実家から車で行ったことはあるが、学校から自分1人でいくのは初めてだった。どう行ったら良いのかわからないので、とりあえずスマホで神社を検索するとホームページが出てくる。それに行き方が書いてあった。駅からは近そうだった。
最寄り駅に大きなスーパーがあって、更にアーケード街もあっていろんなお店がある。本当にこんなに栄えている駅が、ばあちゃんと行っていた神社があるのかと思うと不安だった。
ばあちゃんのおまけでついて行って、用事が終わるまで暇を持て余して一人で遊んでいることはよくあった。けれど、あまり離れて遊ぶということはなかったので、周りに何があるのかはわからない。
駅を離れると住宅街になって、さらに進んでいくと大きな木々が見えたものの鳥居の前まで来るまで半信半疑だった。鳥居の前に立ってみるとああ、ここだ。と記憶が急に蘇ってくる。神社にしては、珍しい登り龍と下り龍が彫られた、石造りの大きな鳥居がある。本殿までまっすぐの美しい景観の参道がある。周りには参道を囲むように大木が植えられていて四季で色を変える。
「猫ちゃん!」
鳥居を潜ったら、鳥居のすぐ後ろに人がいた。
声がした方向をみると、金髪をお団子にしている女性がいた。耳には無数のピアスをいている。彼女の手の先をみると、茶色の猫がぐるぐると喉を鳴らして喉を撫でられていた。
「かわいいねーかわいいねー」
彼女の手先も、手首にも刺青が彫ってあった。
顔を緩めているが、派手で真っ赤なドット模様の羽織を羽織っていてパッションピンクのリュックを背負っている。しかも、足元は目に優しくない蛍光色のクロックスを履いている。
「…」
関わらない方がいい。
僕が振り返ったので、目があった。
けれど、一応ぺこりと頭を下げてまっすぐを見直した。
何も見てませんよ。何も見てませんから。不快だったらごめんなさいねー…と、心の中で呪文のように唱えた。
「あんた、ユウキっしょ?」
「!」
僕はドキッとした。
違いますとも言えずに、どうしたら良いかと思っていると、立ち上がって近づいてくる。その瞬間、耳鳴りがキーンとなって頭を絞められるような感覚がした。僕に近づいてくるその人から半歩後ずさる。
「やっぱユウキぢゃん」
「?」
どちら様?
前まで回ってきて向かい合う。よく見ると眉毛が全部ない。控えめに言ってもギャルが、僕を見て綺麗に手入れされた鋭利な爪で僕を指差した。相手は僕を知り合いを見るような目で見ている。不思議だったのは、ギャルから嗅ぎ慣れた線香の匂いが顔ってきたことだ。この見た目だったら、鼻をつんざくような安めの香水が臭ってきてもおかしくはないが、ばあちゃんから香ってくる匂いと一緒だった。
「美人だね」
「…」
どういう反応をしたらいいのかわからない。
褒められているのだろうが、初対面だし。否定するのも違うというか…
クロックスのおかげで身長はユウキよりも少し小さいくらいだ。
「ばあちゃんと全然似てないね」
「えっ」
「そこにいるじゃん」
ギャルは僕の少し後ろを指差した。
「ばあちゃん!?」
ばあちゃんは、遺影と同じ姿でそこにいた。
「こないだブリー」
ギャルは、僕のばあちゃんに指まで入っている刺青の入っている手でひらひらと手を振った。腕には巨大なビー玉ほどの大きさの水晶のブレスレットをしていて、手を振るたびに激しく音を立てた。この人は、ばあちゃんが見えているのだ。見た目に反して…いや、人を見た目で判断してはいけないのだが、なんというか人は見かけによらないと言っても限度がある。
「いやーもう、凹んぢゃって凹んぢゃってやばいよ。そう魂落としたあ…え?そうなの?まじ!?え!!?やばっ!マジかぁよかったぁ。これでアイツ救われると思うわ。ってかさぁーテストも全然手についてなくてさーバカに拍車がかかってるっつーかさ。…え?ユウキくんなしなの?!すごーやっぱ頭いいんだ。え?ばあちゃんに似てないよぉー…なははっ、ユウキの方が美人じゃん。似なくてよかったねー」
ばあちゃんは、遺影の状態で僕の後ろに浮かんでいる。
そのばあちゃんの口は動いていない。けれど、ギャルは早口でばあちゃんに話しかけていた。例えばあちゃんの口が動いていたとしても、ギャルの早口でばあちゃんが話せていたかと言われると疑問がある。
「ああ、まぁ、こっちで上手くやっとくわ。ありがとねー」
なんか、ものすごく既視感がある。
ばあちゃんは、姿を消した。
「さて、ユウキ」
「は、はい…っ」
ギャルはけばけばしい化粧をしていない。日焼けもしていない。けれど眼圧はあって、じっと見られる。
「…ふーん…」
「…」
既視感…
心のざわつきや、このじっと見られた後の反応。懐かしささえ感じる何か。
じっと見られると耳鳴りが強くなった。そして頭を輪ゴムや紐のようなもので閉められた時のような感覚に似た頭痛がする。
「ふふふっ」
ギャルは目元を緩める。
「ああ、ごめんね…あたしの後ろ見える?」
「えっ…?」
ギャルは、穏やかに微笑んで後ろを親指で刺していた。
「いいよ見ても。ちゃんと、見てごらん」
ーーーーーーーー ちゃ ん と 見 て ごら ん…??
この言葉を言われたのは、今までで3人目だ。
1人目は、ばあちゃん。2人目は、ノゾミだった。
「!!」
僕は、中途半端に入れていたスイッチを入れてギャルの後ろを見る。
ギャルは、微笑んで立っているが、彼女の後ろを見た瞬間、僕は腰を抜かして、その場に尻餅をついた。
「なははっ、さっすが!いい反応すんね」
にっこり微笑んでいるギャルとのギャップに僕は目を見開いて、何も言えなかった。僕よりも背が低いと思っていたのに、後ろのものをひっくるめると彼女はかなり巨大な存在に見えて僕は鳥肌がたった。
「えっ…あっ…」
名刺がわりに…とでも言いたいのだろうか。
彼女の後ろには、今まで見たこともない数の霊がいた。それだけじゃない。絶対神様だと確信できるような大きな一部や、見たこともない光の玉が浮いていて、ミラーボールを見ているような感じになって眩しくて目を細める。
「魂は落とさないでね」
なははと彼女は笑って、尻餅をついた僕に手を差し出した。
ビックリすると魂を落とすと言われているが、それをあえていうということは、彼女はそれについてよく知っているのだろう。
「あ、はぁ…」
僕は彼女の刺青だらけの手を取って、立ち上がる。
通りで、耳鳴りや圧迫感があったわけだ。あれだけ色々背負っていたら、普通の人の圧力だけに収まるはずはない。それを常に背負えてしまう彼女の能力も底がしれない。それは、どこか懐かしくきっとばあちゃんと似ているからかもしれない。
「私も霊媒師なの」
「はい」
だろうな。
否定はしない。それだけ多くのいろんなものを背負っていたら説得力もある。ばあちゃんでさえ、こんなにいろんなものは背負っていなかった。
「あっ…!」
僕は、彼女の背中にいる多くの存在から見覚えのある人物がいた。
まるで、スクールバックを埋め尽くす落書きか、もしくはぬいぐるみかのように背後にいる中から知り合いを見つけた。
「そう」
すると彼女は頷いた。
僕が見えるのをわかっていて、その存在を見せたのだ。
「わかるかな?」
色がついていて、心配そうに一点を見つめている。
それは生き霊だった。表情から、不安そうではあったがどこか泣きそうでもあった。何か罪悪感で押しつぶされそうな気持ちも伝わってくるし、そわそわと落ち着かない気持ちを抱いているようでもある。
「えっと…」
僕は、さっきから何も言葉を発せてない。
けれど、彼女はユウキのいうことが全てわかっているかのようでもあった。
「行ってあげて。待ってるから」
よく見れば、ギャルは手だけじゃなく首にも刺青が入っていた。
これは、ギャルというかなんと言えばいいか。それに気づいてさらに言葉が迷走する。
「え、は はいっ…!」
僕は、ギャルに背中を押されて思わず走り出した。
僕とギャルとのやりとりを普通の人が見ていたら絶対不思議に思ったに違いない。見えない人が見たって決して伝わらない会話だったが、僕たちには分かってしまう。きっとそれもひっくるめて、試されていたのかもしれないと、後になって考えれば思うことだが、この時は気づかなかった。
なにせ、そこにいた生き霊の不安そうな表情が、ノゾミだったから。
最寄り駅に大きなスーパーがあって、更にアーケード街もあっていろんなお店がある。本当にこんなに栄えている駅が、ばあちゃんと行っていた神社があるのかと思うと不安だった。
ばあちゃんのおまけでついて行って、用事が終わるまで暇を持て余して一人で遊んでいることはよくあった。けれど、あまり離れて遊ぶということはなかったので、周りに何があるのかはわからない。
駅を離れると住宅街になって、さらに進んでいくと大きな木々が見えたものの鳥居の前まで来るまで半信半疑だった。鳥居の前に立ってみるとああ、ここだ。と記憶が急に蘇ってくる。神社にしては、珍しい登り龍と下り龍が彫られた、石造りの大きな鳥居がある。本殿までまっすぐの美しい景観の参道がある。周りには参道を囲むように大木が植えられていて四季で色を変える。
「猫ちゃん!」
鳥居を潜ったら、鳥居のすぐ後ろに人がいた。
声がした方向をみると、金髪をお団子にしている女性がいた。耳には無数のピアスをいている。彼女の手の先をみると、茶色の猫がぐるぐると喉を鳴らして喉を撫でられていた。
「かわいいねーかわいいねー」
彼女の手先も、手首にも刺青が彫ってあった。
顔を緩めているが、派手で真っ赤なドット模様の羽織を羽織っていてパッションピンクのリュックを背負っている。しかも、足元は目に優しくない蛍光色のクロックスを履いている。
「…」
関わらない方がいい。
僕が振り返ったので、目があった。
けれど、一応ぺこりと頭を下げてまっすぐを見直した。
何も見てませんよ。何も見てませんから。不快だったらごめんなさいねー…と、心の中で呪文のように唱えた。
「あんた、ユウキっしょ?」
「!」
僕はドキッとした。
違いますとも言えずに、どうしたら良いかと思っていると、立ち上がって近づいてくる。その瞬間、耳鳴りがキーンとなって頭を絞められるような感覚がした。僕に近づいてくるその人から半歩後ずさる。
「やっぱユウキぢゃん」
「?」
どちら様?
前まで回ってきて向かい合う。よく見ると眉毛が全部ない。控えめに言ってもギャルが、僕を見て綺麗に手入れされた鋭利な爪で僕を指差した。相手は僕を知り合いを見るような目で見ている。不思議だったのは、ギャルから嗅ぎ慣れた線香の匂いが顔ってきたことだ。この見た目だったら、鼻をつんざくような安めの香水が臭ってきてもおかしくはないが、ばあちゃんから香ってくる匂いと一緒だった。
「美人だね」
「…」
どういう反応をしたらいいのかわからない。
褒められているのだろうが、初対面だし。否定するのも違うというか…
クロックスのおかげで身長はユウキよりも少し小さいくらいだ。
「ばあちゃんと全然似てないね」
「えっ」
「そこにいるじゃん」
ギャルは僕の少し後ろを指差した。
「ばあちゃん!?」
ばあちゃんは、遺影と同じ姿でそこにいた。
「こないだブリー」
ギャルは、僕のばあちゃんに指まで入っている刺青の入っている手でひらひらと手を振った。腕には巨大なビー玉ほどの大きさの水晶のブレスレットをしていて、手を振るたびに激しく音を立てた。この人は、ばあちゃんが見えているのだ。見た目に反して…いや、人を見た目で判断してはいけないのだが、なんというか人は見かけによらないと言っても限度がある。
「いやーもう、凹んぢゃって凹んぢゃってやばいよ。そう魂落としたあ…え?そうなの?まじ!?え!!?やばっ!マジかぁよかったぁ。これでアイツ救われると思うわ。ってかさぁーテストも全然手についてなくてさーバカに拍車がかかってるっつーかさ。…え?ユウキくんなしなの?!すごーやっぱ頭いいんだ。え?ばあちゃんに似てないよぉー…なははっ、ユウキの方が美人じゃん。似なくてよかったねー」
ばあちゃんは、遺影の状態で僕の後ろに浮かんでいる。
そのばあちゃんの口は動いていない。けれど、ギャルは早口でばあちゃんに話しかけていた。例えばあちゃんの口が動いていたとしても、ギャルの早口でばあちゃんが話せていたかと言われると疑問がある。
「ああ、まぁ、こっちで上手くやっとくわ。ありがとねー」
なんか、ものすごく既視感がある。
ばあちゃんは、姿を消した。
「さて、ユウキ」
「は、はい…っ」
ギャルはけばけばしい化粧をしていない。日焼けもしていない。けれど眼圧はあって、じっと見られる。
「…ふーん…」
「…」
既視感…
心のざわつきや、このじっと見られた後の反応。懐かしささえ感じる何か。
じっと見られると耳鳴りが強くなった。そして頭を輪ゴムや紐のようなもので閉められた時のような感覚に似た頭痛がする。
「ふふふっ」
ギャルは目元を緩める。
「ああ、ごめんね…あたしの後ろ見える?」
「えっ…?」
ギャルは、穏やかに微笑んで後ろを親指で刺していた。
「いいよ見ても。ちゃんと、見てごらん」
ーーーーーーーー ちゃ ん と 見 て ごら ん…??
この言葉を言われたのは、今までで3人目だ。
1人目は、ばあちゃん。2人目は、ノゾミだった。
「!!」
僕は、中途半端に入れていたスイッチを入れてギャルの後ろを見る。
ギャルは、微笑んで立っているが、彼女の後ろを見た瞬間、僕は腰を抜かして、その場に尻餅をついた。
「なははっ、さっすが!いい反応すんね」
にっこり微笑んでいるギャルとのギャップに僕は目を見開いて、何も言えなかった。僕よりも背が低いと思っていたのに、後ろのものをひっくるめると彼女はかなり巨大な存在に見えて僕は鳥肌がたった。
「えっ…あっ…」
名刺がわりに…とでも言いたいのだろうか。
彼女の後ろには、今まで見たこともない数の霊がいた。それだけじゃない。絶対神様だと確信できるような大きな一部や、見たこともない光の玉が浮いていて、ミラーボールを見ているような感じになって眩しくて目を細める。
「魂は落とさないでね」
なははと彼女は笑って、尻餅をついた僕に手を差し出した。
ビックリすると魂を落とすと言われているが、それをあえていうということは、彼女はそれについてよく知っているのだろう。
「あ、はぁ…」
僕は彼女の刺青だらけの手を取って、立ち上がる。
通りで、耳鳴りや圧迫感があったわけだ。あれだけ色々背負っていたら、普通の人の圧力だけに収まるはずはない。それを常に背負えてしまう彼女の能力も底がしれない。それは、どこか懐かしくきっとばあちゃんと似ているからかもしれない。
「私も霊媒師なの」
「はい」
だろうな。
否定はしない。それだけ多くのいろんなものを背負っていたら説得力もある。ばあちゃんでさえ、こんなにいろんなものは背負っていなかった。
「あっ…!」
僕は、彼女の背中にいる多くの存在から見覚えのある人物がいた。
まるで、スクールバックを埋め尽くす落書きか、もしくはぬいぐるみかのように背後にいる中から知り合いを見つけた。
「そう」
すると彼女は頷いた。
僕が見えるのをわかっていて、その存在を見せたのだ。
「わかるかな?」
色がついていて、心配そうに一点を見つめている。
それは生き霊だった。表情から、不安そうではあったがどこか泣きそうでもあった。何か罪悪感で押しつぶされそうな気持ちも伝わってくるし、そわそわと落ち着かない気持ちを抱いているようでもある。
「えっと…」
僕は、さっきから何も言葉を発せてない。
けれど、彼女はユウキのいうことが全てわかっているかのようでもあった。
「行ってあげて。待ってるから」
よく見れば、ギャルは手だけじゃなく首にも刺青が入っていた。
これは、ギャルというかなんと言えばいいか。それに気づいてさらに言葉が迷走する。
「え、は はいっ…!」
僕は、ギャルに背中を押されて思わず走り出した。
僕とギャルとのやりとりを普通の人が見ていたら絶対不思議に思ったに違いない。見えない人が見たって決して伝わらない会話だったが、僕たちには分かってしまう。きっとそれもひっくるめて、試されていたのかもしれないと、後になって考えれば思うことだが、この時は気づかなかった。
なにせ、そこにいた生き霊の不安そうな表情が、ノゾミだったから。
