その目はまだ大切な人に出会えていない証拠のように、さみしげだ。
「美佳ちゃん。僕はもうそろそろ行かなきゃいけないんだ」
「ちょっと、待ってください!」
私は慌てて伊賀さんを引き止める。

その光景に里歩先輩は驚いて後ずさりをした。
里歩先輩から見ると私はなにもない空間に話しかけているように見えるはずだから、驚いても仕方ない。
私は伊賀さんを手招きして、立ち位置を代わってもらった。

これで里歩先輩と伊賀さんは互いに認識できなくても、隣同士に立ってもらうことができた。
私は少し息を吸い込むと、鞄の中からポラロイドカメラを取り出してふたりへ向けた。

まさか私が初恋で恋のキューピッド役をすることになるなんて、思ってもいなかった。
「そのまま、動かないでください」
ふたりへ向けて声をかける。

そしてカメラを覗き込んでシャッターを切った。
私には肉眼でもカメラ越しでもちゃんとふたりの姿が見えたけれど、写真にはどう写っただろうか。
真っ白な写真が出てきて心臓が高鳴る。