「この夢は、三限で終わってしまうんですか?」
 少しの間を保った後彼は優しく微笑んでくれたから、それに私はまた希望を抱いてしまう。
「そうゆう決まりになんです。だからこればっかりは変更できない」
 そうよね、わかってた。
 夢の中の決まり事など、破ってしまえばいい。そう思ったけれどなんだか駄目だと忠告されている気がした。だから私はその言葉を必死に飲み込んで腹の底に沈める。
「それにしても、人生なかなか思うようにいきませんよね……まあだからこそ無理だけはしないでください。自分のことは、自分が一番守れるんだから。しっかり守ってやらなきゃ」
 どこか虚ろなその目。
 少しの唇の隙間から強く歯を食いしばっている様子が見える。
 この人も、やっぱり人の痛みを知っている。そうでなきゃこんな顔、できないもの。
 二限目終了のチャイムが鳴ると、彼は気持ちを切り替えきれていない表情で号令をかける。
「それでは、これで二限目の授業を終了します。次が最後の授業なので、なるべく早めに来てくれると助かります」
「はい、ありがとうございました」
 時計を確認すると、やっぱり一限目より終了が早まっていた。

 ——目を開けてカーテンに手を伸ばす。
 今日はあまり目覚めがいいとは言えない朝を迎える。
「今夜が最後……」
 まだ少しの時間は残っているはずなのに、どこか物寂しさを覚えた。
 あの夢の中で彼ともっと話したい、そんな気持ちが私の心を少しずつ支配して、侵してゆく。
「早く夜にならないかな」
 そんなことを考えながら今日も私は、彼の仏壇の前に今日も正座をする。