海の底にいるみたいで、誰の声も聞こえないはずなのに。

誰かに名前を呼ばれている。

この声を知っている気がする。

誰だっけ?

ずっと大切で、傍にいたいと思っていた気がする。

なのに、思い出せない。

「ーーー・・・」

悲しそうな声が聞こえてくる。

声がする方へと手を伸ばす。

だけど、海の中にいるみたいに腕が動かない。

「ーーー・・・」

この声を聴いていたくない。

今すぐ、抱きしめて慰めたい。

真っ暗な海の底で、漂っている。

もう一度、水面に向かって手をあげる。

あげた手のひらは、優しくて暖かいものに包まれる。


そして、水面から顔を出す。