マギアンティア世界統一暦・1555年・10月6日・午前13時30分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸南部・キリヤ公国連合国・フェリス侯爵独立自治領国・北西地方に在るバンドー地方の北部内大陸地方のゲルニアン帝国との国境付近にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



バンドー山脈盆地の広さは南北6キロ東西11キロの高原盆地である。



其処に北と東から街道が伸びて居り、更に南下した付近で、一つの街道と成って合流し、キリヤ公国本国へと至るユーラシアン大陸中南部の主要な街道の一つである。



 グデーリアンが率いるゲルニアン帝国軍は、全軍で8万人前後。



 それに対するは、独眼竜の異名を持って居る伊達・藤枝・政実が率いるキリヤ公国連合軍の軍勢は、4万5500人とゲルニアン帝国軍の半分程度に過ぎない。





 それらと政実がどう戦うのか?



 それは総大将である政実の双肩に掛かって居る。



「敵の総指揮官はハイレンツ・グデーリアンか・・・・・・・・」



「はい。彼は元々南部方面軍の将軍でしたので、ゲルニアン帝国の南方地域戦線が著しく後退をしたとは言え、今回の紛争を起こす形での戦には、妥当な人選かと思われまする。」



「それに先の公帝戦争での敗退は、ヒットラン皇帝とゲルニアン帝国帝国政府自身が、我がキリヤ公国連合全体を舐めて掛かった故の敗戦です。」



「軍の人事としての処分は出来なかったと思われます。」



 伊達家の片目の喜多と呼ばれている片倉・喜多・影綱大佐は、先の公帝戦争以来のゲルニアン帝国内で、起きて居た政治的な動きの説明をしつつ、対峙して居る相手が、この戦の指揮を執る事情を推論から言い当てて居た。



「将軍としては可哀そうな奴だな。詰め腹を切らされるが如く不憫な。」



「はい。この度の戦いでも、又もや彼は貧乏くじを引かされるのですから・・・・・」と喜多は、グデーリアンと言う将軍の事を貧乏くじを引かされる実に勿体無い人物と評して居た。



「では中軍の方は、片倉隊を率いる喜多に任せる。」



「ナデシコ自治統合陸軍の歩兵隊を3500を指揮下に付けるから活用してくれ。」



「承知しました。」



「左翼は毛利陸軍の吉川・春美殿、右翼は伊達・成美に任せる。」



「了解じゃけんっ!」



「りょうかーいーっ!」



「ライチェル殿が率いられて居るフェリス侯爵独立自治領国軍の1万5千人は、我が軍の本隊ですので、伊達軍の後ろにて待機。」



「戦況の状況によって逐次命令を出します故、この私に采配をお任せください。」



「本当ならこの戦は、フェリス侯爵独立自治領国の問題と言いたいけれど、政実殿は、我が軍の損害を気にして居られるのよね。」



「その通りです。この戦でフェリス軍が損害を受けてしまったら意味が無い。」



「この戦いでの一番の目標達成と言うのは、我が方が一方的に勝ち、尚且つフェリス軍の被害が軽微である事。」



「その損害がゼロならば、勿怪の幸いと言う物です。」



「政実殿の目論みと戦の駆け引きをする上で、それらが妥当な作戦と言うならば、私の方は是非も無いわ。」



「我が軍の活躍は、完全勝利が確定して居る総攻撃の時にでも取って置きましょう。」



「噂の独眼竜のお手見を篤と見せて貰おうじゃないっ!」



 フェリス家の三姉妹の三女で、フェリス侯爵独立自治領国軍の統括を担って居るライチェル・フェリス大将は、政実の采配の意図を良く読み取り、自国の軍の損害を最小限に留めようとして居る事に気が付く。





 彼女は本当なら自国の防衛は、自分達の手でと言いたい所だが、フェリス侯爵独立自治領国は、キリヤ公国連合国の北の防壁である事を十分に自覚して居る。



 それに先の公帝戦争での戦後処理に措いて、勇治からの恩義も在る事から、大人しく従う姿勢を見せていた。



(レイチェル姉様とロイチェル姉様達は、何れはユウジに側室として嫁いで貰わければ成らないの。)



(そうすれば我が家の立場は、このキリヤ公国連合内でも有数の諸侯として中央政府にも居場所を作り、繁栄して行く事が出来るわ。)



(その為には我が家を陥れた憎きヒットランとゲルニアン帝国は消えて貰わないと。)



(それに・・・・・・・・)





 ライチェルは、御家がフェリス侯爵独立自治領国として再出発する時に、父親から言われて居る事を思い出して居た。



 それは誰でも良いから勇治と間に、フェリス家との血の繋がりを持った子を身籠れと言われたのである。



 ゲルニアン帝国に見捨てられたフェリス家が、キリヤ公国連合国内で生きて行くのには、王族である勇治との血筋の繋がりが、必要だと言うこの世界では、当たり前の政略結婚を狙って居た。





 ライチェルは年上の姉達と違って、夜の営み的な寝屋事には、初心で反発的な性格をして居た。



 況してや、寝屋を供にしろと言われて居る相手の勇治は、彼女よりも年下である。



 彼女が勇治の気心を知るには、今しばらく掛かりそうで、兎に角キリヤ公国連合国に取って、有益な手柄や意に従う事で、政略結婚のリストから自身が外れる様に務めたいとも思惑があり、勇治の目には止まり難い様にしようと心掛けて居た。



「第十武士団の真田幸恵殿と第二武士団の津軽乃為殿のお二人は、遊撃部隊として中軍の左右に配置します。」



「分かりました。」



「了解した。」



「それから伝江殿は、お好きにどうぞ。」



「なんじゃ、伊達の小娘よ。このわしだけ何も無しか?」



「はい。連絡だけしっかりとして貰えれば、後はご髄に・・・・・・・・」





「そうじゃのう。では好きにさせて貰う事にするかのう・・・・・・」



 そう言われた近衛護衛官長である塚原・伝江・朴伝が率いて居る2500近衛近習衆軍は、完全に動きが不明のジョーカー的な伏兵として独自の行動を開始した。





「機甲車両部隊の車両500両は、後方にて援護射撃と総攻撃時の追撃を命じて置く。」



「それでは各自配置に就いてくれ。解散っ!!」





 こうしてキリヤ公国連合国軍側の作戦会議が終わり、諸将は持ち場へと向かった。



 後にバンドー山脈盆地の戦いと名付けられたこの戦いは、ゲルニアン帝国の更なる弱体化を招いた失策の一つとして歴史書に小さく載る事に成るのだった。







奥州独立自治王であり、独眼竜と謡われる伊達・藤枝・政実が率いるキリヤ公国連合国軍の北方防衛軍とハイレンツ・グデーリアン少将が率いるゲルニアン帝国軍の両軍が、対峙してから一日が過ぎていた。





 両軍は前の日までに戦支度を終えており、何時でも動ける状態を整えて居た。





「敵は魚鱗の陣か?」



「はっ!!敵総大将はキリヤ公国連合国加盟傘下国の一つである奥州独立自治王であり、独眼竜の異名を以てして知られて居る伊達・政実です。」



「そうか、伊達軍の本隊らしき軍勢が現れた時点で、もしやと思ったが、総指揮を執って居るのは伊達家当主の小娘か。」



「グデーリアン将軍。相手は若輩とは言え、侮れない相手です。」



「彼の小娘は短期間でアマテラス神皇国の東北全域を支配下に置き、アマテラス神皇国内では、独眼竜とも謳われる奇才。」



「何をして来るのかすら、分からない手強い相手かと・・・・・・・・・・・・」



「それにナデシコ自治領の軍勢も加わって居ります故、この戦、想定して居たよりも厄介ですな。」



「確かにな。これはマトモに力攻めをしては、以前と似たような手痛い目に遭うか・・・・・・・・・・・・」



 グデーリアンは、この前の公帝戦争に措いて戦ったハコダテ国境要塞戦線での手痛い敗北を忘れて居なかった。



「しかしですぞ、モタモタして居ると南方の戦いを済ませたキリヤ公国連合国軍の本隊が北へと帰還して戻って来るのも不味いですかと・・・・・・・・・・・・・・・」





「それは分かって居る。だが、一戦もせずに撤退は有り得ん。」



「この戦は紛争程度に済ませる名目では有っても、我が帝国に取っては先の戦いで受けた雪辱を晴らす雪辱戦なのだ。」



「それに皇帝陛下からの直々のご命令でもあるのだ。そう簡単には、撤退は有り得ん。」



「其処でどうでしょうか?前線軍から中軍と後衛軍の前衛軍に掛けてをこの場に残して、余って居る予備の後続軍の部隊を夜の内に、伏兵として敵地へと中入り攻めをしては?」



「ほう、それは中々に面白い作戦だな。」



「敵は4万5千程度、対する我らは8万人です。」



「数万程度の軍勢を左右方向からから攻めさせて右往左往して居る隙を突いて一気に・・・・・・・・・・」



「よし、やって見ろっ!どの道、このまま何もしないでは、不味いからな。」



「我が方が先手を打てば、手勢の少ないキリヤ公国連合国軍は混乱するやも知れん。」



「その隙を突いて勝利すらもな・・・・・・・・・・」







 こうしてグデーリアン少将は、大胆にも余って居る予備兵力を使った、中入り奇襲攻撃作戦を仕掛けるべく、動き出して居た。







マギアンティア世界統一暦・1555年・10月6日・午前17時10分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸南部・キリヤ公国連合国・フェリス侯爵独立自治領国・北西地方に在るバンドー地方の北部内大陸地方のゲルニアン帝国との国境付近にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





一方その頃・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「ふむ。今夜動くか・・・・・・」



「はっ!政実様。敵は夜の闇紛れて予備兵力を使った大胆な中入り奇襲攻撃を仕掛けるらしく、敵陣の中から左右に別れて攻め入ってくる様子。」



「ご苦労様だったな霧奈。引き続き監視や攪乱を頼む。」



「承知っ!!」







 政実に敵情を報せて来たのは、甲賀霧隠衆の頭領である霧隠霧奈であった。



 彼女はキリヤ公国のキリヤ公国秘密工作情報部局に席を置きつつ、甲賀霧隠衆の一族を一部隊として纏めながらキリヤ公国に仕えていた。



 先の公帝戦争でも諜報活動で活躍して居り、今はフェリス侯爵独立自治領国のチバヤン州・主都キラサラズ市の沿岸部上陸作戦では攪乱や民間人の避難誘導をして居た。

  

 この度の戦いに措いてもキリヤ公国に仕えて居る忍び達は、勇治の居ない留守をしっかりと守ってくれて居た。



「では此方も歓迎の準備をしないとな。」







 政実は敵の奇襲攻撃に合わせた迎撃作戦の準備を開始した。





マギアンティア世界統一暦・1555年・10月5日・午前14時23分頃・マギアンティア世界・中央世界第一文明圏・ユーラシアン大陸・ユーラシアン大陸 ゲルニアン帝国・帝都ベルリナ・ベルリナ帝城宮殿にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



ビクトリナ南洋大戦が間も無く終結しようして居る頃、ゲルニアン帝国によるビクトリナ南洋大戦の終盤戦として後世に知られる。



 バンドー山脈盆地の戦いと呼ばれる戦いすらも、失敗に終わる少し前の事である。





 ゲルニアン帝国・帝都ベルリナ・ベルリナ帝城宮殿にて、北海島国州・海南地方・八雲集落周辺の鉄道建設作業現場で、アイヌル民族独立解放急進派たるアイヌル民族解放血盟団による大反乱一報が入って居た。



「ふっ、ロンデルよ。良うやった。」



「ははっ!!お褒めの言葉を頂き、有り難き幸せっ!」



「だかロンデルよ、この程度で、終わらせるなよっ!」



「はい。大量の武器、防具に物資をアイヌル民族独立解放急進派たるアイヌル民族解放血盟団に格安にて売り付けて、更なる内紛の火の粉を業火の炎の海として、皇帝陛下にご覧に入れましょう。」



「グハハハハハっ!!キリヤの小僧と独眼竜の小娘め等の困る姿が、目に浮かぶわっ!!」



「ガハハハハハハハハハハハっ!!」



 久しぶりに勝ち誇るヒットラン皇帝。



 その笑いはベルリナ帝城宮殿中に響き渡って居た。



 ヒットラン皇帝とゲルニアン帝国とが後ろ盾となって暗躍するアイヌル民族独立解放急進派たるアイヌル民族解放血盟団による民族独立戦争は、更に過激に広がって行くとに成る。