昼食を摂る為、リフト乗り場近くのラウンジに入った。今は小中学校が休みではないので、親子連れはほとんどいない。小さい子供を連れた家族が1組いるくらい。後はだいたい大学生と思われるグループばかりだった。
スキーと言ったらカレーかラーメンだろう。今日は晴れていて暑いくらいなので、ラーメンではなくカレーライスにした。カレーライスをトレイに乗せ、スプーンや水を取ろうと振り返ったところで、危うく人とぶつかりそうになった。
「おっと」
「うわ、ごめんなさい!」
謝ってきたのは若い男だった。俺と背丈が同じくらいで、すごく近くで目が合った。うっわ、イケメンだなあ。いや、可愛い?ぱっちりしていて印象的な目をしている。雪焼けで鼻や頬がほんのり赤い。なんとおでこにゴーグルの跡。前髪もぺっちゃんこで半分上向いちゃってるし。でも可愛い。
あっ!このウエアーは!顔なんぞを見ている場合ではなかった。このウエアーは、さっきの超絶スキーの上手いやつでは?牛みたいに白地に黒ぶちの模様だ。
「あの、大丈夫ですか?」
そいつが言った。
「あ?ああ、大丈夫、です」
「よかった。あ、水ですよね。あとスプーンもか」
なんと、そいつは俺の為に冷水機からコップに水を入れ、スプーンまで取ってトレイに乗せてくれた。
「あ、どうも」
そこへ、
「雪哉、何やってるんだ?おい、俺の連れに何手ぇ出してんだてめえ」
と背後から声がする。しかもその声の主は俺の肩をがしっと掴み、俺を振り返らせた。
「あ!」
「あ?お前、涼介じゃねえか。なんでこんな所にいるんだ?」
「神田さんこそ!なんでいるんですか?」
びっくりした。
「俺はよ、スキー部だから」
「え?神田さん、スキー部だったの?」
「そうだよ。俺は長野出身だからな。スキーは上手いんだぜ」
「へえ、知らなかった」
「お前はなんでいんの?旅行か?」
「ああ、俺はサークルで」
俺と神田さんが話していると、
「ねえ神田さん、僕の事も紹介してよ」
さっきの可愛い、超絶スキーの上手い牛柄ウエアー君が言葉を発した。
「ああ、うちのバンドのメンバーの、三木涼介。それでこっちが……」
「神田さん!この人は、もしかしてうちの大学の?」
神田さんの紹介を遮って、俺が食らいつくように聞くと、ちょっとびっくりした様子で、
「あ?そうだよ。うちのスキー部の……」
と言いかけた。だが、最後まで聞かずに俺は言った。
「俺、スキー部に入部する!今すぐに。いいっすよね?」
自分でも驚きだが、目の前の2人はもっと驚いているだろう。目をまん丸くして、俺を見ていた。
どうして俺は、スキー部に入りたいと思ったのだろう。実は自分でもよく分からない。スキーが上手くなりたいかと聞かれたら、実際ノーだ。1つのスポーツをそれほど深くやろうとは思わない。ましてや冬に1~2回しか出来ないスキーが上手くなったところで、大して自慢も出来ないではないか。
だが、あいつ……雪哉が滑っているのを見た時は、確かに格好いいと思った。正直憧れた。それでも、それがプロのスキーヤーだったり、オリンピック選手だったり、強豪校のスキー部の選手だったりしたら素通りしただろう。だけど雪哉は俺と同じS大の学生だった。東京の大学に通う学生だったのだ。俺もあんな風になれるかもしれない?出来ればあんな風になりたい。
いや、本当にそうなのか?雪哉の顔を見るまでは、そんな事考えもしなかったのではないか。俺はもしかすると、雪哉に近づきたかっただけではないか。仲良くなりたいだけなのでは。
え?なんで?
スキーと言ったらカレーかラーメンだろう。今日は晴れていて暑いくらいなので、ラーメンではなくカレーライスにした。カレーライスをトレイに乗せ、スプーンや水を取ろうと振り返ったところで、危うく人とぶつかりそうになった。
「おっと」
「うわ、ごめんなさい!」
謝ってきたのは若い男だった。俺と背丈が同じくらいで、すごく近くで目が合った。うっわ、イケメンだなあ。いや、可愛い?ぱっちりしていて印象的な目をしている。雪焼けで鼻や頬がほんのり赤い。なんとおでこにゴーグルの跡。前髪もぺっちゃんこで半分上向いちゃってるし。でも可愛い。
あっ!このウエアーは!顔なんぞを見ている場合ではなかった。このウエアーは、さっきの超絶スキーの上手いやつでは?牛みたいに白地に黒ぶちの模様だ。
「あの、大丈夫ですか?」
そいつが言った。
「あ?ああ、大丈夫、です」
「よかった。あ、水ですよね。あとスプーンもか」
なんと、そいつは俺の為に冷水機からコップに水を入れ、スプーンまで取ってトレイに乗せてくれた。
「あ、どうも」
そこへ、
「雪哉、何やってるんだ?おい、俺の連れに何手ぇ出してんだてめえ」
と背後から声がする。しかもその声の主は俺の肩をがしっと掴み、俺を振り返らせた。
「あ!」
「あ?お前、涼介じゃねえか。なんでこんな所にいるんだ?」
「神田さんこそ!なんでいるんですか?」
びっくりした。
「俺はよ、スキー部だから」
「え?神田さん、スキー部だったの?」
「そうだよ。俺は長野出身だからな。スキーは上手いんだぜ」
「へえ、知らなかった」
「お前はなんでいんの?旅行か?」
「ああ、俺はサークルで」
俺と神田さんが話していると、
「ねえ神田さん、僕の事も紹介してよ」
さっきの可愛い、超絶スキーの上手い牛柄ウエアー君が言葉を発した。
「ああ、うちのバンドのメンバーの、三木涼介。それでこっちが……」
「神田さん!この人は、もしかしてうちの大学の?」
神田さんの紹介を遮って、俺が食らいつくように聞くと、ちょっとびっくりした様子で、
「あ?そうだよ。うちのスキー部の……」
と言いかけた。だが、最後まで聞かずに俺は言った。
「俺、スキー部に入部する!今すぐに。いいっすよね?」
自分でも驚きだが、目の前の2人はもっと驚いているだろう。目をまん丸くして、俺を見ていた。
どうして俺は、スキー部に入りたいと思ったのだろう。実は自分でもよく分からない。スキーが上手くなりたいかと聞かれたら、実際ノーだ。1つのスポーツをそれほど深くやろうとは思わない。ましてや冬に1~2回しか出来ないスキーが上手くなったところで、大して自慢も出来ないではないか。
だが、あいつ……雪哉が滑っているのを見た時は、確かに格好いいと思った。正直憧れた。それでも、それがプロのスキーヤーだったり、オリンピック選手だったり、強豪校のスキー部の選手だったりしたら素通りしただろう。だけど雪哉は俺と同じS大の学生だった。東京の大学に通う学生だったのだ。俺もあんな風になれるかもしれない?出来ればあんな風になりたい。
いや、本当にそうなのか?雪哉の顔を見るまでは、そんな事考えもしなかったのではないか。俺はもしかすると、雪哉に近づきたかっただけではないか。仲良くなりたいだけなのでは。
え?なんで?



