奇しくも今日は伊賀さんが亡くなってから49日に当たる日だった。
魂がこの世を離れるこの日、彼は現れてくれるだろうか。
「ねぇ、なにか用事があって私を呼び出したんだよね?」

ピンク色の傘をさして隣を歩く里歩先輩は、さっきから無言のままの私に怪訝そうな表情を作っている。
「もう少し待ってください。そうすれば絶対に現れますから」

場所はもちろん川沿いの道。
伊賀さんが事故に合った場所だから、里歩先輩はあまり長い時間ここにいたくないみたいだ。
さっきから少し顔色も悪いかもしれない。

「現れるって一体なんのこと?」
里歩先輩の質問に答えるよりさきに前方にずぶ濡れの人陰が見えた。
「里歩先輩、あれが見えますか?」

私が指差す方向へ視線を向けるが、里歩先輩は「なにもないけど」と、首をかしげている。
更に近づいてくとそれが伊賀さんであることがわかった。
伊賀さんがこちらに気がついてうすく微笑む。