日曜日の吹奏楽部の練習を終えて太陽が高い内に帰宅する予定が、こんな大雨になるなんて。
「置き傘しておいてよかったぁ」
突然降り始めた雨に慌ててビニール傘を差してホッと胸をなでおろす。

傘の内側から空を見上げてみればこのあたりだけ灰色の分厚い雲に覆われている。
制服の半袖から伸びる腕は濡れてしまい、スカートのポケットからハンカチを取り出してふいた。
夏の楽しいことと言えばかき氷にスイカにそうめん。

嫌いなところは熱さと台風。
今まさに私に降り掛かっているのは台風みたいな大粒の雨だった。
夏の嫌いなところにスコールも追加しておかなくちゃ。
そんなことを考えながら足を早めたときだった。

前方から歩いてくる男性が傘をさしていないことに気がついた。
突然のスコールだから傘を準備してなかったんだろう。

雨越しに見えるその人は近くの高校の服を着ているけれど、その制服は肌にピッチリ張り付いてしまうくらいにびしょ濡れになっている。
栗色の髪の毛も頬や額にくっついてしまっていてシャワーを浴びた後みたいだ。