つい川に視線を向けたまま歩いていると、前方に人がいることに気が付かなかった。
「わっ」
驚いて声をあげて立ち止まると、相手も驚いた表情でこちらを見ていた。

大きなピンク色の傘。
そして小柄な女性。
「先輩?」

「あ、えっと……」
思わず声に出してしまったけれど、相手はこちらを認識しているはずがない。
戸惑った表情を浮かべる先輩にあわてて「全校集会のときに目立ってたから」と、付け加えた。

すると先輩は恥ずかしそうに笑って「驚かせてごめんね、他の人たちにも迷惑かけちゃったし」と頭をかいた。

「いえ、そんなことは。でも先輩この前もここに来てませんでした?」
大きなピンク色の傘は見覚えがある。

小柄な先輩がこの傘をさしてしゃがみこんでしまえば、その体はスッポリと傘に包み込まれて顔は見えなくなるに違いない。