「じゃ、またねー」


 手を振る澪と別れ、私は帰路に就いた。
 家には車が一台止まっていた。珍しく、父が先に帰っているようだった。

 私は少し息を吸って、家に入った。

 たまたまリビングから出てきた父と目が合う。


「…おかえり」


 父の言葉に私は、うん、とだけ返した。

 私が片手に提げた包みに、父の視線が注がれているのを感じた。


「…弁当ありがとう。おいしかった」


 食べてもいないくせに、そんなことを言う。
 父は、そうか、と短く返して、私に背を向けて二階に消えていった。

 立ち尽くしていた私は、父が見えなくなった瞬間、小さく息をついた。