「おい、根本~。いつも凄いじゃねぇか~!それ、同棲している彼女が作った弁当だろ?」
ニヤニヤと誂うような顔をした会社の同期である< 唐木 アズマ>が俺の首に腕を回し、現在食べている弁当を指差す。
全て味の違う完全な三角形型のおにぎりが3つ。
衣はサクサク、中はジューシーな唐揚げに、甘々でふわふわの卵焼き。
そしてその周りには多種多様の色合いのおかずがこれでもかと詰められている俺の弁当は、料亭などで食べるなんとか御膳のレベルだ。
これが毎日の俺の弁当のクオリティー。
そんな弁当を会社でもそもそと食べていると、大体一緒に御飯を食べるアズマはこうして大げさに羨ましがる。
「……いや、彼女じゃねぇんだけど。」
「はぁぁぁぁ~!?んっなわけあるかよ!こんな豪華な手作りお弁当!しかも毎日だろう?!めちゃんこ愛されてるじゃねぇか!」
ブーブーと盛大に文句を言いながら、アズマは俺から腕を離し隣のデスクに座った。
「いや、愛って……。」
呆れながらため息をついたが、確かにちょっとこれは……と困ってしまい、情けなく眉は下がっていく。
このお弁当は、社会人になった今もルームシェアしている翔が作ったモノだ。
初めてルームシェアした時から、こういったお弁当はおろか、全ての家事は翔が相変わらずしてくれている。
『こんな生活は駄目だ。ルームシェアも止めよう!』
そう決意して、いざ翔に言おうとすると……。
「なんで?」
「どうしてそんな事言うの?────あ~……もしかして源の会社にいる後輩の子かな?
ちょっと距離が近いよね、あの子。もしかして気になっちゃった?」
「それとも、いつも電車で一緒になる大学生の女の子が原因かな?この間落とした定期券拾ってあげたんだもんね?少女漫画なんかでありきたりな展開だ。」
ペラペラペラ~と語られる内容に間違いはない。
ただ、どうして翔が知っているのかは分からない。
「……いや、なんで知って────……。」
「────はぁ……。とりあえず、どうしても源が電車がいいって我が儘言うから許してあげたけど、明日から車ね。」
翔は心底うんざりした様子で、俺の通勤用バックを漁り定期券を取り出すと、そのままゴミ箱へ勢いよく投げ捨てた。
慌ててそれを拾いあげようとする俺の手を掴み、怒りの形相で俺を見下ろす。
「駄目。────ね?分かった?」
その言い回し方がまるで子供相手みたいで、嫌な気持ちになったが……本気で怒っている事が分かったので「……分かった。」と、とりあえず返事を返しておいた。
すると、翔はニコッと嬉しそうに笑い、次の日から俺は翔の運転する車に乗せられての通勤に……。
流石に会社の前は止めて欲しいと頼み、少し離れた場所に止めてもらって会社に来ている。
俺は現在の生活を振り返り、フルフルと首を横に振った。
……やっぱりこの生活は普通じゃない。これは本当に本当にまずいぞ?
お弁当も一度作ってくれるのを止めて────と言いかけたら、なんでなんで攻撃からの、何故か夜ご飯は箸を持つのを禁止されてしまいとてもとても困っている。
なんのこっちゃ??と俺も他人から聞いたらそう思うだろうが、つまり全てのご飯を翔に食べさせて貰っているという事だ。
ちょうど雛鳥に餌を与える様に。
「源、あ~ん。」
「…………。」
無言で口を開ける俺を見て、とても幸せそうにする翔。
俺は淡々と口を動かして、この地獄の様な時間が過ぎ去るのを待っているしかないのだが、翔は俺の口をクニクニと触ったり顎を触ったり、首を触ったりと落ち着きない様子を見せてきた。
「あ~……いいな、こういうの。
抵抗がなくて大人しいのって、自分のモノって感じがしていいなって思うよ。このまま閉じ込めたいな。
手足とか動かなくなっちゃえばいいのに……。
ご飯を食べるのも、お風呂もトイレも俺がいないとできないね。いいな~。────ねぇ、源はそういうのどう?嬉しい?」
ニヤニヤしながらわけのわからない事を尋ねてくる翔。
『嬉しい』がどこにも存在しない事を言われ、流石にその時は正直に答えた。
「俺は、できれば寝たきり期間は少なく死にたいよ……。
まぁ、ポックリが理想的かな。
それと介護職はいつも人手不足ってニュースでやってたから、就職には困らないんじゃないか?」
詳しくは知らないが、介護に興味があるならやってみればいいと思う。
本心でそういったのだが、翔は腹を抱えての大爆笑だ。
そのままヒーヒー笑いながら、結局現在もまるで要介護者の様に俺に接してくる。
「マジでやめて欲しいんだよな……。」
「??なんか言ったか?それよかよ〜聞いたか?今週末、また新しい派遣の子たちが来るらしいじゃん!
ものすごい美人ばっかなんだってよ。
こりゃ〜テンション上がりまくっちゃいますな〜!」
「へぇ〜。そりゃ、いいな。部署内が華やかになる。」
定期的にやってくる派遣の子たちは、正社員……特に男性職員にとっては楽しみの一つ。
更に派遣されてくる子が女性!若い!美人!となれば、全員のテンションが上がり、あからさまに仕事をがんばり始めるのでとても分かりやすいなと思う。
勿論俺だって、異性の女性の目があると思えば、多少はやる気がでるってもんだ。
アズマの話を聞いて良い楽しみができたな~と思いながら、今日も翔が作ったお弁当を完食しお弁当箱を洗うと、そのまま仕事に戻った。
帰りは勿論翔の車でのお出迎えなので、少し離れた場所で待っていると、そんなに待たずに翔が車で颯爽と現れる。
「おまたせ源。────さ、帰ろう?」
「あぁ。いつもありがとう。」
車の助手席に乗り込みシートベルトをつけ……ようとしたら、翔がすぐにやってくれたので、そのまま固まった。
「これでよし。帰ろっか!」
「う、うん……。」
とうとうシートベルトまで締めてもらうって……。
ザッ!と青ざめてしまったが、そんな俺の事などお構いなしに翔は車を発進して、あっという間に家へ到着した。
ニヤニヤと誂うような顔をした会社の同期である< 唐木 アズマ>が俺の首に腕を回し、現在食べている弁当を指差す。
全て味の違う完全な三角形型のおにぎりが3つ。
衣はサクサク、中はジューシーな唐揚げに、甘々でふわふわの卵焼き。
そしてその周りには多種多様の色合いのおかずがこれでもかと詰められている俺の弁当は、料亭などで食べるなんとか御膳のレベルだ。
これが毎日の俺の弁当のクオリティー。
そんな弁当を会社でもそもそと食べていると、大体一緒に御飯を食べるアズマはこうして大げさに羨ましがる。
「……いや、彼女じゃねぇんだけど。」
「はぁぁぁぁ~!?んっなわけあるかよ!こんな豪華な手作りお弁当!しかも毎日だろう?!めちゃんこ愛されてるじゃねぇか!」
ブーブーと盛大に文句を言いながら、アズマは俺から腕を離し隣のデスクに座った。
「いや、愛って……。」
呆れながらため息をついたが、確かにちょっとこれは……と困ってしまい、情けなく眉は下がっていく。
このお弁当は、社会人になった今もルームシェアしている翔が作ったモノだ。
初めてルームシェアした時から、こういったお弁当はおろか、全ての家事は翔が相変わらずしてくれている。
『こんな生活は駄目だ。ルームシェアも止めよう!』
そう決意して、いざ翔に言おうとすると……。
「なんで?」
「どうしてそんな事言うの?────あ~……もしかして源の会社にいる後輩の子かな?
ちょっと距離が近いよね、あの子。もしかして気になっちゃった?」
「それとも、いつも電車で一緒になる大学生の女の子が原因かな?この間落とした定期券拾ってあげたんだもんね?少女漫画なんかでありきたりな展開だ。」
ペラペラペラ~と語られる内容に間違いはない。
ただ、どうして翔が知っているのかは分からない。
「……いや、なんで知って────……。」
「────はぁ……。とりあえず、どうしても源が電車がいいって我が儘言うから許してあげたけど、明日から車ね。」
翔は心底うんざりした様子で、俺の通勤用バックを漁り定期券を取り出すと、そのままゴミ箱へ勢いよく投げ捨てた。
慌ててそれを拾いあげようとする俺の手を掴み、怒りの形相で俺を見下ろす。
「駄目。────ね?分かった?」
その言い回し方がまるで子供相手みたいで、嫌な気持ちになったが……本気で怒っている事が分かったので「……分かった。」と、とりあえず返事を返しておいた。
すると、翔はニコッと嬉しそうに笑い、次の日から俺は翔の運転する車に乗せられての通勤に……。
流石に会社の前は止めて欲しいと頼み、少し離れた場所に止めてもらって会社に来ている。
俺は現在の生活を振り返り、フルフルと首を横に振った。
……やっぱりこの生活は普通じゃない。これは本当に本当にまずいぞ?
お弁当も一度作ってくれるのを止めて────と言いかけたら、なんでなんで攻撃からの、何故か夜ご飯は箸を持つのを禁止されてしまいとてもとても困っている。
なんのこっちゃ??と俺も他人から聞いたらそう思うだろうが、つまり全てのご飯を翔に食べさせて貰っているという事だ。
ちょうど雛鳥に餌を与える様に。
「源、あ~ん。」
「…………。」
無言で口を開ける俺を見て、とても幸せそうにする翔。
俺は淡々と口を動かして、この地獄の様な時間が過ぎ去るのを待っているしかないのだが、翔は俺の口をクニクニと触ったり顎を触ったり、首を触ったりと落ち着きない様子を見せてきた。
「あ~……いいな、こういうの。
抵抗がなくて大人しいのって、自分のモノって感じがしていいなって思うよ。このまま閉じ込めたいな。
手足とか動かなくなっちゃえばいいのに……。
ご飯を食べるのも、お風呂もトイレも俺がいないとできないね。いいな~。────ねぇ、源はそういうのどう?嬉しい?」
ニヤニヤしながらわけのわからない事を尋ねてくる翔。
『嬉しい』がどこにも存在しない事を言われ、流石にその時は正直に答えた。
「俺は、できれば寝たきり期間は少なく死にたいよ……。
まぁ、ポックリが理想的かな。
それと介護職はいつも人手不足ってニュースでやってたから、就職には困らないんじゃないか?」
詳しくは知らないが、介護に興味があるならやってみればいいと思う。
本心でそういったのだが、翔は腹を抱えての大爆笑だ。
そのままヒーヒー笑いながら、結局現在もまるで要介護者の様に俺に接してくる。
「マジでやめて欲しいんだよな……。」
「??なんか言ったか?それよかよ〜聞いたか?今週末、また新しい派遣の子たちが来るらしいじゃん!
ものすごい美人ばっかなんだってよ。
こりゃ〜テンション上がりまくっちゃいますな〜!」
「へぇ〜。そりゃ、いいな。部署内が華やかになる。」
定期的にやってくる派遣の子たちは、正社員……特に男性職員にとっては楽しみの一つ。
更に派遣されてくる子が女性!若い!美人!となれば、全員のテンションが上がり、あからさまに仕事をがんばり始めるのでとても分かりやすいなと思う。
勿論俺だって、異性の女性の目があると思えば、多少はやる気がでるってもんだ。
アズマの話を聞いて良い楽しみができたな~と思いながら、今日も翔が作ったお弁当を完食しお弁当箱を洗うと、そのまま仕事に戻った。
帰りは勿論翔の車でのお出迎えなので、少し離れた場所で待っていると、そんなに待たずに翔が車で颯爽と現れる。
「おまたせ源。────さ、帰ろう?」
「あぁ。いつもありがとう。」
車の助手席に乗り込みシートベルトをつけ……ようとしたら、翔がすぐにやってくれたので、そのまま固まった。
「これでよし。帰ろっか!」
「う、うん……。」
とうとうシートベルトまで締めてもらうって……。
ザッ!と青ざめてしまったが、そんな俺の事などお構いなしに翔は車を発進して、あっという間に家へ到着した。

