また、次回…?


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見事にマルしかつかない
答案を見て、俺は絶句していた。

「お前、すごいぞ……まさか、本当に全問正解するとは……」
「へっへー、俺もやればできる子なんだぜ!」

本気の出し方を
ママの腹に忘れてなかっただろ、
とふんぞり返っている。

「約束どおり、爽の歴史も教えてくれるんだろ?」  

星を宿して見つめる瞳に、
俺は盛大にため息をついた。

「……ああ、約束だからな。けど、なんでそんなに俺のことを知りたがるんだよ」
「好きな奴の歴史を知りたいって言ったのは爽だろ? 当たり前だよ。あ、さては爽も俺の歴史を知りたいんだなー??」

自分の放った言葉が、
無垢な刃となって返ってきた。

好きな奴の歴史を知りたい――

けど、俺の"すき"と
弓月の"すき"は、
ベクトルが違うことは
解っている。

唐突に、
絶海の孤島に
取り残された気分になる。

孤島から脱出したくて、
また暴走機関車となり、
今度はブレーキを探す。
終わりの見えない曲がり角を奔っているようだ。

長いため息をつき、
俺は淡々と語り始めた。

「……中学で彼女はいた。一時期だが」
「いいなあ、やっぱ彼女いたのかー! かわいかったんでしょ? 写真とかないの?」
「ない」
「ちぇ、なんだよ。 じゃあ今は? 彼女いるの??」
「彼女はいない」
「彼女、は? じゃあ好きな人がいるってことか?」
 
妙なところで鋭いやつ。
嘘はなしだぞ、
と詰め寄る弓月に、
俺は目をそらしながら
回答を続けた。

「はぁ⋯⋯好きな奴ならいる」
「えっ、ほんと!? 誰? 俺の知ってる人? 俺らと同じクラス!?」
「よく知ってるし同じクラスだ」
「うおーー!! だれ? だれ? ヒントくれ!!」

鼻息を荒くし、
興味津々に俺を質問攻めにする。

――この能天気野郎に、
一泡吹かせてやろうか。

俺の中で、
黒い雨雲のような感情が
首をもたげた。

目を一番星のようにして
俺の返答を待ちわびる弓月。

その栗色の癖っ毛を弄び、
奴の柔らかな頬を
いきなり(わし)掴んだ。