アマテラス神皇国には、アマテラス列島地方を統一に導いたとされる3人の英傑が居た。



 

 その一人は、アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・尾張国・清州市・清州城の守護大名王家であった斯波義統の家老家たる織田家の長女である織田・和紗・信長。





 もう一人は、三河国の戦国大名王である松平忠信の長女である松平・千代・元康。



 後の徳川・千代・家康の事である。



 最後一人は尾張国・中村と言う農村の木下弥右衛門と木下仲と言う農民の長女として生まれた木下・陽菜。



 これは後にキリヤ公国連合国の桐谷勇治公王から領地を分割され、豊臣独立自治大公藩国を建国した大公豊臣・陽菜・秀良と呼ばれる人物と成る。



 3人は数奇な運命に導かれ、10数年後にキリヤ公国連合国の加盟国を建国し、桐谷勇治公王を盟主王として仰ぎ仕え、共に生涯を過ごした相手と成る定めと成って行く。





マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・尾張国・中村にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 アマテラス神皇国3人の内、二番目に年齢が上に在る人物。



 後に豊臣独立自治大公藩国を建国した大公豊臣・陽菜・秀良と呼ばれ、キリヤ公国連邦共和国・盟主王。



 桐谷勇治旗下の盟友大公王と成る未来が待って居る。



 陽菜は、猿の様にキャッキャ、キャッキャ飛び回るが如く騒がしい性格で、背格好が小柄で可愛らしい容姿をして居た。



 そんな彼女は、元々は尾張国州の農村である中村の生まれで、木下・陽菜と言う農民の家の長女であった。



 

 もう貧乏で、貧乏で、貧乏で仕方のない日々を産まれた時から続いて居た農家の家。



 その家では、母と7人くらいの兄妹達が居る家族の多いありふれた貧困層生まれの女の子だった。



 そんな彼女が10歳の時である。



 美濃国との戦に足軽兵として召集され参加して出て行った父である弥右衛門が、敵から受けた手傷が元で、破傷風に掛かって病死。



 一家の大黒柱を失った木下家は、只でさえ貧乏農家であるのに、収入源の稼ぎ柱が亡くなった事で、ド貧乏の底へと転落。



 そんな中で、母親である仲を狙って居た中村の村長の次男坊である竹太と言う男は、戦で留守の木下家へと強引に入る込み、仲と寝屋を強引に強要させて居た。



 弥右衛門が亡くなると、今度は再婚相手だと言って、家に居座る様に成る。



 そんな生活に嫌気がさして居た陽菜だったが、ある時義父である竹太から、デカい娘は小利口過ぎて邪魔だと、近くのブッタ教寺院に小僧として追い出されてしまう。



「くっそー!!もう嫌だっ!こんな村っ!出て行ってやるううっ!!」



 中村寺院で、やりたくも無い坊主への修行の日々に、我慢出来なく成った陽菜は、中村寺院でいじめて居た奴らをボコボコにし、更には義父である竹太をボコボコに殴り捲った。





故郷の中村で、ひと騒動を巻き起こした陽菜は、忽ち有名な少女成る。



 簡単に身支度を整えた陽菜は、出世が出来る様な仕事先を求めて、中村を飛び出した。



 故郷の村で、酷い目に遭って居た彼女は、全ては貧乏が悪いと考え、其処から脱却するには、何某かの仕事に就いて、其処で出世するしか無いと思い至る。





 義父にも寺にも盾突いた彼女は、故郷を捨てて、各地を放浪し始めた。



木下・陽菜が13歳の時であった。





それから数日後・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「えっ!!陽菜ちゃんが家出したのっ!!」



「だから、この前の約束した日に会えなかったんだっ!」



 陽菜の幼馴染みである蜂須賀・頃代と前野・恵那の二人は、中村寺院を止めて、家に戻った際に、陽菜に何なら自分達と一緒に、出稼ぎに行こうと約束をして居た。



 その約束の日、陽菜は待ち合わせ場所に現れなかったらしい。



 蜂須賀・頃代の家は代々船輸送を生業として居る川浪衆。



 前野・恵那の家は代々馬借業・川浪衆を生業として居た。



 二人は昔から陽菜と小遣い稼ぎに出かける仲だったので、寺での坊主修行を止めたと言う陽菜を助けようとして、出稼ぎ労働に誘ったと言う訳である。

 



「ごめんなさいね。あの子が何か約束したみたいだけど、家に帰って来るなり、この人と大げんかして、大怪我させちゃったね。」



「家を飛びした後に、どうも聞いた話だと、村を出て行ったらしいのよ。」と陽菜の母親である仲は、申し訳なさそうに説明をしてくれて居た。



「陽菜ちゃん、何所に行ったんだろう?」と頃代は、心配そうに首を傾げる。



 仕方なく二人は、仲に軽く別れの挨拶を交わし、互いの両親達がして居る家業の手伝いに戻って行く。







 村を飛び出した陽菜は、取り敢えずは東で栄えていると言う駿河国の駿府市へと向かう事にした。



 この時代、東海地方随一弓取り武将とも言われた今川義本は、駿河国・遠江国・三河国を支配する大大名王の一角と見られて居た。



陽菜も、そんな土地ならば働き口に困らないと考え、駿河国へと向かう。



 何で地元の尾張国内の津田港や清州市・那古野市と言った織田家所縁の町へと行かないのかと言うと、何れ今川に滅ぼされると噂されて居るからである。



 その原因は、清州市・清州城の守護大名王家であった斯波義統の家老家たる織田家の長女である織田・和紗・信長が、大虚け姫と世間から言われて居た事が原因であった。





 当時の陽菜も、そんな和紗の悪い噂話を信じていた一人で、和紗の見姿を見るまで、本気で大虚け姫だと思って居た様である。



 東に在る駿河国へと行く道すがら、岡崎市へと立ち寄る。



 陽菜は口入屋を通して、岡崎市を治めていた松平家のとある武家屋敷を訪ねてた。



「すみませーーんっ!」



「何者だ?」



「町の口入屋から紹介を受けた者なんですが・・・・・・」



「うーむ。」と門番が陽菜をジロジロと品定めをして行く。



「済まんが、その話は昨日で締め切ったのだ。悪いが他を当たってくれ。ではなっ!」と言って門を閉じてしまう。



「そんなああぁっ!!」とガックリと肩を落とす陽菜。



 その後も市内で口入屋で公募して居た武家・商家と言った、主だった仕事を斡旋して居た奉公先には、どの仕事先でも相手にされる事が無かった。



 門番をしている者や面接官達が、面接を受ける前に身なりと見てくれが悪い応募所達を弾いて居たのも原因であった。



 そんな弾かれた陽菜も、主に貧乏くさい格好が気に入らないと見られてしまった事が原因だった。



 日々の生活費と旅費は、口入屋の短期雇用仕事で賄って居た。



 マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・遠江国・頭陀寺町にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





陽菜が故郷の中村を飛び出してから半年が経って居た。



 そんな彼女は、とうとう仕事先が中々見つけられないまま、路銀も尽き果てしまい。



 遠江国の東部・中部地域に在る頭陀寺地方・頭陀寺町の東外れの橋で行き倒れと成ってしまって居た。





 そんな街外れの橋を地元を治めて居る国衆姫武将である松下・佳代・之綱。



 当時の年齢は、20歳に成ったばかりの姫武将であった。



 その見姿は、凛々しい感じの真面目な顔立ちをしたロングストレートヘアーのお姉さんタイプの女性で、スラリとした背の高い背丈と女性らしい身体きをして居る人物。

 

 戦場や遠出をする時だけポニーテールで髪を結って居る。







 陽菜と出会った日の松下・佳代は、曳馬地方(現在の浜松)を治めている飯尾連龍のお供で、駿府城へと登城して来た帰りの事であった。



「ややっ!!佳代様っ!!行き倒れの様に御座いますな。」と小姓をしてて居る姫侍は、佳代が騎乗して居た馬の手綱を退いて居たが、道端で行き倒れて居た陽菜に気が付き言う。



「誠に痛ましい事だ。戦国の世と成ったアマテラス神皇国内では、然程珍しくない事では在るが、行き倒れと成って死んでしまう。」



「これ程までに嫌な光景はあるまい。」



「誰かっ!!」



「はっ!」



「近くのブッタ教寺院に埋葬しておやりなさい。」



「ははっ!!」とお供の家来たちは陽菜を抱えて様とした時であった。



 佳代はとても真面目で心優しき性格をしており、稀に見かける死体と成ってしまった者達を埋葬してやる優しさを持ち合わせて居た。



 まさか、そんな当たり前の行いが、後の彼女の進退を助ける事に成ろうとは、この時の彼女には想像すら出来ていなかったのであった。



「ううっ!お腹が減ったああぁぁ~」



「佳代様っ!!この娘、息が在りますぞっ!」



「何んとっ!?運の良い奴だな。」



「如何致しますか?」



「このまま見捨てるのも、目覚めが悪い物ですね。館に連れて帰って、それから如何するのかをこの娘に決めさせましょう。」



「何んとお優しい。流石は佳代様ですっ!」



「そんな事はありませんよ。当然のことなのですから、それよりも、早く館で食事くらいはさせておやりなさい。」



「はっ!畏まりました。」と家来達は陽菜を近くから持って来た戸板に乗せると、頭陀寺町内に在る館城である頭陀寺城へと運んで行く事に成った。



 松下・佳代は、行き倒れていた陽菜を助ける事にしたが、この時は雇い入れる事は考えては居なかったと言う。



 それがまさか、一生の付き合いに成る主君と成る事さえも・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸東側・アマテラス列島地方・アマテラス神皇国・遠江国・松下・佳代・之綱所領地・頭陀寺地方・頭陀寺町にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 遠江国の東部・中部地域に在る頭陀寺地方を治める松下・佳代・之綱に拾われた木下・陽菜は、介抱された後に、ご飯を鱈腹ご馳走に成ると、お礼を言って立ち去ろうとするが、真面目で人の良い性格をして居る松下・佳代が、身の回りの世話係兼雑用使用人として雇い入れてくれる事に成った。



 それから一月が過ぎて行く。



 陽菜は懸命に働き、直ぐに佳代から良く目を掛けられる様な人材へと成長して居た。



「佳代様。こちらが先月分の屋敷に関わる予算の決算です。」と計算も習字も尾張の中村寺院で習った事を活かして、家計簿の手伝いを任せて貰うまで出世を遂げた。



 難しい学問書やその他の数学書を含めた勉学を教わると、難無く習得するだけの才覚を佳代に見せ付ける。



「有り難う。次はお使いをお願いするわね。」と佳代に言われると、陽菜は直ぐに出かけて行く。



 だが、この関係を快く思わない者達居た。



松下に代々使えたり、主に近隣地域から採用された地元出身の使用人達である。





 余所者の陽菜の仕事の出来具合と才覚が気に入らず、何れは一番の出世頭と成るのでは無いのかと警戒して居たからである。







そんな中で、陽菜を介抱して居た事も在る御付きの一人が佳代に具申した。



「佳代様。余り陽菜を構うのは宜しく在りません。」



「・・・・・はぁ~、やっぱり、あの子の事が気に入らいと言う者が多いのね。」と何となく家内の雰囲気から察して居た佳代は見て見ぬふりをし続けて居たが、御月の一人が具申に現れたと言う事は、どうやら家内の雰囲気は、とうとう限界に達して来て居たらしい。





この時点で陽菜が松下家に仕えて半年が過ぎていた。



 ギスギスとして雰囲気は益々高まりを見せて居たが、なまじ陽菜の仕事ぶりが良過ぎた様である。



 それも農家出身者で、勉学は寺で習っただけの小娘が、近習に近い仕事を任せて貰って居るのだ。



これは気に食わないと言われても、仕方が無かったと言えた状況であった。



「妹みたいに可愛く、仕事が良く出来る子だなぁ~と思って、松下家の将来も見据えて、良く目を掛けて居ただけなのに、如何して人と言う者は、足の引っ張り合いをしたがるのかしら?」



「それが人の業と言う物です。」



「ですが、このままでは陽菜の為にも、松下家の為にも成りません。」



「あの陽菜ならば、他所でもやって行けると思われまする。」



「でも・・・・それが主家である今川家に向けられたら、とんでもない事に成るわよ。」



「それは・・・・・・」



「貴女も意見を言うのだから、気付いた居るのでしょう?」



「あの子は間違い無く侍大将に成るだけの才覚が在るわ。それも私以上の領主にね。」



「それだけの才覚を持った人材を追い出すのは本当に勿体ないわっ!」



「ですが、このままでは・・・・・・・・・・」



「折を見て、私が家中の皆を説得します。それまでは、貴方は何とかして家臣達を抑えて置いてっ!」



「はい。承知致しました。」と言って御付きの姫侍は、この場は主君の顔を立てて、引き下がる事にした。





 その近くでは、陽菜が佳代達の話を偶然にも聞いてしまって居た。



 それから暫くして、遠くの美濃国では稲葉山城と揖斐川で、織田家と斎藤家らとで大規模な合戦が行われたとの噂が流れた時期の事である。



 松下家の館では、屋敷の者達が寝静まった頃を見計らって、支度を整えてた陽菜が裏口からコッソリと出て行こうとする姿が在った。



「こんな無宿人の私を可愛がって、1年間も働かせてくれた。拾って貰った御恩は十分に返せたよね。」



「それに・・・・この私が居たら、佳代様のご迷惑に成る。」



「佳代様。有り難う御座いました。私は行きます・・・・・・」と裏戸口に手を掛けた時である。



「お待ちなさい。」と呼び止められた。



「へっ?佳代様?何で、わたしが今夜にも出て行くって、分かったんですか?」



「はぁ~、何時かはこう成るとは思って居たわ。」



「頭の良い貴女の事だもの。我が家から出て行く事くらいは、大方は察して居たのよ。」



「でも惜しむべきは、他者との争いが苦手な事ね。その性格は損するわよ。」



「・・・・・・・・・」



「そんな性格の人間は戦には出られない。」



「だから私の手元に置いて、色々と内政の手伝いをして貰おうとして居たのに、本当に残忍だわ。」



「済みません。わたしは戦も喧嘩も嫌いです。」



「それが貧乏の元だとも考えて居るからです。」



「でも、多少の争いが無いと何も得られないわよ陽菜。」



「はい。分かって居ます。だから何処かで、人らしく生きられる所をもう一度だけ、探したいと思います。」



「そう。だったらこれを持って行きなさい。」と渡したのは、鎧籠と銭が詰まった革袋。



最後に小刀と水筒と御握りのお弁当であった。



「これは・・・・・・・・」



「餞別と退職手当てね。お詫びも兼ねているわ。」



「でも・・・・・・」



「遠慮せず持って行きなさい。そして、この家でのうのうと胡坐を掻いて下働きをして居る連中を嘲笑うくらいに出世をして見なさい。」



「そうすれば、この私もスカッとするわよ。」



「松下・佳代・之綱は、とんでもない逸材を手にしたのに、馬鹿な家臣達のせいで居心地を悪くした大魚が、野に逃げてしまったとね。」



「だから行きなさい木下・陽菜。此処から巣立つて、天下に鳴り響く人と成りなさい。」



「はいっ!!佳代様もどうかお達者で、有り難う御座いましたっ!!」と言って、餞別を貰って松下家から去って行くのであった。



その行き先はと言うと、取り敢えずは故郷である尾張国へと戻る事にして居た。



 其処で幼馴染み達と今後に付いての相談をしようと考えて居たからであった。



 木下・陽菜の立身出世伝の物語の第一歩たる松下家でのエピソードはこれにて終わる・・・・・・・・・・・・・・・・・