雪哉はうちのホテルにチェックインした。俺はその晩、宿舎に戻らず雪哉の部屋に泊まった。絶対に会えると信じていたけれど、いつになるか分からなかった。やっと目の前に現れた愛しい人は、きっと中身は立派になったのだろうが、外見はなんら変わりない、可愛らしい人のままだった。
「雪哉、今どこに住んでるの?」
「東京」
「そのまま、ずっと東京?」
「それは……今職を探しているところだから、まだ何とも」
雪哉はS大学を俺らと同じ時に卒業していた。留学した時、後は卒論ゼミを取って卒論を提出すれば卒業出来る状態だったので、ゼミは特別にオンラインで受けさせてもらい、卒論を提出して卒業したというわけだ。俺も、雪哉がS大を卒業したという事は人づてに聞いていた。
雪哉は頑張った。英語の勉強を頑張りながら卒論を提出し、心理学の勉強も頑張り、スクールを無事に卒業して戻ってきたのだ。
「だいたい目星は付いてるんだろ?」
ベッドに寝そべりながら、俺たちは2年半ぶりの会話をした。まずは近況報告を。いや、その前にまずは愛を確かめ合ったわけなのだが。
「まあね。上手く行けば、都内の学校のスクールカウンセラーになれるよ」
雪哉は、自分と同じような性的少数者を救いたいと言う。特に、思春期に戸惑う事が多い彼らに寄り添いたいのだとか。だから、中高生を対象にしたスクールカウンセラーを目指しているのだ。
「そっか。じゃあ俺も東京に移るかな」
俺が気軽にそう言うと、雪哉はビックリして体を起こした。
「え?どういう事?ここの系列ホテルが東京にもあるの?」
「いいや」
「じゃあ、どうやって?」
「転職だよ。このホテルを辞めて、東京のホテルに就職するんだ」
「そんな、せっかくここで働いているのに、いいの?」
「どこでだって、ホテルの仕事は出来るだろ?俺がここに居たのは、いつかお前が来てくれるかもしれないと思ったからなんだから」
働き方に縛られたくない。俺は自分の居たい所に居る。何年勤めたからとか、スキーリゾートホテルの経験がどうとかにはこだわらない。
「お前がたくさんの少年少女たちを救うには、東京にいるのが一番いいんだろ?それなら、俺はお前の側にいる。だから一緒に暮らそう?」
そう言って、俺は雪哉の目を見つめた。また、雪哉の目が潤んだ。
「なんで泣くんだよ?」
「だって」
パジャマの袖で目を擦る雪哉。お前は何でそんなに可愛いんだ?
「返事は?」
そっと、抱きしめた。
「えっと、はい」
袖を目から剥がした雪哉は、俯きながら、上目使いに俺を見て言った。
「よし」
俺たちは一緒に暮らす。2人は居たいだけ一緒に居る。
「これからは、俺の事を信じてくれるよな?」
2年半前には信じてもらえなかったけど。
「うん。信じるよ」
雪哉はそう言うと、俺の腰に手を回してギューっと抱きしめてくれた。
「雪哉、今どこに住んでるの?」
「東京」
「そのまま、ずっと東京?」
「それは……今職を探しているところだから、まだ何とも」
雪哉はS大学を俺らと同じ時に卒業していた。留学した時、後は卒論ゼミを取って卒論を提出すれば卒業出来る状態だったので、ゼミは特別にオンラインで受けさせてもらい、卒論を提出して卒業したというわけだ。俺も、雪哉がS大を卒業したという事は人づてに聞いていた。
雪哉は頑張った。英語の勉強を頑張りながら卒論を提出し、心理学の勉強も頑張り、スクールを無事に卒業して戻ってきたのだ。
「だいたい目星は付いてるんだろ?」
ベッドに寝そべりながら、俺たちは2年半ぶりの会話をした。まずは近況報告を。いや、その前にまずは愛を確かめ合ったわけなのだが。
「まあね。上手く行けば、都内の学校のスクールカウンセラーになれるよ」
雪哉は、自分と同じような性的少数者を救いたいと言う。特に、思春期に戸惑う事が多い彼らに寄り添いたいのだとか。だから、中高生を対象にしたスクールカウンセラーを目指しているのだ。
「そっか。じゃあ俺も東京に移るかな」
俺が気軽にそう言うと、雪哉はビックリして体を起こした。
「え?どういう事?ここの系列ホテルが東京にもあるの?」
「いいや」
「じゃあ、どうやって?」
「転職だよ。このホテルを辞めて、東京のホテルに就職するんだ」
「そんな、せっかくここで働いているのに、いいの?」
「どこでだって、ホテルの仕事は出来るだろ?俺がここに居たのは、いつかお前が来てくれるかもしれないと思ったからなんだから」
働き方に縛られたくない。俺は自分の居たい所に居る。何年勤めたからとか、スキーリゾートホテルの経験がどうとかにはこだわらない。
「お前がたくさんの少年少女たちを救うには、東京にいるのが一番いいんだろ?それなら、俺はお前の側にいる。だから一緒に暮らそう?」
そう言って、俺は雪哉の目を見つめた。また、雪哉の目が潤んだ。
「なんで泣くんだよ?」
「だって」
パジャマの袖で目を擦る雪哉。お前は何でそんなに可愛いんだ?
「返事は?」
そっと、抱きしめた。
「えっと、はい」
袖を目から剥がした雪哉は、俯きながら、上目使いに俺を見て言った。
「よし」
俺たちは一緒に暮らす。2人は居たいだけ一緒に居る。
「これからは、俺の事を信じてくれるよな?」
2年半前には信じてもらえなかったけど。
「うん。信じるよ」
雪哉はそう言うと、俺の腰に手を回してギューっと抱きしめてくれた。



