「あっ!」
思わず声が出てしまい、口に入れたばかりの卵焼きがひざの上に落ちる。
「ちょっと美佳、汚いでしょ」
前の席に座っていたお母さんがしかめっ面で私を見つめる。

我が家の朝食の時間には大抵てテレビがついていて、今は今日の天気予報が流れているところだった。

ニュースキャスターの男性によれば《晴れ時々雨。夕方から本降りになるでしょう》ということだった。

今日しかないと思った瞬間につい口が開いてしまったのだ。
私はすぐに床に置いておいたカバンからスマホを取り出して里歩先輩へメッセージを送る。

「こら! 食事中にスマホをいじらないの!」
お母さんの怒号は耳に入ってこなかったのだった。