『お前だって嫌だろ』
嫌?何が??
僕の何が嫌なの?
はぁ?
はっきりいえばいいじゃん。
僕はノゾミに何を期待をしていたのだろう。
僕が好きってあんなにいってたくせに…何が気に入らないんだよ。
『えっ…だって、お前に言ってねぇし』
何それ。信じらんねぇ そんな言い方ねぇだろ
今までの好きだの口説くだのってあれはなんだったの?
僕に言ってなかったってどういうことだよ。誰に言ってたんだよ。
なんだか、ばあちゃんとノゾミの間で話が成立していて、僕は何もわからないだろうという疎外感を感じて気分が悪い。
もう知らん。
お前なんてもう友達でもなんでもねぇよ
『えっ、ユウキ…??』
サイッテーだな
ばあちゃんがいなくて不安だったら守ってやるって。
そばにいてくれるって。そう言ってくれてたじゃん。
『は?なんでだよ?おいっ…』
触んじゃねぇよ
掴まれた腕が痛かった。
それと同時に目頭が熱くなった。
『何怒ってんだよ。おい、ユウキ』
ばあちゃんのバカ。
ノゾミのバカ。
2人とも大っ嫌い。
『教えろよ。えっ…』
うっせぇ、ついてくんな
目頭が熱くて視界が歪む。ノゾミは驚いてそれ以上ついてこなかった。
「…はあぁ」
ため息をつくために、吸い込んで盛大に吐き出す。腹に乗っていた猫がまた目を開けた。
先日のやりとりを暇さえあれば、何度もループしている。過去の記憶に答えなんてない。言い訳ばかりが募っていく。
ばあちゃんが、ノゾミに吐き出させた思いや言葉に対して、僕の中に答えが見つからない。
でも、ノゾミが言った言葉にむかついたのは確かで、なんでムカついたのかについては分かりかけてはいるが、完全に掴めていない。だから、答えを探すように何度も思いを記憶を辿るものの、感情が落ちて行くだけで、先が見えない。
「い…っ!!」
腹の上の猫は、大きなあくびをしていた。するとゆっくり両手を伸ばす。猫は、なんの気遣いもせず鋭い爪を限界まで伸ばしたものだから僕の頬に限界まで伸び切った爪が当たる。
「ったぁー…っ!!」
むぎゅっと肉乳に戻るのと同時に、恐れていたことが起こる。
ガリっと爪が僕の頬を引っ掻いた。反射的に顔を背けたため、かけていた眼鏡もズレて、目に入りそうになったので僕は猫をガッチリ両手で掴んで上体を起こした。
「…引っ掻かれた」
姉は縁側で洗濯物を畳んでいた。
僕が想像以上に不機嫌だったので、様子を伺っていたみたいだが、起き上がったので視線をあげて姉と目があった。僕は姉に短く理由を告げると微笑んでいる姉がいう。
「あら、血が出てるね」
「…」
猫を睨むと「なんですか?まだ寝られます」という表情をしていたが、強制的に掴まれているのが気に召さなかったらしく嫌々をして僕から離れていった。
「最悪」
「消毒しときな」
「…」
これ以上猫を咎めてもしょうがない。
猫は僕からゆっくり離れていって、姉の方へと歩いていった。洗濯物を器用に避けて、腰を下ろして毛繕いをしだした。僕はその丸まった背中を睨む。僕はソファーから立ち上がって薬箱がある棚まで歩く。途中、洗濯物を跨いでいく。
「バチが当たったんじゃないの?」
「…」
姉は僕の傷心に塩を送りたいようだ。
僕が薬箱から塗り薬を取り出して指につけて、洗面所の鏡確認しながら赤く線になっている頬を見ながら薬を塗る。
「せっかく、ばあちゃんの連れてきた友達大事にしないから」
「痛っ」
何も答えたくなかった。
部屋に戻っても良かったが、部屋に戻っても別にやることがない。
姉の言葉に苛立ちながらソファーに戻ろうとしたら、さっき通ったはずのドアの端に額をぶつけた。距離感を間違って早めに曲がってしまったのが悪い。
「ほら」
けれど、姉はそんな僕の粗相を見て、ばあちゃんが何かしていると思ったのだろう。姉は、僕やばあちゃんみたいに、見えたり聞こえたり話せたりはできないから。
「絶対ばあちゃんだって。ノンちゃんと会ったほうがいいって」
「…」
頑なに答えなかった。
どうせ僕の不注意なだけだ。偶然、たまたま。
何でもかんでも自分の不注意や不幸を霊のせいにするのはよくない。ばあちゃんは生前そう教えてくれた。それは僕もそう思う。
心霊番組や都市伝説の類が流行っていた頃に、番組に感化された子どもたちは自分が転んだり怪我をしたりしたのをこぞって不思議な現象のせいにしたがっていた。さも、怖い話をするかのように語っていたが、僕から言わせるとなんてことはない、ただの不注意に過ぎなかった。中には一部、先祖霊が警告を発していたこともあったが、そんな話をしたところで図にのるだけだし、本当に困っていたらばあちゃんの所に行くから、僕は何もしない。もし仮に僕が良かれと思って教えてあげても、家に帰ったらばあちゃんにバレて怒られるから絶対に口出しすることはなかった。
そういえば、家にきてばあちゃんの相談に来た人の中にも、自分の私欲を見えないもののせいにしたがる人もいた。半信半疑な身内を安心させて私腹を肥やすためだけに、霊媒師にお墨付きをもらいたいがために利用しようとする人だったが、ばあちゃんには一切通用しなかった。ばあちゃんが自分を利用されそうになるのを察して、依頼人を突き放すと自分が求めていた助言を貰えなかったことに激昂してばあちゃんに暴言を吐いて行く人もいた。
「痛っ」
今度は、ソファーに戻るときに小指をぶつけた。
だから、これは全部自分の不注意であって、決してばあちゃんが警告を発しているわけじゃない。そう自分に言い聞かせた。
「もう!」
苛立ち紛れにソファーに勢い倒れ込んだら、さっきまで感じなかった場所から猫のネズミのおもちゃが出てくる。体の下にどうやら敷いていたらしい。
「ばあちゃん!?」
「ふふっ」
たまたま…
そう思いたかったが、あんまりにも連続したので流石に文句を言った。
僕はスイッチを切っているから、どこにばあちゃんがいるか分からない。スイッチを入れてばあちゃんが見えたとして、怒られて強制的にノゾミへ会いに行かされるかもしれない。それが嫌だったからここ数日は断固としてスイッチを入れていない。もしこれが、ばあちゃんの仕業だったとしたら、僕に強制的にスイッチを入れさせようとしているはずだ。そんな見え透いた罠に乗ってやるつもりはない。見えなければ怒られることもないのだ。
そんな僕の頑なな心情を察したのか、姉は「そらみたことか」とおかしそうに微笑んでいた。
嫌?何が??
僕の何が嫌なの?
はぁ?
はっきりいえばいいじゃん。
僕はノゾミに何を期待をしていたのだろう。
僕が好きってあんなにいってたくせに…何が気に入らないんだよ。
『えっ…だって、お前に言ってねぇし』
何それ。信じらんねぇ そんな言い方ねぇだろ
今までの好きだの口説くだのってあれはなんだったの?
僕に言ってなかったってどういうことだよ。誰に言ってたんだよ。
なんだか、ばあちゃんとノゾミの間で話が成立していて、僕は何もわからないだろうという疎外感を感じて気分が悪い。
もう知らん。
お前なんてもう友達でもなんでもねぇよ
『えっ、ユウキ…??』
サイッテーだな
ばあちゃんがいなくて不安だったら守ってやるって。
そばにいてくれるって。そう言ってくれてたじゃん。
『は?なんでだよ?おいっ…』
触んじゃねぇよ
掴まれた腕が痛かった。
それと同時に目頭が熱くなった。
『何怒ってんだよ。おい、ユウキ』
ばあちゃんのバカ。
ノゾミのバカ。
2人とも大っ嫌い。
『教えろよ。えっ…』
うっせぇ、ついてくんな
目頭が熱くて視界が歪む。ノゾミは驚いてそれ以上ついてこなかった。
「…はあぁ」
ため息をつくために、吸い込んで盛大に吐き出す。腹に乗っていた猫がまた目を開けた。
先日のやりとりを暇さえあれば、何度もループしている。過去の記憶に答えなんてない。言い訳ばかりが募っていく。
ばあちゃんが、ノゾミに吐き出させた思いや言葉に対して、僕の中に答えが見つからない。
でも、ノゾミが言った言葉にむかついたのは確かで、なんでムカついたのかについては分かりかけてはいるが、完全に掴めていない。だから、答えを探すように何度も思いを記憶を辿るものの、感情が落ちて行くだけで、先が見えない。
「い…っ!!」
腹の上の猫は、大きなあくびをしていた。するとゆっくり両手を伸ばす。猫は、なんの気遣いもせず鋭い爪を限界まで伸ばしたものだから僕の頬に限界まで伸び切った爪が当たる。
「ったぁー…っ!!」
むぎゅっと肉乳に戻るのと同時に、恐れていたことが起こる。
ガリっと爪が僕の頬を引っ掻いた。反射的に顔を背けたため、かけていた眼鏡もズレて、目に入りそうになったので僕は猫をガッチリ両手で掴んで上体を起こした。
「…引っ掻かれた」
姉は縁側で洗濯物を畳んでいた。
僕が想像以上に不機嫌だったので、様子を伺っていたみたいだが、起き上がったので視線をあげて姉と目があった。僕は姉に短く理由を告げると微笑んでいる姉がいう。
「あら、血が出てるね」
「…」
猫を睨むと「なんですか?まだ寝られます」という表情をしていたが、強制的に掴まれているのが気に召さなかったらしく嫌々をして僕から離れていった。
「最悪」
「消毒しときな」
「…」
これ以上猫を咎めてもしょうがない。
猫は僕からゆっくり離れていって、姉の方へと歩いていった。洗濯物を器用に避けて、腰を下ろして毛繕いをしだした。僕はその丸まった背中を睨む。僕はソファーから立ち上がって薬箱がある棚まで歩く。途中、洗濯物を跨いでいく。
「バチが当たったんじゃないの?」
「…」
姉は僕の傷心に塩を送りたいようだ。
僕が薬箱から塗り薬を取り出して指につけて、洗面所の鏡確認しながら赤く線になっている頬を見ながら薬を塗る。
「せっかく、ばあちゃんの連れてきた友達大事にしないから」
「痛っ」
何も答えたくなかった。
部屋に戻っても良かったが、部屋に戻っても別にやることがない。
姉の言葉に苛立ちながらソファーに戻ろうとしたら、さっき通ったはずのドアの端に額をぶつけた。距離感を間違って早めに曲がってしまったのが悪い。
「ほら」
けれど、姉はそんな僕の粗相を見て、ばあちゃんが何かしていると思ったのだろう。姉は、僕やばあちゃんみたいに、見えたり聞こえたり話せたりはできないから。
「絶対ばあちゃんだって。ノンちゃんと会ったほうがいいって」
「…」
頑なに答えなかった。
どうせ僕の不注意なだけだ。偶然、たまたま。
何でもかんでも自分の不注意や不幸を霊のせいにするのはよくない。ばあちゃんは生前そう教えてくれた。それは僕もそう思う。
心霊番組や都市伝説の類が流行っていた頃に、番組に感化された子どもたちは自分が転んだり怪我をしたりしたのをこぞって不思議な現象のせいにしたがっていた。さも、怖い話をするかのように語っていたが、僕から言わせるとなんてことはない、ただの不注意に過ぎなかった。中には一部、先祖霊が警告を発していたこともあったが、そんな話をしたところで図にのるだけだし、本当に困っていたらばあちゃんの所に行くから、僕は何もしない。もし仮に僕が良かれと思って教えてあげても、家に帰ったらばあちゃんにバレて怒られるから絶対に口出しすることはなかった。
そういえば、家にきてばあちゃんの相談に来た人の中にも、自分の私欲を見えないもののせいにしたがる人もいた。半信半疑な身内を安心させて私腹を肥やすためだけに、霊媒師にお墨付きをもらいたいがために利用しようとする人だったが、ばあちゃんには一切通用しなかった。ばあちゃんが自分を利用されそうになるのを察して、依頼人を突き放すと自分が求めていた助言を貰えなかったことに激昂してばあちゃんに暴言を吐いて行く人もいた。
「痛っ」
今度は、ソファーに戻るときに小指をぶつけた。
だから、これは全部自分の不注意であって、決してばあちゃんが警告を発しているわけじゃない。そう自分に言い聞かせた。
「もう!」
苛立ち紛れにソファーに勢い倒れ込んだら、さっきまで感じなかった場所から猫のネズミのおもちゃが出てくる。体の下にどうやら敷いていたらしい。
「ばあちゃん!?」
「ふふっ」
たまたま…
そう思いたかったが、あんまりにも連続したので流石に文句を言った。
僕はスイッチを切っているから、どこにばあちゃんがいるか分からない。スイッチを入れてばあちゃんが見えたとして、怒られて強制的にノゾミへ会いに行かされるかもしれない。それが嫌だったからここ数日は断固としてスイッチを入れていない。もしこれが、ばあちゃんの仕業だったとしたら、僕に強制的にスイッチを入れさせようとしているはずだ。そんな見え透いた罠に乗ってやるつもりはない。見えなければ怒られることもないのだ。
そんな僕の頑なな心情を察したのか、姉は「そらみたことか」とおかしそうに微笑んでいた。
