人の峠の裏には

佐久間圭吾が村に来たとき、彼は最初から“よそ者のまま”だった。
笑いかけても、相手の目を見ない。
手土産にも戸惑いを隠さない。
何より――村人の“笑顔”の不自然さを最初に言葉にした。

「この村、何かおかしいですね」

それを聞いていた村の男が、静かに言った。

「……あんた、それ、いま“本音”で言いましたか?」

それが、佐久間が村から“消えた日”だった。