例えば、鶯の透き通る鳴き声のような。
一日限りの輝きを精一杯身に纏う、朝顔のような。
帰り道にそっと薫る、金木犀のような。
触れた瞬間に溶けてしまう、雪の結晶のような。

そんな恋は、世界のどこにもなかった。
憧れていた恋なんてものはただの虚像で、幻想だった。

それでも、君と出会えた事。それは紛れもなく私の光だった。

心の底から、ありがとう。

今はまだそうは言えない私だけど、いつか言える日が来るのかな。
その時までどうか待っていてくれませんか。
こんな私を、待っていてくれませんか。


春の朝は、無性に泣きたくなる。
悲しいからなのか、寂しいからなのか。それとも、怖いからなのか。そのどの感情もピンと来なくて、ただただ天井を見つめたまま静けさに身を任せる。こんな時には、どうすれば良い? この言い表すことのできない感情から抜け出す方法を、私はまだ知らなかった。
(ひじり)。」
無意識に人名を呟く。
だが勿論誰に届くわけもなく、発せられた音は静寂に飲み込まれていった。



「みっちゃんおはよー」
8時半。ようやく新たなクラスのグループが構築されきった4月の下旬、前年から仲良くしてくれている東條陽葵(とうじょうひまり)が朝の挨拶にやってくる。笑顔がよく似合う彼女は、夏に真っ直ぐに咲く向日葵がよく似合うだろう。名は体を表すとはこの事だとつくづく思う。
「おはよー!」
これで今年も安泰、だなんて考えてしまっている私は計算高いのだろうか。
「ねね、今日の聖くん見たー? きっとみっちゃんキュン死しちゃうよ!」
「キュン死って、流石に大袈裟だって」
陽葵の物言いが面白くて笑ってしまうが、少しだけ鼓動が早まるのを感じる。
「まあまあ、見てなって! さっき靴箱のとこで見たからそろそろ来ると思うなー」
そう陽葵が言ったすぐ後に扉のガラスから見慣れない髪型の彼が見え、なるほどなと感心してしまった。
「うん、確かにちょっとときめくかも。」
聖楓(ひじりかえで)。芸名みたいな名前を持つ彼は、本当に俳優みたいな顔立ちをしている。ほんの少し茶色がかったストレートの髪に、二重の大きな目。色白な肌は毛穴ひとつ見えず、整った鼻と唇を持つ。いわゆる、イケメンというやつだ。そんな彼に好意を寄せる女子は数多く、男子の中でも頭1つ飛び出す一軍、と呼ばれる部類の住民。私には遠い世界の話だ。
「よしよし、素直でよろしい。」そう言って私の頭を撫でる陽葵の手はとても温かい。
だが聖の周りの子達を俯瞰視している私もそんな彼に好意を抱く一人であり、今もこうして髪型を変えた彼に見惚れてしまっているのは確かである。いつからこんな風に遠くで見つめるだけになったのだろうと少し悲しくなるが、心の中でどこか諦めている部分もあり、私はゆっくりと聖から目を離した。
「にしても本当にみっちゃんの片想いは長いねー。いつからだっけ?」
私の頭を撫でる手を止めた陽葵は、今度は私の髪の毛を触りながらそう聞く。
「小5、かな。」
「え、なっが! 何年間? えっと…5年間じゃん!」
「まあ、言われてみれば。」
自分でもこんなに長く一人を想っている事実に少し驚くけど、好きなものは好きなのだから仕方がない。だって、聖は…。
「拗らせてますねー」
よし、できた!と言って私の髪を思い通りの髪型にした彼女は、予鈴が鳴って自分の席へと帰っていった。

「私も拗らせたくてそうしてるわけじゃないんだけどなー」
「ん? なんて?」
誰かに届けようと思っていなかった言葉に反応があって、驚いて横を向く。
「凉名くん! いたんだ。」
「いたって、まあそりゃ隣の席ですし。」
「そっか、そりゃそうだよね…。おはよ!」
「おはよう花野(かの)さん。今日はお団子じゃん、似合ってるね。」
今年初めて同じクラスになった涼名(すずな)くんは時々、こうやって思わせぶりな事を言ってくる。きっと本人は女の子に慣れているんだろうけど、私にとっては心臓に悪い。
「ありがとう、陽葵がしてくれたの。」
「えーいいじゃん、仲良いよね東條さんと。ひょっとして同中?」
「うーん、陽葵とは一緒じゃないかな。」
同じ中学だったの聖だけ。だが、そんな彼とは中高校になってからはあまり関わりはない。1番仲が良かったのは、小学校の頃だ。
「へぇ、じゃあ聖とは?」
「へっ?」
凉名くんの口からまさか聖が出てくると思わなくて、一瞬思考が停止してからやってしまった、と思った。
「やっぱ花野さん、聖のこと好きなんだね。」
なんで気づかれちゃうのー! まあでも隣で散々陽葵と話していたのだから、当然の結果ではある。これからはあまり話さないように陽葵に口止めしておかないと。
「あ、いや、えっと…。」
「ははっ、まあいいや。SHR始まるよ、今日日直じゃなかった?」
「あ、ほんとだ!」
凉名くんに翻弄されながらもどうにか無事にSHRを終わらす事ができた私は、教卓に立つ間中眠そうに窓の外を眺める聖を観察していた事を陽葵にも言っていない。



楓、くん。
小学校の頃はそう呼んでいた彼は、今では話しかけに行く事すら難しくなってしまった。どちらが変わったのだろうかと聞かれてはわからない。聖がどんどん明るく開放的になった事も、私がどんどん暗く内気になった事も、どちらもあるのかもしれない。だがどちらにせよ私は彼とは対照的で、到底好意を口にする事はできない事は確かである。蠍座とオリオン座を同じ時刻に見る事ができない事と同じく、私と彼も永遠に近づくことができないのだった。
だから、こうして私はチャンスを自ら溝に捨ててしまうのだろう。

「ねね、心葵(みつき)ちゃん! 次の席、楓くんと隣だよね? お願い! 変わってくれない!?」
クラスが変わってからの初めての席替え。運良く聖の隣の席を引き当てた私の元に学年で一番華やいでいる望月紗菜がやって来た。私は知っていた。彼女のような部類の子に歯向かうと、どうなるのか。彼女たちは下手に刺激しない方が良い。そして、同様に彼女もわかっている。自分の言う事にどれほどの影響力があるのかを。私に選択権はないと言う事を。
例えるなら、折角ありつけた餌を上の位の者に取られるライオンだ。だが、これは自然の摂理であるが故に、仕方がない。そう、これがここで生きていくための掟なのだから。
「うん、全然いいよー」
「ほんと!? ありがとう! やった!」
いかにも純粋な女の子を演じている彼女の本当の姿は知らないし、知りたくもない。よくここまで完璧に振る舞えるな、と感心してしまう。顔も人一倍整っている望月さんの事だ。きっと、こんな風に数多の男子たちを射止めてきたのだろう。それに、きっと聖だって。
「そうそう、私の席なんだけどね、凉名の隣なんだよね…。2回連続になっちゃうけど、いい…?」
遠慮がちに上目遣いでそう尋ねてくる彼女は、確かに可愛い。勢いに押されて私は頷くしかなかった。
「お、もしかしてまたお隣さん?」
新しい席に座ると、件の凉名くんから声を掛けられた。本当は聖の隣が良かったのは事実だったが、彼とまた近くなれたことも嬉しくはある。
「あ、うん、よろしくね!」
「なんか元気ないね、なんかあった?」
目ざとい彼には、隠し事なんかできないのかもしれない。だが、流石に先ほどの出来事を彼に言うのは憚られる。
「ううん、大丈夫。」
「、また聖のこと?」
「え…?」
少し躊躇いがちではあったがはっきりと聖の名を出した彼は、少し真剣な顔をしていた。本当に心配してくれているのだ。いい人だと、直感的に思う。
「聖の事、好きなのはとてもいい事だと思うけどさ。それであんまり思い詰めるようだとこっちが心配なるよ? 程々にね。」
「ごめんね、凉名くんに気を使わせてしまって。ありがとう…」
ううん、困ったことがあったらなんでも相談してね。そう言って彼は、朗らかに笑った。進級早々、良い友達を持てたのかもしれないと嬉しくなる。
ふと私が座る予定だった席の方を見ると、望月さんが聖に話しかけている所が見えた。明るい性格なのだから当たり前だが聖も快く返答をしていて、会話は成り立っているように見られた。惜しいことをしたな。嫌でもそう思ってしまう自分がいた。だが、もう今更元に戻す事はできない。気を取り直して行くしかない。



薄暗く、どこか汚れた狭い部屋に佇む“何か”の影。誰のものかも分からない罵声が混ざり合い、反響する。醜い色に変色したノートに、筆箱。靴箱から溢れだす、誰かを罵倒する紙。次々と場面は移り変わり、その度にエスカレートする『嫌がらせ』。
『気持ち悪い』
『消えて』
『学校辞めたら良いのに』
暗がりの中聞こえてくる心無い言葉は、どんどん“何か”を暗闇へと突き落とす。何度も固く角張った地面にその身を打ち付け、その度にもう誰の手でも治すことの出来ない傷が“何か”に刻まれていく。
後1つの言葉で、一言の罵倒で再起不能になる“何か”に向かって、1つの声が聞こえて来る。

『俺、お前の事嫌いだから。』

「楓くん!!」
叫んでから、目が覚めた。
ああ…夢、か。
上に来ていたスエットは汗で濡れていた。瞳孔は開き、まだ呼吸も早い。耳から心臓が飛び出ているのではないかと思う程に、胸を打ち付ける鼓動がうるさかった。
「夢で、良かった。」
瞬きをすると、一粒の涙が頬を伝った。そして私はまた、どれほど自分が彼の事を好いているかを再確認する。ただの夢でさえ。ただの「もしも」の世界での出来事でさえ、私を不安にさせるには十分すぎた。

小学5年生の時、私はクラスで孤立していた。理由は至って単純だった。
当時の中心格の子が、私を毛嫌いしていたから。
靴箱に悪口を書いた紙を入れる。お気に入りだった鉛筆を折られる。そんなちょっとした、でも確かに陰湿な嫌がらせを受けた。私が配膳した給食のお皿には誰も手をつけない、私が触れたボールは誰も触らない。そうやって、クラスのみんなから避けられていた。主人をなくしたボールが地面にバウンドし風に吹かれて運動場の端へと転がっていった光景を、今も私は忘れられない。先生に二人組を作ってください、と言われた時に味わった地獄に突きつけられたかのような絶望は、今もはっきりと胸に刻まれている。当時仲の良かった親友と呼べる子までが私を避け始めた時には、トイレに篭って涙を流した。
そんな私にただ一人、普段通り接してくれる人がいた。聖だ。
朝出会ったらおはようと言ってくれる。持ち物を落としたら拾ってくれる。たまに、雑談をしてくれる。側から見たら普通の事だ。面識のある人になら誰でもする行為だろう。でも、そんな事が、泣く程嬉しかった。まだ頑張れる、と私の心を鼓舞した。それらは救いで、生きる気力になった。誇張表現でもなんでもない。彼は私の、命の恩人だったんだ。
何度もここから飛び降りたら楽なのかな、と思いながら行った学校の屋上。マンションの屋上の淵に、一人で立ったこともあった。もう、何も考えたくない。苦しみから逃れる方法があるのなら、なんだってする。その思いで、足を一歩前へと。地面のない大空へと踏み出そうとした瞬間に頭に浮かぶのは、いつも聖の笑った顔だった。
まだ、ありがとうが言えていない。好きだよが言えていない。彼に、会いたい。
その思いだけで、私は足を踏み出すのを辞めてしまえた。
それ程に、私は彼のことが好きだった。
時計を見ると、まだ4時だった。久くこんな夢は見ていなかったので、まだ太陽が顔を出す前の朝の空気はとても新鮮に思える。聖、今はまだ寝てるのかな。
バルコニーに出て、12階建マンションの10階から街を見下ろす。一体今、クラスメイトの何割が私と同じ景色を見ているのだろう。このまだ青みが深い水色の空や、薄くなったレモン型の月は、毎日何人の人間の視界に入っているのだろう。遠くで鳴くカラスは、一体何を主張しているのだろう。そんな、考えても無駄な事を想像しながら一人で時間を潰す。あまり、学校の事は考えたくないのが本音だった。
最近聖と望月さんの距離が縮んできている気が、どうしてもしてしまう。休み時間に楽しそうに会話する二人や望月さんにペンを返している聖を見ると、言い表せない焦りが全身を駆け巡る。これが俗に言う焦燥感というものなのだと思う。
そして一番の問題点は、これは私の持論ではなくクラスの総意であることだ。この間の体育の前の着替えの際、一部の女子生徒たちが望月さんと話しているのが聞こえてきたのだ。
『紗菜、最近聖くんと超いい感じじゃん』
『ひょっとして、ひょっとしたり…?』
『いやいやーまだ全然だよぉ。まだね、』
『でも、ゆくゆくは?』
『かもねー』
ひょっとしてってなんだよ。そう思いながらこの会話を聞いていた私は、素直に自分の負けを認めるのが悔しかったのだと思う。いい感じなのは望月さんの努力の結果なのだから、私が彼女を羨むのは完全な筋違いなのに。
「さむ。」
一際強い風が吹いた時、もう盛りを終えた桜の花びらが一枚舞ってきた。
薄いピンク色をしたそれはたくさんの人に踏みつけられてきたのか、所々茶色く汚れている。今日はついてない、そう直感的に思う。嫌な夢を見て、更には自分が一番嫌いな物を見るなんて。

当時の事を思い出してしまうから。
私を毛嫌いしていた、中心格の子の名前が、サクラだったから。
春になると、給食の器に桜の花びらがよく入っていたから。
『桜って食べれるらしいよ』『よかったじゃん、彩りも良くなるし』
そう、言われていたから。
上靴に、桜の花びらが敷き詰められていたから。
だから、桜が嫌いだった。そんな桜が嫌でも目に付く、春が嫌いだった。
これで今年も見なくてすむ。そう思っていたのに、今になってまた見てしまうとは。
花びらを手に取り、階下に落とす。ひらひらと、それは舞って行った。

「校外学習、やります。」
担任のその一言で、どっとクラスが湧いた6月の初旬。初夏で暑くなり始めた教室が、熱気に包まれた瞬間だった。斜め前の席に座る陽葵もきらきらと目を輝かせている。みんなはしゃぎ過ぎだと思いながらも、私も踊る心を抑えようと頑張っている所だった。何歳になっても、校外学習だなんて聞いたらはしゃいでしまうのは誰でも一緒だ。
どうやら、今回の校外学習は日帰りで県内の歴史あるお寺や神社が密集する観光地に行くというものらしい。名目は歴史のフィールドワークではあるのであまりはしゃがないように、と釘を刺されたが、周りを見る限りそれを聞いている生徒はいないようだった。

「みっちゃん! これはチャンスだよ!!」
お昼休み。たこさんウィンナーを挟んだお箸を振りながら、はしゃいだ声で陽葵がそう言ってくる。真剣な顔でそれを頬張って飲み込む彼女は小動物みたいで可愛い。
「陽葵、可愛いね。」
「誤魔化しても無駄だよぉ」
陽葵が何の事を話しているかはすぐにわかる。明日の六限目のLHRで、校外学習の班を決める事になったのだ。しかも校外学習後にスライド発表などがある事から、班員は男子と女子それぞれ2人ずつでないといけない。つまり男女どちらかが、どちらかを誘う必要があった。
「そうは言われても…。」
「ほら、明日までに聖くんに連絡取らなくちゃ!」
「無理無理!」
陽葵の言うように、明日までに班員を決めておかなければいけないのは事実だった。班決めが明日だからと言って、それまで何も行動を取っていなければあぶれてしまうのは確かだからだ。大体今日中に誰と組むかを決めてLHRでは集まるだけ、と言うのがみんなにとっての“班決め”なのだ。
「えー、でも…紗菜ちゃんに取られちゃうよー?」
「それは、…わかってる。」
望月さんは聖を誘うんだろうな…。聖もきっとそれを引き受けるだろう。それが目に見えていて、私には入る隙がないんじゃないかと思ってしまう。それに、私は高校に入ってからほとんど彼とは話していない。いきなり誘われても、きっと聖は困惑するだけだ。やっぱり、今回は諦めた方がいいのかな。嫌でも、そう考えてしまう自分がいた。



1日の授業が終わって帰りの挨拶が終了すると、私はすぐに教室を出る。特に教室にいたくない理由はないけどかと言ってずっといる理由もない。陽葵と違って部活に入っていない私は、帰りはいつも一人だ。陽葵の事は大好きだけど、一人の時間も嫌いではない。イヤフォンをして好きな曲を聴き、自分だけの空間に浸るのは案外気楽でよかったりもする。
さて、今日はどんな音楽にしよう…。廊下を歩きながらスマホのプレイリストを見ていた私は、突然誰かに肩を触れられて驚いて立ち止まる。
「ねえ、」
…え?
「追いついてよかった…! 心葵帰るの早過ぎだって。」
どこかの大物若手俳優くらいのイケメンが、話しかけてきた。一瞬、全ての思考が停止する。なんで、聖が私に…?
目の前で笑っているのは、紛れもなく私の好きな人だった。いつぶりだろう、こんなに近くで彼の笑顔を見たのは。私に向けられた、彼の声を聞いたのは。驚き過ぎて声もまともに出ない。
「校外学習の班、一緒に組まない?」
嬉しい、よりもなんで? が先に来ていた。なんで、聖が私なんかを? 私が好きな、でもほとんど喋っていなかった、聖が。
「…いい、の?」
今私、どんな顔してるんだろ。きっと真っ赤になってるんだろうな。
「俺から誘ってきてるんだから、いいも何もないじゃん」
おかしそうに笑ってそう言う聖は、私の小学校時代を切り取ったみたいに何も変わっていなかった。少し眉毛が下がる所も、ニカっと歯が見えるくらいに大きく口を開ける所も。ただあの頃から少し低くなった声と、より男性らしくなった顔付きが時の流れを物語っていた。
「折角俺ら同じ小中で昔は仲良かったのにさ、高校入ってから全然喋らないの悲しいじゃん。仲良くしよ?」
破壊力、えげつないって…。これこそ心臓に悪い。そんな事言われてしまったら、期待しちゃうじゃん。心が歓喜の悲鳴をあげながらも、平常心を保ちながら返事をする。
「…うん、! じゃあ、えっと…誘ってくれてありがとう。陽葵も一緒だから、伝えとくね。」
「了解! 俺、凉名から誘われてるんだけど、心葵は大丈夫?」
あれ、凉名くんと仲良かったんだ。知らない事実が発覚して少し驚いたが、二人が仲良いのは私としても何となく嬉しい。
「勿論!」
そんじゃあまた明日、と言って教室の方に走り出していく聖を見送って、私は再び歩き出す。と言うよりかは、スキップしそうになるくらい浮かれている自信がある。
まさか、こんな事があるなんて。最近の望月さんとの馴れ合いを見ていただけに受けた驚きは大きかったが、同時に喜びも物凄く大きかった。また、昔のように…なれるの、かもしれない。大きくなる期待を胸に、校門をくぐる。ポップな曲調のラブソングを聴きながら歩く私は、じめっとした梅雨特有の蒸し暑さも全く気にならなかった。



「今日は待ちに待ったー?」
「「校外学習!」」
陽葵の掛け声の元で、男子二人が声を揃えてそう言う姿は何だか小学生みたいで微笑ましい。現地集合、現地解散のこの校外学習は歴史の授業の一環である割に自由度が非常に高く、私たちも美味しいカフェで食事するなどという行程を立てている。今は、クラスの集合場所に行くべくして、四人で電車に揺られていた。
「みっちゃんももっとはしゃごーよー!! 何だかお母さんみたいな目してるよ?」
純粋無垢で明るい陽葵が私にそんなお誘いをしてくるが、「いいよいいよ私は」と取り敢えずは言っておく事にした。だが、あまり興味がないように取り繕っている私も、勿論内心とてつもなく楽しみにしてる。校外学習は私服で行う事になっていたので昨日はどんな服を着るべきなのか悩みに悩んだし、楽しみすぎて眠れなかった。お陰で今日は寝不足だ。
「心葵ちゃんも東條さんも私服似合ってるじゃん」
「凉名くん、お世辞はいいんだよー? ほんっと女たらしなんだから困っちゃうねぇ、みっちゃん」
どの返し方が正解か分からずに苦笑いをした私に、すかさず聖がフォローを入れてくれる。
「東條さんも凉名も程々にねー。心葵が困ってるよー」
「はぁい」
つまんねーのー、と不貞腐れた顔で言う陽葵は、私にだけ伝わる程度に一瞬だけにやっと笑みを浮かべた。意訳をすると、『今日、楽しみだね!』と言う所だろう。『うん!!』微かに私も頷いて、満足げになる陽葵。
「ふふ、ありがとう聖。」
移り変わる景色を車窓から眺めながら、緊張半分、期待半分の私は一人で考える。一つ言えることは、とにかく今この状況が、ただただ幸せだと言う事だった。聖と会話ができるこの環境が、四人で楽しく雑談ができているこの環境が、本当に楽しく、一生このままで良いと思える程だ。
それに今日だけではない。今回の活動の目的はあくまで歴史の探究の一環だったので、度々授業で班で集まり調べ学習を行う時間が設けられた。つまり聖と喋る事は必然的に多くなり、たくさん楽しい時間を過ごさせてもらった。距離も明らかに縮んでいるのではないかと思う。修学旅行もある高校2年生の今に校外学習を考えてくれた先生たちには感謝してもしきれない。
「あ、…おはよ! 聖くん!」
四人のものではない声がして驚いて通路を見ると、そこには望月さんとそのグループの子たちがいた。そうだった。集合時間までに現地に着かなければいけないとなると、大体乗る電車の時刻は揃う。同じクラスの彼女がここにいる事は全く不思議なことではなかった。
「あぁおはよう望月。服、似合ってるじゃん。」
ああ、これならどんな男子でも振り向いてしまうだろう。女の私がそう思ってしまう程に可愛く、それでいて彼女に似合った服を身に纏った望月さんは、一人の女性として完璧に見えた。その途端、昨日の私の苦悩が馬鹿らしく思えると同時に、自分がとてつもなく惨めに感じた。そうだよね、どれだけ頑張っても所詮私はこの程度だ。聖はやっぱり…。
「ありがと! じゃあ、ばいばい! 校外学習、楽しもーね!」
可愛らしい動作と共に通路を歩いて行った彼女たちを私はただ呆然と眺めていた。
ただ、この班決めの際に一悶着あったのも事実らしい。どうやら望月さんからのお誘いを『先着がいるから』と聖が断った、だとか。最初は虎の尾を踏んだかもしれないと怖くなっていた私だったが、彼女は意外にも潔かった。そして今でもめげずに積極的に話しかけに行っていて、その点ではすごく尊敬できる。人は見かけにはよらない、とはこのことなのかもしれない。
「まあ、じゃあ今日は一日楽しみましょー!」
陽葵が仕切り直してくれて、班の雰囲気は良いままだった。だがやはりほんの少しのモヤモヤが頭の隅に引っかかって、気分は先程よりは憂鬱になっていた。



「おいしぃ…!」
早々に歴史探究を終えた私たちは、露店で買った苺最中を頬張っていた。苺を最中でサンドしたようなスイーツで、苺大福みたいな味がする。
「この後カフェも行くのに大丈夫…?」
隣で少し心配そうにそういう凉名くんに大丈夫大丈夫ー!と呑気に答える聖。彼も意外にも甘党で、今何も食べていないのは凉名くんだけだった。
丁度近くにあったベンチが空いて、そちらに移動する。ベンチに腰掛けた四人はもう暑さでぐったりしていて、黙々と苺最中を食べていた。
「…夏だねぇ」
沈黙を打開しようと、陽葵が口を開いた。
「ね、暑いの嫌だね。心葵ちゃんは暑いのと寒いのどっちが好き?」
最近何となく感じてはいたが、やはり凉名くんの私の呼び方が変わっている。前までは『花野さん』だったのに、今では『心葵ちゃん』だ。小学校から知っている聖はともかくとして、男子から下の名前で呼ばれる事は殆どなかったからとても新鮮に感じた。やはり、彼は女慣れしているのだろう。
「うーん、どうだろ…。やっぱり暑いのかなぁ」
「え、そうなんだ! なんで?」
なんで、って聞かれても、。
「春が終わった証、だから…?」
「え、心葵ちゃん春嫌いなの? なんで? ほら、桜とか結構綺麗じゃん。」
正直、あまり聞かれても答えるには気が引ける質問だった。あまり思い出したくない事だし、何が起こったのかを知っている聖の前で答えるのは憚られる。凉名くんの質問に答えられずにうーん…、と悩んでいたら横から聖が助け舟を出してくれた。
「ま、俺もなんとなくわかるよ。春って独特の空気感あんじゃん。」
「うんうん! 出会いと別れの季節、みたいなねー」
「へぇ、まあいいや。それよりもほら、次行こ次ー!」
会話に興味をなくしたらしい凉名くんは、ベンチから立って荷物をまとめ始める。
「そーだね! カフェだカフェ。楽しみだなぁ!」
陽葵もそれに続いて席を立ち、二人で先に歩き始めてしまった。最初に出遅れた私と聖は、すぐ後から二人を追う。
「二人とも気が早いな、心葵」
聖から話しかけられて、少し鼓動が早くなる。今日初めて、二人だけで喋った。
「そだね、」
「結構この班楽しいよな。ほんと心葵誘って正解だった。乗ってくれてありがと。」
改まってお礼を言われてしまい、ただでさえ恥ずかしいのにもっと恥ずかしくなってくる。全身の血が顔に昇っているのを感じた。
「いやいや、こっちこそ誘ってくれて本当にありがと…。それに、また聖とたくさん話せて嬉しいな。一生あのままだと思ってたから。」
「俺も。あ、ちょっと止まって心葵」
どうしたの、と聞くよりも先に聖の手がこちらに伸びてきて、自分史上最高に胸が高まる音がした。一瞬だけ私の口元に彼の指先が触れ、そこ一体がとてつもなく熱く感じる。
「取れた。あんこ、ついてたよ」
にこっと笑って手についてあんこをティッシュで拭き取る彼を3秒、放心状態で見つめてしまう。
穴があったら…入りたい。
「…ごめん。ありがと」
今日一番ときめいた事が、一瞬にして今日一番恥ずかしかった事に変わってしまった。だが勿論私の嬉しさはこれまでのものと非にならない程で、望月さんと聖の関係など頭から飛んで行ってしまった。取り敢えずは、…もう一生顔は洗えないな。



楽しかった校外学習も終わり、季節は夏本番へと近づきつつあった。聖とはあれから時々喋るような関係になる事ができ、週に三日程はメールが1、2時間絶え間なく続くようにもなった。毎日が夢みたいに楽しく、いつかツケが回ってくるのではないかと思う程であった。
「あつーーい」
隣でそう言って項垂れる陽葵のような生徒は少なくなく、私もハンディファンから来る生ぬるい風を顔に向けてこの暑さを何とか耐えている所だ。
「この暑さは倒れちゃうよね、ほんと。」
「ねぇ。」
「こんな日には…アイスでも食べて帰りますかっ?」
唐突に陽葵ががばっと顔をあげ、キラキラと目を輝かせながらそう聞いてくる。考えただけで胸が躍る提案だったが、一つだけ懸念点がある。
「陽葵、今日部活じゃなかったけ…大丈夫?」
「熱中症指数超えてて出来そうにないー」
「ああ、なるほど。じゃあ行こっか!」
陽葵が所属するテニス部は厳しく、あまり休む事ができないのでこれは滅多にないチャンスだった。折角空いた彼女の放課後に私との予定を入れてしまって良いのかは少し心配だが、アイスという単語だけで少し涼しくなれたような気がしてこの後の授業にもやる気が出てくる。
「なになに、アイス食べに行くのー?」
「俺らも部活ないし、行こっかなー」
何味のアイスを食べようかと二人で話し合っていた所に、席替えの度に隣になる凉名くんと、彼と最近よく連んでいる聖が話に入ってきた。校外学習の後くらいから、休み時間に聖が凉名くんの席に遊びにくるようになったのだ。私としてはこの上ない幸せで、凉名くんとずっと隣の席である事は大きな利益であった。
「お! お二人も一緒に来る? ね、いいよね心葵!」
「う、うん」
少しだけ強引だったかもしれないけど、すかさず陽葵がそう言ってくれたお陰でなんとなく一緒に行くような雰囲気になった。
「お、まじ? じゃあご一緒させてもらおうかな。」
案の定彼らも頷いてくれ、私たちは学校が終わった後すぐに近くのアイスクリーム屋さんに行くことが決定した。
後でちゃんと感謝してねー?、と言わんばかりの陽葵の悪そうな笑みが見えたところでチャイムが鳴り、担当の教師が教室に入ってくる。
「じゃあ、また後でよろしくな! 楽しみにしてる。」
そう言って席に戻って行った聖をいつまでもぼぉっと見つめていたら、問題を当てられてしまって凉名くんに答えを教えてもらう事になってしまった。



「最近花野さんと陽葵ちゃん、ちょっと調子乗ってるよね。」
「私もそれ思ったー! 聖くんと仲良くしてねぇ…」
休み時間。たまたま一人でトイレに入ってたら、そんな会話が洗い場の方から聞こえてきた。同じクラスの、華やかなグループの女子の声だった。一瞬にして、呼吸が苦しくなるのを感じる。トイレの鍵に触れたまま、手が動かなくなっていた。
どうし、よう。また、あの頃と…同じ事、が。
あの、嫌がらせが続く…日々が。
どう頑張ってもその可能性が頭から離れず、それどころか頭の中をその恐怖だけが膨れ上がり、破裂しそうだった。涙が出そうになるのをぐっと堪えて、どうにか意識を保つ。目を閉じてしまえばあの頃の記憶が蘇ってきそうで、瞬きもせず時が経つのを静かに待っていた。
絶望が、私の頭を支配していた。
「自分の身の程弁えろって話だよね。」
「ほんとそう。紗菜と聖くん、いい感じだったのに。」
「結構邪魔、だよね。ねえ、紗菜もそう思わない?」
だめだ。学年で一番目立っている望月さんがこれを認めてしまえば、始まってしまうだろう。あの頃と同じ事が、繰り返されるだろう。しかも…今度は、陽葵まで。私のせいで、陽葵まで。今更後悔しても謝っても遅いのに、ただただ思い浮かぶのは謝罪の言葉だった。ごめん、陽葵。ほんとに、ごめん。彼女は、何も悪くないのに。なのに、私が…聖が好きだから。
標的は一人に絞るだろうから、恐らくどちらかが嫌がらせを受ける側に、そしてどちらかがそれをする、側に。どちらにせよ最悪であることは間違いないけど、それでもする方が絶対にマシだ。受ける側の受けるダメージは、私が一番よくわかっていた。せめて、陽葵は…。
もう、祈るしかなかった。どうか、陽葵が、標的になりませんように。陽葵が、私と同じ思いをしなくても、すみますように…。

「えー、まあ、仕方ないんじゃないかなぁ? だってほら、心葵ちゃんって私に席変わってくれたじゃん? だから、どっちもどっちだと思うなー」
え…?
もしかして、助かった…? 一瞬何かの聞き間違いかと思ったが、彼女は確かにそう言った。その言葉は、私を擁護してくれているようにしか感じられなかった。
望月さんが、私を助けてくれた? 庇ってくれたの…?
「えーそう? まあ紗菜が言うんなら私はいいけど…。」
「うん、私も別にそんなに思ってなかったし。」
「それよりほら、戻ろー? 授業始まっちゃうよー」
そだね、と言ってそそくさと3人はトイレから出て行き、足音がだんだん遠ざかっていく。緊張が解けて私は、思わず座り込んでしまいそうになった。
「、よかった…。」
一人でそう呟いた途端に、涙が一粒溢れ落ちた。安堵から来るものだろうか。恐怖はまだ完全には抜けていなかったが、それでも先程までと比べると格段に心は楽になっていた。でも、それと同時に今度は自分自身に、私は失望していた。
望月さんを、疑っていた事。決めつけていた事。何より、人を…偏見で、見た目だけで、判断してしまっていた事。私は、訳もなく私に嫌がらせを行っていた生徒達と、…何一つ変わらなかったのだ。結局、被害者づらをしていただけだったんだ。
ごめんなさい、望月さん。本当に、ごめん。

この時、私は確信した。望月さんには、…叶いっこない。負けていたのは容姿でも、言動でも、動作でもなかった。性根の時点で、私は彼女よりも下だった。私は彼女に、全てにおいて負けていた。
そして、こんな私を好きになってくれる人は、誰もいない。聖に相応しいのは、彼女。私では、ない。私は、叶わない恋心を胸に抱いて…生きていくしかない。
これが齢17歳の私が知った、現実だった。
「…聖と望月さんが、付き合ったって。」
話がある。そう凉名くんに言われた時から嫌な予感はしていた。
あまり言わない方がいいのかもしれない。それでも、ちゃんと心葵ちゃんは知るべきだと思ったんだ。そう前置きをされたから、大方何の話かはわかっていた。
わかっては、いた。だけど、やっぱり悲しさはあった。

この恋に勝ち目はないと悟ってから8ヶ月。思ったより、二人の恋の成就までの道のりは長かった。その間にどうやって愛を育んだのかは知らないが、きっと二人は今、とても幸せで満たされているのだろう。でも私はまだ、それを心から祝福できる程成長できていない。
ごめんなさい、聖。
いつか、「おめでとう。」そう心から言える日が来るのだろうか。私は、そこまで“良い人”になれるだろうか。
「ねえ、心葵ちゃん。」
3月の河川敷。桜がまだ開花していないからか、人はあまりいなかった。春の風が、私と凉名くんの間を通り抜ける。
「ん?」
「今くらい泣いても、良いんだよ。」
ぼろぼろと、涙が止めどなく溢れ出て来た。
我慢、してたのに。
ああ、私はまだ。まだ、聖が好きだ。好きで、好きで、堪らないんだ。それを痛感して、余計に涙が出てくる。
「聖、ひじ…り…!」
堪えようとしても、嗚咽が出る。涙も鼻水も、止まってくれない。それらを拭うことすら、できなかった。
人目を憚らずあまりにも堂々と泣く私を、そっと凉名くんがそっと抱き寄せてくれた。小さな子をあやすみたいにゆっくりと頭を撫でてくれる彼は、私とは違う。優しい、人だ。
「なん、で…、なんで…。」
お門違い? その通りだ。とうに戦うことすら放棄した私が、今更彼への愛を語っても、泣いて後悔しても、あまりにも遅すぎた。それでも、この涙の制御は、不可能だった。

枯れる程涙が出るという言葉を聞いた事があった。でも、涙が枯れる事はない。そう、知った。ただただ泣き疲れるまで。自分の体力が許す限り、限界まで私は泣いはただ泣いた。


季節はもう、春だった。

毎日を生きていくだけで辛かった小学5年。君は、私にとってのヒーローだった。
あまり喋らなくなった中学。私は、いつも遠くから君を見ていた。
また仲良くなれた高校2年。距離が縮まったと思っていた。
会わなくなった大学生。未だに、私は君を想っていた。

小さな頃、童話に登場するお姫様に憧れていた。継母から酷い扱いを受けたり、高い塔に閉じ込められたり、妬みから命を狙われたり。そんな厳しい境遇の中で、現れる王子様と恋に落ち、幸せを掴む。そんな逆転劇を痛快だと思っていたし、華やかなドレスを纏った彼女たちは私の目には輝いて見えた。いつか、私にもそんな相手が現れるのかな。そんな風な夢を描いていた。運命の恋という幻想に、浸っていた。

でも、現実は違った。上手くいかない事ばかりだった。嫉妬や恨み。そんなどす黒い人間の汚い感情に塗れたものを、人は恋と呼んだ。幼い頃に見た恋はただのフィクションで、物語の都合の良いように改変されたものだった。

それでも、私はあの頃の恋を信じたい。
どれだけ泥々になっていても、黒く塗りつぶされていてもその内側には私が憧れていた恋があると、信じたい。
それくらい、構わないよね。
叶わない恋だった。
一度は、諦めた恋だった。
でも、それでも諦めきれなかった。願い続けたかった。
そんな恋を、私が憧れていた恋だと言ってもいいよね。

そうでないと私は今度こそ、立ち直ることはできないだろう。

あれから卒業するまで、涼名くんからアプローチを受けた。彼は私がまだ聖を好いていても良い。そう言ってくれた。とても嬉しかった。でも、やはり君以外は、まだ考えられなかった。

性根が腐っていた私に、本物の恋を教えてくれた君へ。
心から、ありがとう。
そして。
ずっと、自信がなかった。でも私ももう二十歳。すっかり大人になりました。少しは、性格も良くなったと思う。
だから今なら、言えそうだよ。

「聖、
貴方が幸せなら、私も幸せです。

どうか、お元気で。」

桜の花びらが1枚、宙を舞う。ずっと嫌いだった。見たくもなかった。春が、大嫌いだった。

でも、今なら少しだけ、美しく思える気がした。




2025.3.31 fin 咲良碧

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