繋がれていた左手が熱い。
でも、今繋がれた右手はもっと熱い。
「ねぇ?これも何かの縁だからさ! 私と付き合っちゃわない?」
唐突に。笑いながら、でも繋いだ手を小刻みに震わせて。
うつむいた僕の視線と、僕を見上げて返事を待っている茜さんの視線とが交わった。
「茜さん、僕は父を介護していて、その、付き合うとかっていう時間を取ることができ……」
突然茜さんの顔がアップになり、そしてゆっくりと唇が離れる。
「既成事実を作ったので、拒否権はありません! どうしても嫌なら、私のことを『さん付け』で呼んで手を離して!」
強引だ……強引すぎる……でも……
僕の手は 今まで車椅子を押すためにあった
この人は 僕の状況なんて何も知らないけれど
僕の手を 車椅子から解放してくれている
これからもしも
本当に少しだけでも……
「あの、茜、僕で良いならよろしく」
僕は繋いだ手を強く握った。
茜は弾けるような笑顔で今度は頬に顔を近づけた。
「今度はアモールでお茶しようね」
そう囁くとサッと離れ、来た道を走っていく。
「また明日ね! 空!!」
頬と唇と、そして両手に残ったぬくもりに包まれ、僕は路地裏の夢とアパートの現実の間でほんの少しだけ浮遊していた。
けど……
「あなた、具合はどう?」
「うん、悪くはないよ。空には迷惑をかけてしまうが、そろそろ散歩にも行きたいなぁ」
「そうね、家にずっと居ると気が滅入ってしまうしね」
リビングからそっと離れる。
部屋のドアを気付かれないように開けて、そして閉める。
ねえ、茜
君がくれた両手のぬくもりはもう
でも、今繋がれた右手はもっと熱い。
「ねぇ?これも何かの縁だからさ! 私と付き合っちゃわない?」
唐突に。笑いながら、でも繋いだ手を小刻みに震わせて。
うつむいた僕の視線と、僕を見上げて返事を待っている茜さんの視線とが交わった。
「茜さん、僕は父を介護していて、その、付き合うとかっていう時間を取ることができ……」
突然茜さんの顔がアップになり、そしてゆっくりと唇が離れる。
「既成事実を作ったので、拒否権はありません! どうしても嫌なら、私のことを『さん付け』で呼んで手を離して!」
強引だ……強引すぎる……でも……
僕の手は 今まで車椅子を押すためにあった
この人は 僕の状況なんて何も知らないけれど
僕の手を 車椅子から解放してくれている
これからもしも
本当に少しだけでも……
「あの、茜、僕で良いならよろしく」
僕は繋いだ手を強く握った。
茜は弾けるような笑顔で今度は頬に顔を近づけた。
「今度はアモールでお茶しようね」
そう囁くとサッと離れ、来た道を走っていく。
「また明日ね! 空!!」
頬と唇と、そして両手に残ったぬくもりに包まれ、僕は路地裏の夢とアパートの現実の間でほんの少しだけ浮遊していた。
けど……
「あなた、具合はどう?」
「うん、悪くはないよ。空には迷惑をかけてしまうが、そろそろ散歩にも行きたいなぁ」
「そうね、家にずっと居ると気が滅入ってしまうしね」
リビングからそっと離れる。
部屋のドアを気付かれないように開けて、そして閉める。
ねえ、茜
君がくれた両手のぬくもりはもう
