後宮妃は木犀の下で眠りたい

 勢いのまま、地面に座り込み、頭を下げる。

 なにか起きたようだ。

 それは俊熙も悟った。

「なにごとだ」

 俊熙は問いかける。

 その姿は寵妃との時間を邪魔されたことに怒っているようにも見えた。

「は! 報告いたします。黄昭媛とその侍女六名、全員が命を絶ちました!」

 宦官長が報告をした。

 その内容に俊熙は思わず立ち上がった。

「ありえない。まさか、死ぬほどの拷問をかけたのか!?」

「いいえ! 陛下!」

「では、なぜ、全員が死ぬようなことが起きるんだ!」

 俊熙は声を荒げる。

 ……呪術だ。

 香月は死の正体に気づいた。

 藍洙に呪術を教えた真犯人が事前に仕込んでいたのだろう。それを防ぐ為、昭媛宮を調べてほしいと提案したのだが、遅かったようだ。

「恐ろしい呪いとしかいいようがございません」

 頭を地面に押し付けたまま、昭媛宮の調査をしていた宦官は震えながら答えた。

「昭媛宮から多数の人形と獣の血、多数の虫、それらを育てている壺が押収されております。それについて、問いかけたところ、とっ、吐血をし、息をしなくなった者もおりました」

 宦官は恐ろしい思いをしたのだろう。

 それでも、必死に報告をする為に走ってきたのだ。

「牢獄も同様です」

 宦官長は淡々とした声で答えた。

「黄藍洙の姿は見るに堪えられない姿に代わり、他の侍女たちもあっという間に死に絶えました」

 宦官長はそこまで言い切り、頭を下げる。

 それ以上の情報は持っていないのだ。

「……俺が出向かねばならない状況か」

 俊熙は皇帝の座に収まる前に蔓延した呪いを遠ざけている。そう信じられているからこそ、皇帝の座に座らされていた。堂々と呪いだと言い切る二人の姿を見て、呪いの存在を信じていなかったのは自分だけだと察したようだ。