「唯、今日カフェ行かない?」



がやがやと騒がしい放課後の教室。

明るくてクラスの仲が良いことで有名な私のクラスでは、常に楽しそうな声と笑顔が飛びかっている。


友達の紗月も、漏れなくそのひとり。

自称地毛の茶髪を綺麗に巻いて、先生にバレないよう、うっすらとメイクをしている。

そんな紗月は、もちろんクラスの中でも上位に位置する明るい人だ。



「ねー唯、聞いてる?」



「あ、うん、聞いてるよ」



「どうかな、唯はぼーっとしてるときあるからねー」



頭の上から聞こえたのは、菜々海の声。

やわらかい笑みを浮かべながらそう言う菜々海に、私も笑顔を向けた。



「えー、そうかな?」



「うーん…唯は結構ぼんやりしてるよ?」



「紗月まで!」



「てか、菜々海もカフェ行こうよ!限定のケーキあるんだって!」



早口で菜々海も誘う紗月。

私はまだ返事してないけれど、少し強引なところのある紗月は、きっともう私も行く前提なんだろう。



「唯も行けるよね?」


「…うん!もちろん!」



特に用事のない私は、すぐに返事をした。