@@@@
ばあちゃんが死んだ。
悲しくもなく涙も出なかった。
だって、側にいるって言ってたから…
ばあちゃんみたいな人のことは、この土地では独特の呼び方があって、世間で流通している呼称を当て嵌めるなら霊媒師だ。いつも家にいて、ばあちゃんを頼ってくる人の相談に対して助言を行なっていた。それは僕も含めてだ。
僕は幼い頃から普通の人には見えない存在が見えて、それらの区別ができなかった。例えば僕がある時、同じ年くらいの知らない子と複数人で遊んで家に帰ると、玄関に仁王立ちのばあちゃんがいて『こっちへきなさい』と連れて行かれる。連れて行かれる部屋は決まって来客時に助言を行う通称『お祓い部屋』で、僕は1人で遊んでいたんだと説明される。それが死んでいる人で、生きていない人だと…それは普通の人には見えていないんだというのを常々教わった。
物心ついた頃から、それらの区別がつかなかった僕にとって、そんなことはしょっちゅうで、ばあちゃんはいつも『目を合わせたらいけないよ』『無視しなさい』というのを言われ続けてきた。そんな僕をばあちゃんは小学校に上がった頃くらいから来客時に同席させるようになった。時折、僕もばあちゃんへ持ち込まれた依頼を手伝うこともあった。
でも僕は、ばあちゃんのようになりたいとは微塵も思わなかった。
ばあちゃんは1日ずっと家にいて、タバコを吸って、テレビを見て、お茶を飲んで過ごして、来客の折に対応する、そんな生活をしていた。だから、ほとんど家にいたし、むしろ家から出られなかったんじゃないかと思う。ばあちゃんを頼りにやってくる人は多く、時折来訪して普通の人には目に見えない『何か』とやりとりをしていた。僕は、そんなばあちゃんみたいな窮屈な人生を送りたくはなかった。
ばあちゃんと一緒にいた孫の僕が存在しない人と話しているのを見た他人が感心して『立派なお婆様の跡を継いでね』などと言われても、そうなりたいとは思わなかった。でも、ばあちゃんのことは尊敬している。末っ子の僕は父親も母親も共働きで面倒を見てくれたのは、じいちゃんとばあちゃんだった。じいちゃんも優しくて大好きだけれど、僕のことをわかってくれる ばあちゃんの方がより大好きだった。
「おい!ババア!ここか!?あぁ?わかってるつーの!何回も聞いた!」
急に部屋の扉が乱暴に激しく揺れる。
声は若く、聞き覚えはない。
ばあちゃんが死んだ。
悲しくもなく涙も出なかった。
だって、側にいるって言ってたから…
ばあちゃんみたいな人のことは、この土地では独特の呼び方があって、世間で流通している呼称を当て嵌めるなら霊媒師だ。いつも家にいて、ばあちゃんを頼ってくる人の相談に対して助言を行なっていた。それは僕も含めてだ。
僕は幼い頃から普通の人には見えない存在が見えて、それらの区別ができなかった。例えば僕がある時、同じ年くらいの知らない子と複数人で遊んで家に帰ると、玄関に仁王立ちのばあちゃんがいて『こっちへきなさい』と連れて行かれる。連れて行かれる部屋は決まって来客時に助言を行う通称『お祓い部屋』で、僕は1人で遊んでいたんだと説明される。それが死んでいる人で、生きていない人だと…それは普通の人には見えていないんだというのを常々教わった。
物心ついた頃から、それらの区別がつかなかった僕にとって、そんなことはしょっちゅうで、ばあちゃんはいつも『目を合わせたらいけないよ』『無視しなさい』というのを言われ続けてきた。そんな僕をばあちゃんは小学校に上がった頃くらいから来客時に同席させるようになった。時折、僕もばあちゃんへ持ち込まれた依頼を手伝うこともあった。
でも僕は、ばあちゃんのようになりたいとは微塵も思わなかった。
ばあちゃんは1日ずっと家にいて、タバコを吸って、テレビを見て、お茶を飲んで過ごして、来客の折に対応する、そんな生活をしていた。だから、ほとんど家にいたし、むしろ家から出られなかったんじゃないかと思う。ばあちゃんを頼りにやってくる人は多く、時折来訪して普通の人には目に見えない『何か』とやりとりをしていた。僕は、そんなばあちゃんみたいな窮屈な人生を送りたくはなかった。
ばあちゃんと一緒にいた孫の僕が存在しない人と話しているのを見た他人が感心して『立派なお婆様の跡を継いでね』などと言われても、そうなりたいとは思わなかった。でも、ばあちゃんのことは尊敬している。末っ子の僕は父親も母親も共働きで面倒を見てくれたのは、じいちゃんとばあちゃんだった。じいちゃんも優しくて大好きだけれど、僕のことをわかってくれる ばあちゃんの方がより大好きだった。
「おい!ババア!ここか!?あぁ?わかってるつーの!何回も聞いた!」
急に部屋の扉が乱暴に激しく揺れる。
声は若く、聞き覚えはない。
