「か……翔……。」
なんでここに??
ポカンとしたまま動きを止めた俺の前で、翔はニコニコと笑みを浮かべている。
確か今日は内定が決まっている企業からの連絡があったと珍しくいなかったというのに……どうやらもうその用事は終わったらしい。
黙っている俺の前で、突然翔は自身の携帯を俺に見せてきた。
そこにあるのは、先ほど俺に怒っていた蝶野さんの連絡先。
えっと……もしかして付き合う事になったとか??
そう思ったのは一瞬で、翔はその連絡先を俺の目の前で削除した。
「えっ……?えっ??」
「いらないモノは全部消しておかないと。
う~ん……いっそ携帯番号ごと変えちゃおうかな?めんどくさい。」
「えっ……だってそれじゃあ……。」
全員の連絡先が消えちゃうじゃん!
戸惑う俺の前で翔は嬉しそうに笑い、その場で携帯を落として踏みつける。
「うわっ!何してんだよ、壊れるぞ!」
俺はそれを見て慌ててその携帯を拾って救出したのだが、翔は携帯を掴んでいる俺の手ごと掴んで立たせた。
「源の連絡先は覚えているから大丈夫だよ。────源、なんでさっきあの女についていったの?」
「はぁ?なんだよ、急に……。あの女って蝶野さんの事?そりゃ~話があるって言われたからだけど……?」
本当に話があると言われてついていっただけだったので淡々と答えると、翔はハァ……と大きなため息をつく。
「源、駄目じゃないか。呼ばれたら俺にまず連絡してって言っているでしょ?なんで言いつけが守れないの?」
「言いつけって……お前、子供じゃねぇんだからさ。そういうのやめろって。」
馬鹿みたいな事を言い出した翔に対し、呆れた様に睨みつけてやったが、翔はなんだかすごく嬉しそうな顔をした。
なんでそんな顔を??
本気で意味が分からず首を傾げると、翔は俺の手を握っていた手を離す。
そして続けて自分の顔を両手で覆い隠し、フルフルと震えだした。
「あぁ~……もうっ……!!!なんで源ってそうなのかな~!!なんでそんな普通なの?
本当にバカ。救えない。最高。────あぁ堪んない!!」
「……意味わかんねぇ。悪口?褒め言葉?どっちなんだよ、それ。
お前、大丈夫かよ……。」
熱に浮かれた様子の翔の具合が心配になってしまったが、俺はハッ!と我に帰る。
そうだった。
俺はもうこいつとは関わらない。
だからまずはルームシェアの解消を……。
「なぁ、悪いんだけど、話が……。」
その提案を口にしようとしたその前に、俺は抱きかかえられる勢いで引きづられ、そのまま家の方向へと向かい無理やり歩かされる。
「わっ!!ちょっ────!!?」
「源はさ~。本当に普通!全部普通!
人に対してもモノに対しても……俺はそれが凄く良いと思う。」
「……喧嘩売られてる??」
呆れながらそう言うと、翔の肩がけバックから高級肉のパックがはみ出ている事に気づき目が釘付けに。
だからブツブツ呟く翔の声は全く聞こえなくなった。
「俺はずっとずっと……全部が嫌いだったんだ。
俺を捨ててそれぞれの愛人と暮らす親も、媚びてくる奴らも、敵意を向けて隙あらば陥れようとしてくる奴らも……そして常に怒りを抱いている自分も。
全部全部消してやりたいって、そう思っていたのに……源があんまりにも普通だから……俺は、大嫌いな全部が何でも無いモノの様に感じる事ができるんだ。」
「へぇ~。」
霜降りの状態から見てランク4はあると見た!
ジッ……と睨む様に肉のパッケージを見詰めながら、肉のランクの査定をする。
それに夢中になっていた俺にとって、翔の話は吹き抜けていく風の様に反対の耳から通り抜けるモノ。
そして、翔はそんな俺を見て上機嫌だ。
「アハハッ!俺の話全然聞いてない。それがいいんだ。
そんな俺を普通にしてくれる源が俺は大好き。
だから一生一緒にいてもらうね。────逃さないから。」
「へぇ〜。ハイハイ。分かった分かった。とりあえず塩だな……。
あ、翔、悪いんだけどスーパーでちょっといい塩買ってこようぜ。
いい肉にはまずは塩、それから焼き肉のタレが定番だもんな。」
「~~っ!!うん!」
今の俺の頭の中は、おいしい肉の食べ方で一杯。
だからまたごちゃごちゃした事は明日色々考えようと思い、結局俺は翔のいる家へ帰る。
この葛藤は何度も何度も襲ってきては、戻り、襲ってきては戻りを繰り返し、なんだかんだで一生翔の側にいるなんて……この時の俺は想像してなかった。
なんでここに??
ポカンとしたまま動きを止めた俺の前で、翔はニコニコと笑みを浮かべている。
確か今日は内定が決まっている企業からの連絡があったと珍しくいなかったというのに……どうやらもうその用事は終わったらしい。
黙っている俺の前で、突然翔は自身の携帯を俺に見せてきた。
そこにあるのは、先ほど俺に怒っていた蝶野さんの連絡先。
えっと……もしかして付き合う事になったとか??
そう思ったのは一瞬で、翔はその連絡先を俺の目の前で削除した。
「えっ……?えっ??」
「いらないモノは全部消しておかないと。
う~ん……いっそ携帯番号ごと変えちゃおうかな?めんどくさい。」
「えっ……だってそれじゃあ……。」
全員の連絡先が消えちゃうじゃん!
戸惑う俺の前で翔は嬉しそうに笑い、その場で携帯を落として踏みつける。
「うわっ!何してんだよ、壊れるぞ!」
俺はそれを見て慌ててその携帯を拾って救出したのだが、翔は携帯を掴んでいる俺の手ごと掴んで立たせた。
「源の連絡先は覚えているから大丈夫だよ。────源、なんでさっきあの女についていったの?」
「はぁ?なんだよ、急に……。あの女って蝶野さんの事?そりゃ~話があるって言われたからだけど……?」
本当に話があると言われてついていっただけだったので淡々と答えると、翔はハァ……と大きなため息をつく。
「源、駄目じゃないか。呼ばれたら俺にまず連絡してって言っているでしょ?なんで言いつけが守れないの?」
「言いつけって……お前、子供じゃねぇんだからさ。そういうのやめろって。」
馬鹿みたいな事を言い出した翔に対し、呆れた様に睨みつけてやったが、翔はなんだかすごく嬉しそうな顔をした。
なんでそんな顔を??
本気で意味が分からず首を傾げると、翔は俺の手を握っていた手を離す。
そして続けて自分の顔を両手で覆い隠し、フルフルと震えだした。
「あぁ~……もうっ……!!!なんで源ってそうなのかな~!!なんでそんな普通なの?
本当にバカ。救えない。最高。────あぁ堪んない!!」
「……意味わかんねぇ。悪口?褒め言葉?どっちなんだよ、それ。
お前、大丈夫かよ……。」
熱に浮かれた様子の翔の具合が心配になってしまったが、俺はハッ!と我に帰る。
そうだった。
俺はもうこいつとは関わらない。
だからまずはルームシェアの解消を……。
「なぁ、悪いんだけど、話が……。」
その提案を口にしようとしたその前に、俺は抱きかかえられる勢いで引きづられ、そのまま家の方向へと向かい無理やり歩かされる。
「わっ!!ちょっ────!!?」
「源はさ~。本当に普通!全部普通!
人に対してもモノに対しても……俺はそれが凄く良いと思う。」
「……喧嘩売られてる??」
呆れながらそう言うと、翔の肩がけバックから高級肉のパックがはみ出ている事に気づき目が釘付けに。
だからブツブツ呟く翔の声は全く聞こえなくなった。
「俺はずっとずっと……全部が嫌いだったんだ。
俺を捨ててそれぞれの愛人と暮らす親も、媚びてくる奴らも、敵意を向けて隙あらば陥れようとしてくる奴らも……そして常に怒りを抱いている自分も。
全部全部消してやりたいって、そう思っていたのに……源があんまりにも普通だから……俺は、大嫌いな全部が何でも無いモノの様に感じる事ができるんだ。」
「へぇ~。」
霜降りの状態から見てランク4はあると見た!
ジッ……と睨む様に肉のパッケージを見詰めながら、肉のランクの査定をする。
それに夢中になっていた俺にとって、翔の話は吹き抜けていく風の様に反対の耳から通り抜けるモノ。
そして、翔はそんな俺を見て上機嫌だ。
「アハハッ!俺の話全然聞いてない。それがいいんだ。
そんな俺を普通にしてくれる源が俺は大好き。
だから一生一緒にいてもらうね。────逃さないから。」
「へぇ〜。ハイハイ。分かった分かった。とりあえず塩だな……。
あ、翔、悪いんだけどスーパーでちょっといい塩買ってこようぜ。
いい肉にはまずは塩、それから焼き肉のタレが定番だもんな。」
「~~っ!!うん!」
今の俺の頭の中は、おいしい肉の食べ方で一杯。
だからまたごちゃごちゃした事は明日色々考えようと思い、結局俺は翔のいる家へ帰る。
この葛藤は何度も何度も襲ってきては、戻り、襲ってきては戻りを繰り返し、なんだかんだで一生翔の側にいるなんて……この時の俺は想像してなかった。

