互いの名前を呼ぶタイミングも同じだ。
「今、隣りにいます。なにか伝えたいことはないですか？」
雨粒はどんどん小さくなり、晴れ間が見え始める。
それに伴い伊賀さんの体は透き通っていく。

もうあまり時間がない。
「私のせいでごめん！」
「里歩のせいじゃないから！」

ふたりが同時に叫んだ。
私は一瞬キョトンとしてしまい、そして慌てて互いの気持ちを代弁した。
するとふたりはやはり同じように泣きそうな顔になった。

互いに互いを思いやるあまりに苦しくて、身動きがとれなくなっていたのかもしれない。
「僕は自分のしたことを後悔してない。だから里歩も後悔のないように生きてほしい」

その言葉を告げると里歩先輩はうずくまって泣き出してしまった。
「先輩。伊賀さんは今日の雨が止めばもう戻ってこられないみたいです。最後になにか伝えたいことはありますか？」