こんな世界で、私たちは恋を探す。


「校外学習、やります。」
担任のその一言で、どっとクラスが湧いた6月の初旬。初夏で暑くなり始めた教室が、熱気に包まれた瞬間だった。斜め前の席に座る陽葵もきらきらと目を輝かせている。みんなはしゃぎ過ぎだと思いながらも、私も踊る心を抑えようと頑張っている所だった。何歳になっても、校外学習だなんて聞いたらはしゃいでしまうのは誰でも一緒だ。
どうやら、今回の校外学習は日帰りで県内の歴史あるお寺や神社が密集する観光地に行くというものらしい。名目は歴史のフィールドワークではあるのであまりはしゃがないように、と釘を刺されたが、周りを見る限りそれを聞いている生徒はいないようだった。

「みっちゃん! これはチャンスだよ!!」
お昼休み。たこさんウィンナーを挟んだお箸を振りながら、はしゃいだ声で陽葵がそう言ってくる。真剣な顔でそれを頬張って飲み込む彼女は小動物みたいで可愛い。
「陽葵、可愛いね。」
「誤魔化しても無駄だよぉ」
陽葵が何の事を話しているかはすぐにわかる。明日の六限目のLHRで、校外学習の班を決める事になったのだ。しかも校外学習後にスライド発表などがある事から、班員は男子と女子それぞれ2人ずつでないといけない。つまり男女どちらかが、どちらかを誘う必要があった。
「そうは言われても…。」
「ほら、明日までに聖くんに連絡取らなくちゃ!」
「無理無理!」
陽葵の言うように、明日までに班員を決めておかなければいけないのは事実だった。班決めが明日だからと言って、それまで何も行動を取っていなければあぶれてしまうのは確かだからだ。大体今日中に誰と組むかを決めてLHRでは集まるだけ、と言うのがみんなにとっての“班決め”なのだ。
「えー、でも…紗菜ちゃんに取られちゃうよー?」
「それは、…わかってる。」
望月さんは聖を誘うんだろうな…。聖もきっとそれを引き受けるだろう。それが目に見えていて、私には入る隙がないんじゃないかと思ってしまう。それに、私は高校に入ってからほとんど彼とは話していない。いきなり誘われても、きっと聖は困惑するだけだ。やっぱり、今回は諦めた方がいいのかな。嫌でも、そう考えてしまう自分がいた。



1日の授業が終わって帰りの挨拶が終了すると、私はすぐに教室を出る。特に教室にいたくない理由はないけどかと言ってずっといる理由もない。陽葵と違って部活に入っていない私は、帰りはいつも一人だ。陽葵の事は大好きだけど、一人の時間も嫌いではない。イヤフォンをして好きな曲を聴き、自分だけの空間に浸るのは案外気楽でよかったりもする。
さて、今日はどんな音楽にしよう…。廊下を歩きながらスマホのプレイリストを見ていた私は、突然誰かに肩を触れられて驚いて立ち止まる。
「ねえ、」
…え?
「追いついてよかった…! 心葵帰るの早過ぎだって。」
どこかの大物若手俳優くらいのイケメンが、話しかけてきた。一瞬、全ての思考が停止する。なんで、聖が私に…?
目の前で笑っているのは、紛れもなく私の好きな人だった。いつぶりだろう、こんなに近くで彼の笑顔を見たのは。私に向けられた、彼の声を聞いたのは。驚き過ぎて声もまともに出ない。
「校外学習の班、一緒に組まない?」
嬉しい、よりもなんで? が先に来ていた。なんで、聖が私なんかを? 私が好きな、でもほとんど喋っていなかった、聖が。
「…いい、の?」
今私、どんな顔してるんだろ。きっと真っ赤になってるんだろうな。
「俺から誘ってきてるんだから、いいも何もないじゃん」
おかしそうに笑ってそう言う聖は、私の小学校時代を切り取ったみたいに何も変わっていなかった。少し眉毛が下がる所も、ニカっと歯が見えるくらいに大きく口を開ける所も。ただあの頃から少し低くなった声と、より男性らしくなった顔付きが時の流れを物語っていた。
「折角俺ら同じ小中で昔は仲良かったのにさ、高校入ってから全然喋らないの悲しいじゃん。仲良くしよ?」
破壊力、えげつないって…。これこそ心臓に悪い。そんな事言われてしまったら、期待しちゃうじゃん。心が歓喜の悲鳴をあげながらも、平常心を保ちながら返事をする。
「…うん、! じゃあ、えっと…誘ってくれてありがとう。陽葵も一緒だから、伝えとくね。」
「了解! 俺、凉名から誘われてるんだけど、心葵は大丈夫?」
あれ、凉名くんと仲良かったんだ。知らない事実が発覚して少し驚いたが、二人が仲良いのは私としても何となく嬉しい。
「勿論!」
そんじゃあまた明日、と言って教室の方に走り出していく聖を見送って、私は再び歩き出す。と言うよりかは、スキップしそうになるくらい浮かれている自信がある。
まさか、こんな事があるなんて。最近の望月さんとの馴れ合いを見ていただけに受けた驚きは大きかったが、同時に喜びも物凄く大きかった。また、昔のように…なれるの、かもしれない。大きくなる期待を胸に、校門をくぐる。ポップな曲調のラブソングを聴きながら歩く私は、じめっとした梅雨特有の蒸し暑さも全く気にならなかった。



「今日は待ちに待ったー?」
「「校外学習!」」
陽葵の掛け声の元で、男子二人が声を揃えてそう言う姿は何だか小学生みたいで微笑ましい。現地集合、現地解散のこの校外学習は歴史の授業の一環である割に自由度が非常に高く、私たちも美味しいカフェで食事するなどという行程を立てている。今は、クラスの集合場所に行くべくして、四人で電車に揺られていた。
「みっちゃんももっとはしゃごーよー!! 何だかお母さんみたいな目してるよ?」
純粋無垢で明るい陽葵が私にそんなお誘いをしてくるが、「いいよいいよ私は」と取り敢えずは言っておく事にした。だが、あまり興味がないように取り繕っている私も、勿論内心とてつもなく楽しみにしてる。校外学習は私服で行う事になっていたので昨日はどんな服を着るべきなのか悩みに悩んだし、楽しみすぎて眠れなかった。お陰で今日は寝不足だ。
「心葵ちゃんも東條さんも私服似合ってるじゃん」
「凉名くん、お世辞はいいんだよー? ほんっと女たらしなんだから困っちゃうねぇ、みっちゃん」
どの返し方が正解か分からずに苦笑いをした私に、すかさず聖がフォローを入れてくれる。
「東條さんも凉名も程々にねー。心葵が困ってるよー」
「はぁい」
つまんねーのー、と不貞腐れた顔で言う陽葵は、私にだけ伝わる程度に一瞬だけにやっと笑みを浮かべた。意訳をすると、『今日、楽しみだね!』と言う所だろう。『うん!!』微かに私も頷いて、満足げになる陽葵。
「ふふ、ありがとう聖。」
移り変わる景色を車窓から眺めながら、緊張半分、期待半分の私は一人で考える。一つ言えることは、とにかく今この状況が、ただただ幸せだと言う事だった。聖と会話ができるこの環境が、四人で楽しく雑談ができているこの環境が、本当に楽しく、一生このままで良いと思える程だ。
それに今日だけではない。今回の活動の目的はあくまで歴史の探究の一環だったので、度々授業で班で集まり調べ学習を行う時間が設けられた。つまり聖と喋る事は必然的に多くなり、たくさん楽しい時間を過ごさせてもらった。距離も明らかに縮んでいるのではないかと思う。修学旅行もある高校2年生の今に校外学習を考えてくれた先生たちには感謝してもしきれない。
「あ、…おはよ! 聖くん!」
四人のものではない声がして驚いて通路を見ると、そこには望月さんとそのグループの子たちがいた。そうだった。集合時間までに現地に着かなければいけないとなると、大体乗る電車の時刻は揃う。同じクラスの彼女がここにいる事は全く不思議なことではなかった。
「あぁおはよう望月。服、似合ってるじゃん。」
ああ、これならどんな男子でも振り向いてしまうだろう。女の私がそう思ってしまう程に可愛く、それでいて彼女に似合った服を身に纏った望月さんは、一人の女性として完璧に見えた。その途端、昨日の私の苦悩が馬鹿らしく思えると同時に、自分がとてつもなく惨めに感じた。そうだよね、どれだけ頑張っても所詮私はこの程度だ。聖はやっぱり…。
「ありがと! じゃあ、ばいばい! 校外学習、楽しもーね!」
可愛らしい動作と共に通路を歩いて行った彼女たちを私はただ呆然と眺めていた。
ただ、この班決めの際に一悶着あったのも事実らしい。どうやら望月さんからのお誘いを『先着がいるから』と聖が断った、だとか。最初は虎の尾を踏んだかもしれないと怖くなっていた私だったが、彼女は意外にも潔かった。そして今でもめげずに積極的に話しかけに行っていて、その点ではすごく尊敬できる。人は見かけにはよらない、とはこのことなのかもしれない。
「まあ、じゃあ今日は一日楽しみましょー!」
陽葵が仕切り直してくれて、班の雰囲気は良いままだった。だがやはりほんの少しのモヤモヤが頭の隅に引っかかって、気分は先程よりは憂鬱になっていた。



「おいしぃ…!」
早々に歴史探究を終えた私たちは、露店で買った苺最中を頬張っていた。苺を最中でサンドしたようなスイーツで、苺大福みたいな味がする。
「この後カフェも行くのに大丈夫…?」
隣で少し心配そうにそういう凉名くんに大丈夫大丈夫ー!と呑気に答える聖。彼も意外にも甘党で、今何も食べていないのは凉名くんだけだった。
丁度近くにあったベンチが空いて、そちらに移動する。ベンチに腰掛けた四人はもう暑さでぐったりしていて、黙々と苺最中を食べていた。
「…夏だねぇ」
沈黙を打開しようと、陽葵が口を開いた。
「ね、暑いの嫌だね。心葵ちゃんは暑いのと寒いのどっちが好き?」
最近何となく感じてはいたが、やはり凉名くんの私の呼び方が変わっている。前までは『花野さん』だったのに、今では『心葵ちゃん』だ。小学校から知っている聖はともかくとして、男子から下の名前で呼ばれる事は殆どなかったからとても新鮮に感じた。やはり、彼は女慣れしているのだろう。
「うーん、どうだろ…。やっぱり暑いのかなぁ」
「え、そうなんだ! なんで?」
なんで、って聞かれても、。
「春が終わった証、だから…?」
「え、心葵ちゃん春嫌いなの? なんで? ほら、桜とか結構綺麗じゃん。」
正直、あまり聞かれても答えるには気が引ける質問だった。あまり思い出したくない事だし、何が起こったのかを知っている聖の前で答えるのは憚られる。凉名くんの質問に答えられずにうーん…、と悩んでいたら横から聖が助け舟を出してくれた。
「ま、俺もなんとなくわかるよ。春って独特の空気感あんじゃん。」
「うんうん! 出会いと別れの季節、みたいなねー」
「へぇ、まあいいや。それよりもほら、次行こ次ー!」
会話に興味をなくしたらしい凉名くんは、ベンチから立って荷物をまとめ始める。
「そーだね! カフェだカフェ。楽しみだなぁ!」
陽葵もそれに続いて席を立ち、二人で先に歩き始めてしまった。最初に出遅れた私と聖は、すぐ後から二人を追う。
「二人とも気が早いな、心葵」
聖から話しかけられて、少し鼓動が早くなる。今日初めて、二人だけで喋った。
「そだね、」
「結構この班楽しいよな。ほんと心葵誘って正解だった。乗ってくれてありがと。」
改まってお礼を言われてしまい、ただでさえ恥ずかしいのにもっと恥ずかしくなってくる。全身の血が顔に昇っているのを感じた。
「いやいや、こっちこそ誘ってくれて本当にありがと…。それに、また聖とたくさん話せて嬉しいな。一生あのままだと思ってたから。」
「俺も。あ、ちょっと止まって心葵」
どうしたの、と聞くよりも先に聖の手がこちらに伸びてきて、自分史上最高に胸が高まる音がした。一瞬だけ私の口元に彼の指先が触れ、そこ一体がとてつもなく熱く感じる。
「取れた。あんこ、ついてたよ」
にこっと笑って手についてあんこをティッシュで拭き取る彼を3秒、放心状態で見つめてしまう。
穴があったら…入りたい。
「…ごめん。ありがと」
今日一番ときめいた事が、一瞬にして今日一番恥ずかしかった事に変わってしまった。だが勿論私の嬉しさはこれまでのものと非にならない程で、望月さんと聖の関係など頭から飛んで行ってしまった。取り敢えずは、…もう一生顔は洗えないな。



楽しかった校外学習も終わり、季節は夏本番へと近づきつつあった。聖とはあれから時々喋るような関係になる事ができ、週に三日程はメールが1、2時間絶え間なく続くようにもなった。毎日が夢みたいに楽しく、いつかツケが回ってくるのではないかと思う程であった。
「あつーーい」
隣でそう言って項垂れる陽葵のような生徒は少なくなく、私もハンディファンから来る生ぬるい風を顔に向けてこの暑さを何とか耐えている所だ。
「この暑さは倒れちゃうよね、ほんと。」
「ねぇ。」
「こんな日には…アイスでも食べて帰りますかっ?」
唐突に陽葵ががばっと顔をあげ、キラキラと目を輝かせながらそう聞いてくる。考えただけで胸が躍る提案だったが、一つだけ懸念点がある。
「陽葵、今日部活じゃなかったけ…大丈夫?」
「熱中症指数超えてて出来そうにないー」
「ああ、なるほど。じゃあ行こっか!」
陽葵が所属するテニス部は厳しく、あまり休む事ができないのでこれは滅多にないチャンスだった。折角空いた彼女の放課後に私との予定を入れてしまって良いのかは少し心配だが、アイスという単語だけで少し涼しくなれたような気がしてこの後の授業にもやる気が出てくる。
「なになに、アイス食べに行くのー?」
「俺らも部活ないし、行こっかなー」
何味のアイスを食べようかと二人で話し合っていた所に、席替えの度に隣になる凉名くんと、彼と最近よく連んでいる聖が話に入ってきた。校外学習の後くらいから、休み時間に聖が凉名くんの席に遊びにくるようになったのだ。私としてはこの上ない幸せで、凉名くんとずっと隣の席である事は大きな利益であった。
「お! お二人も一緒に来る? ね、いいよね心葵!」
「う、うん」
少しだけ強引だったかもしれないけど、すかさず陽葵がそう言ってくれたお陰でなんとなく一緒に行くような雰囲気になった。
「お、まじ? じゃあご一緒させてもらおうかな。」
案の定彼らも頷いてくれ、私たちは学校が終わった後すぐに近くのアイスクリーム屋さんに行くことが決定した。
後でちゃんと感謝してねー?、と言わんばかりの陽葵の悪そうな笑みが見えたところでチャイムが鳴り、担当の教師が教室に入ってくる。
「じゃあ、また後でよろしくな! 楽しみにしてる。」
そう言って席に戻って行った聖をいつまでもぼぉっと見つめていたら、問題を当てられてしまって凉名くんに答えを教えてもらう事になってしまった。



「最近花野さんと陽葵ちゃん、ちょっと調子乗ってるよね。」
「私もそれ思ったー! 聖くんと仲良くしてねぇ…」
休み時間。たまたま一人でトイレに入ってたら、そんな会話が洗い場の方から聞こえてきた。同じクラスの、華やかなグループの女子の声だった。一瞬にして、呼吸が苦しくなるのを感じる。トイレの鍵に触れたまま、手が動かなくなっていた。
どうし、よう。また、あの頃と…同じ事、が。
あの、嫌がらせが続く…日々が。
どう頑張ってもその可能性が頭から離れず、それどころか頭の中をその恐怖だけが膨れ上がり、破裂しそうだった。涙が出そうになるのをぐっと堪えて、どうにか意識を保つ。目を閉じてしまえばあの頃の記憶が蘇ってきそうで、瞬きもせず時が経つのを静かに待っていた。
絶望が、私の頭を支配していた。
「自分の身の程弁えろって話だよね。」
「ほんとそう。紗菜と聖くん、いい感じだったのに。」
「結構邪魔、だよね。ねえ、紗菜もそう思わない?」
だめだ。学年で一番目立っている望月さんがこれを認めてしまえば、始まってしまうだろう。あの頃と同じ事が、繰り返されるだろう。しかも…今度は、陽葵まで。私のせいで、陽葵まで。今更後悔しても謝っても遅いのに、ただただ思い浮かぶのは謝罪の言葉だった。ごめん、陽葵。ほんとに、ごめん。彼女は、何も悪くないのに。なのに、私が…聖が好きだから。
標的は一人に絞るだろうから、恐らくどちらかが嫌がらせを受ける側に、そしてどちらかがそれをする、側に。どちらにせよ最悪であることは間違いないけど、それでもする方が絶対にマシだ。受ける側の受けるダメージは、私が一番よくわかっていた。せめて、陽葵は…。
もう、祈るしかなかった。どうか、陽葵が、標的になりませんように。陽葵が、私と同じ思いをしなくても、すみますように…。

「えー、まあ、仕方ないんじゃないかなぁ? だってほら、心葵ちゃんって私に席変わってくれたじゃん? だから、どっちもどっちだと思うなー」
え…?
もしかして、助かった…? 一瞬何かの聞き間違いかと思ったが、彼女は確かにそう言った。その言葉は、私を擁護してくれているようにしか感じられなかった。
望月さんが、私を助けてくれた? 庇ってくれたの…?
「えーそう? まあ紗菜が言うんなら私はいいけど…。」
「うん、私も別にそんなに思ってなかったし。」
「それよりほら、戻ろー? 授業始まっちゃうよー」
そだね、と言ってそそくさと3人はトイレから出て行き、足音がだんだん遠ざかっていく。緊張が解けて私は、思わず座り込んでしまいそうになった。
「、よかった…。」
一人でそう呟いた途端に、涙が一粒溢れ落ちた。安堵から来るものだろうか。恐怖はまだ完全には抜けていなかったが、それでも先程までと比べると格段に心は楽になっていた。でも、それと同時に今度は自分自身に、私は失望していた。
望月さんを、疑っていた事。決めつけていた事。何より、人を…偏見で、見た目だけで、判断してしまっていた事。私は、訳もなく私に嫌がらせを行っていた生徒達と、…何一つ変わらなかったのだ。結局、被害者づらをしていただけだったんだ。
ごめんなさい、望月さん。本当に、ごめん。

この時、私は確信した。望月さんには、…叶いっこない。負けていたのは容姿でも、言動でも、動作でもなかった。性根の時点で、私は彼女よりも下だった。私は彼女に、全てにおいて負けていた。
そして、こんな私を好きになってくれる人は、誰もいない。聖に相応しいのは、彼女。私では、ない。私は、叶わない恋心を胸に抱いて…生きていくしかない。
これが齢17歳の私が知った、現実だった。