「 ちょうどよかった。

また新しい時計買ったから明日はそれをつけて行ってよ。

それはデザインが嫌だったの? 」


「 いや、値段がだな~……。 」


ツラツラと自分の気持ちを語っているのに、その間全然話を聞いていない翔によって服は脱がされていき、いつものお風呂からのベッドでお触りコースへレッツゴーだ。

そして、いつものお触り時間を始めた翔を見て────不意に今日の蝶野さんとの会話を思い出す。


翔に何でも買ってもらって、貢がせて……こうして恋愛感情もないのに触れ合うなんて……なんちゃら交際と変わらないんじゃね?


────ゾッ!!


心底自分で自分が怖くなって血の気は引いていった。

しかもセックスはしたくないなんて、なんちゃら交際よりたちが悪いかもしれない。


そのままブルブルと震えだしてしまった俺を見て、翔はハァ……と大きなため息をつく。


「 ちゃんとゆっくり進むから、怖がらないでよ。

今日はこれ以上止めて寝ようか。 」


翔は俺にそのまま布団を掛けてくれて、そのままお風呂へ行った様だ。

本当は何か言わなきゃ!とか……何か行動しなきゃ!とか思ったけど、その時は頭の中がぐちゃぐちゃで……そのまま眠ってしまった。

その後目が覚めてパカッと目を開けると、俺を抱きしめて眠っている翔がいて……いつもどおりの朝が来た事を知る。


「 …………。 」


せっかくだから俺は翔の寝顔を見つめながら……これからどうしたいのかゆっくり考えた。

セックスは愛し合う証と考える俺にとって、このまま進むのは嫌だと思う。

でも翔はなぜか俺に執着していてソレをしたいという。

どちらかは諦めないといけない事なのだが……こういう時って皆どうしてるんだろう??

う~ん……と深く考え込んだが答えは出ず、代わりにそもそもどうして翔はそんなに俺に執着するのか?を考えた。


「 ……俺、別に美形じゃないし……金もないし……仕事だってすごくできるわけじゃないのにな。 」


俺はソロっ……と手を動かし、翔の顔に優しく触れた。

会った時から変わらない綺麗な顔。

それにすごくお金持ちらしいし、仕事だってすごくできる事は普段のテキパキした様子から分かる。

そんな男が執着してまで手に入れる価値なんて俺にはないんだよな……。

ズン!と気持ちは沈み、そのままペタッと縋る様に翔の体に抱きついた。


多分一回セックスしたら飽きられるだろうなとも思う。

翔はすごく飽きっぽいというか……全てに執着がないから。

多分何回かやってセフレみたいになって最後はさっきの腕時計みたいに……。


「 ────ポイッかな~……。 」


ハハッと乾いた笑いが漏れてきて、ならいっそ一発やってしまえばいいのでは……?とまで考えて悶々と悩む。