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「何ガン飛ばしてんだてめぇ」
「やんのか!?」
「あぁあん!?」
この辺りの地域では、中学校の延長上で高校生でも他校同士の小競り合いが盛んに行われている。そのせいで、おとなしそうな生徒を見つけては路地裏に連れて行かれて金銭を巻き上げられたりすることもある。
でも、僕はそういう目にはほとんど合わない。見た目は僕と同じような生徒が、そういう目にあっているのは目の当たりにしてきた。正直、クラスメイトでも「この間〇〇校の生徒に殴られた」なんて話をよく聞く。では、なぜ僕が巻き込まれることが極端に少ないのか…
ーーーーーあっ、今日はこっちの道からにしよう。なんとなく。
そういう感が働くからだ。
その感に逆らって、トラブルに巻き込まれたことはある。例えば、一緒に帰っているクラスメイトにどうしてもこっちから帰ろうと強引に進路を変えられた時や、そっちに行かなければならない用事があった時などだ。
極力『なんとなく』のその感に従っていれば、怪我をすることもなければ、襲われることもない。それは誰かに何かを言われたわけでもない。ただ『なんとなく』という心の声に従うだけ。
「最近、ヤンキー校のレディースの先輩が捕まったんだってさ」
「へー」
ヤンキー校といっているが、僕に言わせると一昔前に流行ったゲームとなんら変わらないと思う。主人公を選択できる戦国時代のゲームで、織田信長とか豊臣秀吉とか上杉謙信とかを操って、天下を取るようなゲームだ。そういうのが小さい小さい規模で、競い合っていると思えば可愛いものだ。敵国の村民に対して、村ごと略奪されて損壊させられるような目に遭った時代もあるのだ。地域のヤンキーが頂点を取ったからといって国政が傾くわけじゃない。
「ヤンキー校のレディースって、マコトってやばい先輩と付き合っててさ。でも、ノゾミってやつと二股かけてるって話だぜ」
「…」
それまで興味のなかった小競り合いとスキャンダルだったが、知り合いができたことで変わる。
「ノゾミって…?」
クラスメイトの思い描くノゾミと僕の知っているノゾミが同一人物かを確かめる。
「お前、試験前はいっつも帰る時一緒にいるだろ?」
「う、うんまぁ」
「ノゾミってやつの姉ちゃんっておっかねぇってさ」
僕はノゾミの姉に会ったことがない。ノゾミの姉は、この辺では有名な霊媒師で群を抜いているらしいが、それ故に噂が一人で歩いてしまっている部分も多い。
家にばあちゃんがいたから、他人を頼ることはなかったし、ばあちゃんもこの地域ではそれなりに有名な存在だったから、ばあちゃんが死んでからノゾミの姉の存在が少しずつ耳に入るようになった。ノゾミの姉の噂を聞いていると、なんだかばあちゃんと重なる部分も多く、ばあちゃんもこうやって噂されていたのだろうかと思うことがある。
「しかも、見た目がヤクザらしいぜ」
「??」
どういうこと??
クラスメイトは戦々恐々としていた。
「見たことあるの?」
「ない」
ねぇのかよ
と、心の中でツッコミを入れる。
「うちは、ほら。ユウキのばあちゃんにずっと見てもらってたからさ」
この地域では、先祖をとても大事にしている。
だから、日々仏壇に手を合わせたり、節目にお墓参りに行ったりする行事は、家族総出で出かけて、掃除をしたり祈りを捧げたりを決して忘れない。先祖は、大切にお祀りして自分たちを見守って頂くという想いを大事にする。そんな先祖が、たまに生きている子孫に対して伝えたいメッセージがあったりする。
本当は直接伝えているのだが、多くの人はそれに気づかない。その声を聞きに霊媒師を頼る。
ただ声を聞いてそれを生きている家族に伝えるという単純な事だったら、僕にもできると思う人が多いが、現実はそんな簡単な事じゃない。時に、根深い因果に関わることも多い。僕はそんな業を背負って何かできるような器じゃない。
ばあちゃんの人生を否定したいわけじゃないし、ばあちゃんみたいな人が必要なことはわかっている。けれど、僕は向いていないしできないと思う。ばあちゃんの元に来るお客さんを見ていて僕は常に思っていた。
「母ちゃんが言ってたんだけどさ、ユウキのばあちゃんが亡くなる時にさ。今度から、ノゾミってやつの姉ちゃんを頼るといいって言ってたみたいだよ」
「え?うちのばあちゃんが??」
僕にはそんなこと一言も言ってなかったのに…
ってことは知り合いだったということだろうか。
「私が死んだ後に、〇〇に引っ越してくる霊媒師は私以上にすごい人だから頼るといいって言われたんだってさ」
ということは、ばあちゃんは未来を予言していたということだろうか…
そんな力もあったのか?と、僕は知らなかったばあちゃんの特殊能力について気付かされることになる。
「お前のばあちゃんすげーな」
っていうか、確かに僕のばあちゃんはすごい。
忘れてはいけないのが、そのばあちゃんが自分以上の力を持つと言ったという、ノゾミの姉についてだ。謎が多いというか、深まるというか…
「すごいのはノゾミの姉ちゃんの方だろ?」
「まあな」
ばあちゃんが認めるほどの霊媒師で、見た目がヤクザの姉。
元レディースの先輩と付き合っているヤンキー弟ノゾミ
なんだそれ??
ますます、訳がわからなくなる。
「何ガン飛ばしてんだてめぇ」
「やんのか!?」
「あぁあん!?」
この辺りの地域では、中学校の延長上で高校生でも他校同士の小競り合いが盛んに行われている。そのせいで、おとなしそうな生徒を見つけては路地裏に連れて行かれて金銭を巻き上げられたりすることもある。
でも、僕はそういう目にはほとんど合わない。見た目は僕と同じような生徒が、そういう目にあっているのは目の当たりにしてきた。正直、クラスメイトでも「この間〇〇校の生徒に殴られた」なんて話をよく聞く。では、なぜ僕が巻き込まれることが極端に少ないのか…
ーーーーーあっ、今日はこっちの道からにしよう。なんとなく。
そういう感が働くからだ。
その感に逆らって、トラブルに巻き込まれたことはある。例えば、一緒に帰っているクラスメイトにどうしてもこっちから帰ろうと強引に進路を変えられた時や、そっちに行かなければならない用事があった時などだ。
極力『なんとなく』のその感に従っていれば、怪我をすることもなければ、襲われることもない。それは誰かに何かを言われたわけでもない。ただ『なんとなく』という心の声に従うだけ。
「最近、ヤンキー校のレディースの先輩が捕まったんだってさ」
「へー」
ヤンキー校といっているが、僕に言わせると一昔前に流行ったゲームとなんら変わらないと思う。主人公を選択できる戦国時代のゲームで、織田信長とか豊臣秀吉とか上杉謙信とかを操って、天下を取るようなゲームだ。そういうのが小さい小さい規模で、競い合っていると思えば可愛いものだ。敵国の村民に対して、村ごと略奪されて損壊させられるような目に遭った時代もあるのだ。地域のヤンキーが頂点を取ったからといって国政が傾くわけじゃない。
「ヤンキー校のレディースって、マコトってやばい先輩と付き合っててさ。でも、ノゾミってやつと二股かけてるって話だぜ」
「…」
それまで興味のなかった小競り合いとスキャンダルだったが、知り合いができたことで変わる。
「ノゾミって…?」
クラスメイトの思い描くノゾミと僕の知っているノゾミが同一人物かを確かめる。
「お前、試験前はいっつも帰る時一緒にいるだろ?」
「う、うんまぁ」
「ノゾミってやつの姉ちゃんっておっかねぇってさ」
僕はノゾミの姉に会ったことがない。ノゾミの姉は、この辺では有名な霊媒師で群を抜いているらしいが、それ故に噂が一人で歩いてしまっている部分も多い。
家にばあちゃんがいたから、他人を頼ることはなかったし、ばあちゃんもこの地域ではそれなりに有名な存在だったから、ばあちゃんが死んでからノゾミの姉の存在が少しずつ耳に入るようになった。ノゾミの姉の噂を聞いていると、なんだかばあちゃんと重なる部分も多く、ばあちゃんもこうやって噂されていたのだろうかと思うことがある。
「しかも、見た目がヤクザらしいぜ」
「??」
どういうこと??
クラスメイトは戦々恐々としていた。
「見たことあるの?」
「ない」
ねぇのかよ
と、心の中でツッコミを入れる。
「うちは、ほら。ユウキのばあちゃんにずっと見てもらってたからさ」
この地域では、先祖をとても大事にしている。
だから、日々仏壇に手を合わせたり、節目にお墓参りに行ったりする行事は、家族総出で出かけて、掃除をしたり祈りを捧げたりを決して忘れない。先祖は、大切にお祀りして自分たちを見守って頂くという想いを大事にする。そんな先祖が、たまに生きている子孫に対して伝えたいメッセージがあったりする。
本当は直接伝えているのだが、多くの人はそれに気づかない。その声を聞きに霊媒師を頼る。
ただ声を聞いてそれを生きている家族に伝えるという単純な事だったら、僕にもできると思う人が多いが、現実はそんな簡単な事じゃない。時に、根深い因果に関わることも多い。僕はそんな業を背負って何かできるような器じゃない。
ばあちゃんの人生を否定したいわけじゃないし、ばあちゃんみたいな人が必要なことはわかっている。けれど、僕は向いていないしできないと思う。ばあちゃんの元に来るお客さんを見ていて僕は常に思っていた。
「母ちゃんが言ってたんだけどさ、ユウキのばあちゃんが亡くなる時にさ。今度から、ノゾミってやつの姉ちゃんを頼るといいって言ってたみたいだよ」
「え?うちのばあちゃんが??」
僕にはそんなこと一言も言ってなかったのに…
ってことは知り合いだったということだろうか。
「私が死んだ後に、〇〇に引っ越してくる霊媒師は私以上にすごい人だから頼るといいって言われたんだってさ」
ということは、ばあちゃんは未来を予言していたということだろうか…
そんな力もあったのか?と、僕は知らなかったばあちゃんの特殊能力について気付かされることになる。
「お前のばあちゃんすげーな」
っていうか、確かに僕のばあちゃんはすごい。
忘れてはいけないのが、そのばあちゃんが自分以上の力を持つと言ったという、ノゾミの姉についてだ。謎が多いというか、深まるというか…
「すごいのはノゾミの姉ちゃんの方だろ?」
「まあな」
ばあちゃんが認めるほどの霊媒師で、見た目がヤクザの姉。
元レディースの先輩と付き合っているヤンキー弟ノゾミ
なんだそれ??
ますます、訳がわからなくなる。
