「……ら。星空」




綺麗な音色で名前を呼ばれて、現実世界に意識を戻される。



「まぁた別世界に行ってたけど。どうした？　今日体調悪い？」


「ううん。大丈夫」





教室を見渡すと、部活ぬ向かう生徒や、遊びにいく生徒、お菓子を広げ出す生徒がいたりしていて、

いつのまにかすっかり放課後の空気になっていた。




台本を引き出しから出した時に、いろいろ考えていたらぼーっとしすぎてしまったみたい。


私は昔からそんなことが多くて、今みたいに幼馴染の春木晴（はるき　はる）に呼び戻されることが多い。







「ネガティブなこと考えちゃってた？」



「うーん。脚本のこと考えても考えても不安になること多くて。審査員になんて言われるんだろうって考えちゃう……」






同じ演劇部の晴。




一緒にいる時間が長いからか、こういう悩みは割と話やすい。









「そっか……。星空、大丈夫だよ。俺、星空の脚本好きだし、演じてて一番楽しいから」






そう言って、私のカバンに脚本をしまって、当然のように軽々と自分の肩にかける。







どうしてこういうことが自然にできてしまうのだろう……。