「篠木先生ー、今日こそ食事行こうよ。俺も随分焦らされてるんだしさあ、ね?」
 職員室で起こる変わらない日常にいい加減うんざりしちゃう。それはきっと周りの人たちも同じで。
「何度も言ってると思うんですがその期待に応えられません」
 にやりとした目が不気味に光を失うと、私に聞こえてくるのは大きな舌打ち。周りの職員たちはそんな木上先生を冷ややかな目で見ているだけ。
「まだ元カレのこと引きずってんのかよ……なあ、お前もわかりきってるだろ?そいつより俺のほうが断然いいってこと」
 今日も彼のことを馬鹿にされ感情を押し殺していたが、ふとあの言葉を思い出して大事な分岐点に立たされた。
 私的にはもうこんなことうんざりで、いい加減終止符を打ちたくて。
 そう思うと、私はやるべき一つの答えにたどり着く。
「じゃあ。あなたは今の私の気持ちを理解できていない、ってことでいいですか?」
 言い返すことを選んでしまった私は、見えないよう膝の上で拳を握りしめて様子をうかがう。
 今日出た言葉はきっとあの夢に出てきた教師のおかげだ。
 もうなるようになっちゃえばいいのよ。
「私が愛する人はあなたみたいにしつこくないし、おまけに人一倍だれかの痛みを理解して寄り添ってくれる。そんな人間なんです」
「じゃあなんだよ、そいつの代わりになればいいのか?!俺を見下して……タダで済むとでも——」
「木上先生、その手は何かな?」