後宮妃は木犀の下で眠りたい

 後宮が皇帝の血を残すための場所だと俊熙は理解をしていないようだった。

 幼くして帝位に就いた俊熙は宰相たちの言いなりだ。見鬼の才がないことも見抜かれているだろう。そうでなければ、守護結界の修復の儀を執り行うように進言するはずだ。

 ……敵は後宮の外にいる。

 香月は政に詳しくはない。

 しかし、玄家を率いる者の一人として知識だけは学んできた。

 ……陛下を守らなければならない。

 それが香月が後宮入りをした理由だ。

 誰よりも優先するべきは陛下であり、その為ならばなにを差し出してもかまわないという覚悟を持つべきであった。

「陛下。お気をつけください」

 香月は隠し事を止めた。

 俊熙には信用できる人間が必要だ。

 俊熙が香月を愛しているという言葉が真実ならば、香月は俊熙の信用に応えられる人間でなければならない。

「狙いは後宮の秩序を崩壊し、李帝国の守護結界を崩壊させることの可能性があります」

「守護結界とやらが崩壊するとどうなる?」

「戦乱の世となりましょう。陛下の世を疑う反逆者が溢れかえることになるでしょう」

 香月の言葉を聞き、俊熙は眉をひそめた。

 ……やはり、理解されないか。

 守護結界は李帝国を守っている。それは大陸中に息を潜める妖怪たちや俊熙に不満を抱く道士や呪術師が、好き勝手に振る舞えないようにする監視の意味もある。

 俊熙はその重要性を理解していない。

「陛下、守護結界の状態をご存知でしょうか」

「正常に機能しているのだろう?」

「いいえ。亀裂が入り、崩壊の道を進んでおります」

 香月の言葉に対し、俊熙は驚いていた。

 ……顔に出やすい人だ。

 皇帝としてあるべき姿はどのようなものなのか。

 なにも知らず、先帝の血を引いているというだけの理由で皇帝の座についたのだろう。