もしかしたら行動時間は結構バラバラなのかもしれない。
3年生ともなれば部活していてもそろそろ引退だろうし、就活や進学で考えることは一杯あるばずだ。
確実に会うためにはやっぱり相手の連絡先を教えてもらう方がいい。

私は伊賀さんにバレないようにゴクリと唾を飲み込んだ。
今まで異性とは必要なクラスメートたちとしか連絡先を交換していない。
連絡内容は学校の行事予定のことばかりで、それ以外で連絡を取り合うことはなかった。

「あ、あの。よかったら連絡先を教えてくれませんか?」
緊張から最後の方は声が裏返ってしまった。
心臓は今にも爆発してしまいそうだ。

「連絡先って……スマホのこと?」
質問で返されて私は困惑する。
今どき連絡先と言えばスマホだろう。

スマホを持っていない高校生なんて見たことがない。
それなのにそんな質問をするなんて。
と、嫌な予感が胸をよぎったとき「ごめん。僕スマホないんだ」と、嫌な予感が的中する返事があった。

全身がドロドロに溶けてしまいそうな脱力感と絶望感に支配される。
スマホがないなんて言い訳で誘いを断るなんていくらなんても下手すぎる。

そんなの誰も信じないのに。
ジワリと目頭が熱くなった時「だから、探している人にも会えないままなんだ」と、せつなそうな声が聞こえてきて伊賀さんへ視線をやった。

伊賀さんのほうこそ今にも泣き出してしまいそうな顔をしていてビックリする。
もしかしてスマホがないというのは断るための口実ではなく、本当のことなんだろうか?
その上今のせつなそうな顔を見ると誰を探しているのか質問できそうにもなかった。