======== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 物部満百合(まゆり)・・・物部一朗太と栞(しおり)の娘。
 久保田健太郎・・・久保田誠とあつこの息子。
 大文字おさむ・・・大文字伝子と学の息子。
 福本めぐみ・・・福本英二と祥子の娘。
 依田悦子・・・依田俊介と慶子の娘。
 服部千香乃(ちかの)・・・服部源一郎とコウの娘。
 南原未玖(みく)・・・南原龍之介と文子(ふみこ)の娘。
 山城みどり・・・山城順と蘭の娘。
 愛宕悦司・・・愛宕寛治とみちるの息子。

 藤堂所縁(ゆかり)・・・健太郎の担任。ミラクル9の顧問。
 鈴木栄太・・・小学校校長。

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 ==ミラクル9とは、大文字伝子達の子供達が作った、サークルのことである。==
 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 午後3時半。モール外の公園。
 健太郎達は、野球をしていた。監督は勿論、藤堂所縁。
 ファウルボールを追って、藤堂が走って行った先に帽子が飛んできた。
 今日は、風が強い。拾ったところに紳士がやって来た。
 「拾ってくれてありがとう。ところで、野球とお兄さんの命、どっちが大切かな?」
 促されるまま、藤堂は、紳士の車リンカーンに乗って、どこかへ行った。
 そこには、ボールが落ちていた。
 午後4時。リンカーンの中。
 「どこに連れて行く気?私が誰か知ってるの?」
 藤堂の問いに、紳士のような男は答えなかった。
 さっきは、拳銃を突きつけられ、子供達へ危害が及んでは?と、クルマに乗ったが、藤堂は、薄気味悪いとしか思えなかった。拳銃はオモチャだったからだ。
 午後5時。春日部市の、とある病院。
 クルマの運転手と共に、紳士は藤堂に後ろから拳銃を突きつけながら病室に連れて来た。
 入院患者のベッドの脇に、写真立てがあった。
 兄妹らしき人物が写っている。
 妹らしき人物は、どことなく藤堂に似ていた。
 入院患者は、酸素マスクを着けており、眼はうつろだ。
 「旦那様、お連れしました。」
 入院患者は、頭を左右に振った。
 何か拒否しているようだ。
 藤堂は全てを察した。末期を迎えた、この人物は身内に来させたかった。
 だが、叶わないことだった。
 藤堂は、身代わりに選ばれたのだ。
 藤堂が到着して10分後、容態が急変した。
 医師と看護師が跳んできた。
 医師は「臨終宣言」をした。
 愛宕警部とミラクル9が到着した。
 紳士は、愛宕警部に言った。
 「逃げ隠れは致しません。葬儀会館に運んで、葬儀の手配を済ますまで待って頂けませんか?実は、旦那様をお連れして散歩中に、この小学校の先生と生徒を見かけたことがあります。旦那様は、亡くなったお嬢様の名前を口にされました。一刻の猶予もありませんでした。事情を話すと時間がかかります。結果的に拉致したのですから、罪は償います。旦那様には、執事の私と運転手しかいない、環境で過ごされておいででした。申し訳ありません。」
 執事と改めて名乗った男と運転手の男に、愛宕警部は呆れた。
 翌日。午後7時。葬儀会館。
 愛宕警部の計らいで、誘拐拉致された事件では無くなったので、不起訴。
 何しろ、藤堂が「知り合いの方に呼ばれて、お迎えの車に乗っただけです。」と証言したのだから。
 ミラクル9と藤堂、鈴木校長は、通夜に参加した。告別式には、疎遠にしていた親類が来るらしい。
 藤堂達が帰る時、執事と運転手は涙を流して、また土下座をした。
 「藤堂先生。初めから判っていたのですね。だからDDバッジを押さなかった。押さなくとも移動場所は判る。押さなければ危険な状態ではない。EITOとは、長い付き合いになったから、私は、藤堂先生を信じることにしました。健太郎君達にも、信じるよう諭しました。あの子達は、眼の前で誘拐された、とショックを受けていましたから。世の中、色んなケースの人生がある。まだまだ修行が足りませんね、私は。」
 タクシーの中で、鈴木校長は、藤堂を褒め讃えた。
 藤堂のスマホにメールが届いた。『弟の』弓弦(ゆずる)からだった。藤堂に兄はいないのだ。メールには、『グッジョブ!!』のスタンプがあった。
 ―完―