でもそんなわけない。これは夢の中で、本当に彼だとしても容姿も声違うのに。なのに。
 私は覚悟を決めて、口を開く。
「瞬」
 あの心地よさも、なぜか感じる懐かしさも私にくれたあの言葉も。あの時感じた違和感も、もしそうならすべて辻褄が合ってしまう。その瞬間から私が吐き出すことのできなかった思いがだんだんと湧き上がってきて溢れだしてきた。
「陽菜、ほんとにごめん」
 それが何に対してなのか、私には痛いほどわかった。でも今その言葉は絶対に違う。
「私はそんな言葉なんて欲しくない」
「じゃあなんていえば」
「なんでわからないの。私はただ…ただ会いに来たよって、元気にしてた?って。俺以外のやつと浮気してないよなって。そんな今まで通りの会話がしたかったの」
「謝罪なんかほしくなかった。そっちは何にも悪くないのに……ほんとなんでこんなに気が利かないのよ、ばか!」
 言葉にすればするほど、呼吸を忘れてしまうくらいに剝きだしてしまう感情。こんな私の言葉、きっと彼だって欲しくない。
 深呼吸をして跳ねる心臓をなだめた。こんなんじゃだめだ、もう私も切り替えなければいけない。
「瞬、久しぶり!あなたが私のことを見てないうちに私はたくさん成長したの。自慢してやろう、って思ってたけど……あなたも立派に成長してたわね」