。いつもは嫌がるだろう二人も、さすがに今回は救急車を呼ぶことに渋々同意した。
「こんなもの……一体誰が」
母が呟いた。
そうか、当然投げ込んだ奴がいるはず。僕は家を飛び出しアパートの裏手側に回った。
しかし人影はなかった。
待てよ、犯人がまだ近くにいるとしたら両親の傍にいたほうがいい。そう判断した僕は、すぐ家に戻ることにした。
「母さん、警察に電話した？」
僕が尋ねると
「警察には電話しないで」
母は電話しておらず、更に電話はしないで欲しいと言う。明らかに故意にされたことなのになぜ？僕は何度も警察に連絡するよう言ったけど、母も、そして父も警察の世話にはなりたくないと言う。そんなやりとりをしているうちに救急車が到着した。
割れたガラスや窓の修理などの後処理をするため母が家に残り、僕が父に付き添うことになった。
「お前は何も言わなくていい　わかったね」
父さんがいつもとは違う硬い声で言った。
どうしてそんなに頑なに警察を拒むのだろう？　何か秘密があるのかとなんとなく考えた。