アキラは膝をついたまま、呆然と笑った。

(何だったんだ今の試合……!?まるで子供扱いじゃないか!)

周囲では貴族たちが失笑しながらも、何やら感心したような声も混じっていた。

「なかなか面白い戦いだったぞ、アキラ。」

エリオット王子は木剣を収め、柔らかく微笑んでいる。

「え、えぇ……。いやいや、どう考えても一方的にやられただけでしょう!?」

アキラは地面に座り込みながら、困惑した表情で訴える。しかし、王子は首を振った。

「確かに技術的には未熟だったが、君の剣には独自の発想があった。奇襲のような動きは、一瞬私を惑わせたぞ。」

「惑わせたって……ただがむしゃらに突っ込んだだけなんですけど!?」

アキラは大きく首を振るが、エリオット王子は真剣な表情で考え込んでいる。

(あれ……もしかしてこの人、やっぱりアホなのかな……?)

「ふむ、では……次回は君ともう少しじっくり試合をしてみたいな。」

「次回!?そんなものないですよね!?」

アキラは縋るようにリリスを見る。しかし、彼女は微笑を浮かべたまま、涼しい顔で言った。

「まぁ、アキラの剣術がどこまで伸びるのか、私も興味がありますね。」

「ちょっとぉぉぉ!?楽しんでません!?」

リリスは口元に手を当てながら、くすくすと笑っていた。完全に面白がっている。

「君のような剣士は貴族社会には珍しい。きっと面白い経験になるだろう。」

エリオット王子の言葉に、アキラは深々とため息をついた。

(ああ、なんか変な方向に進んでる気がする……ってかいつから俺は剣士になったんだ?)

そう思いながらも、逃げられない未来にアキラは頭を抱えるのだった。