七
     
 一旦部屋に戻った水沼だが、どうも旧友のことが心配だった。それで、念のため再度廊下に出てみたが、案の定、鹿野が外に出て離れに向かっているのが見えた。窓を開けて呼び止めようかとも思ったが、ふと電話をもらったことを思い出し、折り返しで電話を掛けた。
「バカ! 夜這いでも掛ける気か!」そう言うと、彼も自分のやってることに気づいたのか? すぐに引き返してきた。
 そうして、鹿野が自分の部屋に戻るのを見届けると、自分も部屋に戻り、一旦ベッドにもぐりこんだ。
 そのあとのことは特に書くこともないが、ここで、あの「いちりとせ」の歌詞の意味の水沼なりの解釈を書いておく。
 
 あれは、男が女に夜這いを掛ける歌
 若しくは女が男に、夜這いしてね、そう誘う歌
 
 一里離れていても
 やんこやんこしよう
 芯からホケッキョ
 は 夢の国
 
 あくまで言葉から受けるニュアンスに過ぎず、「やんこやんこ」が方言でその意味があるのか? は知らなかったが……
 
 ――良美ちゃんと鹿野信吾は昔、そういう仲だったのだろう……