アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月19日・午前8時30分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖・アルガス公国・レジェンダリア州・レジェンダリア諸島・レジェンダリア諸島西部・セイジョン・ローグリア島・セイジョン・ローグリア城周辺にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





 先の戦いで日シベ合同作戦軍に、凡そ6万人の損害を被ったグリクス地方軍団・レジェンダリア諸島遠征軍は、ダニーガン中佐の提案するセイジョン・ローグリア城北門からの総攻撃作戦の決行の時を迎えようとして居た。



 ダニーガン中佐とグリクス地方軍団は、準備に時間を掛けること2日。



 作戦決行日、その日は、前日の夜から朝にかけての霧が、幸運にもグリクス地方軍団に味方をし、軍勢の密かな移動を可能として居た。



 だが、グリクス地方軍団の動きは、日シベ合同作戦軍には筒抜けであった。



 魔法で動く魔導鳥人形と科学の技術力が生んだドローンでの偵察活動が、それを可能として居たのである。





時はアースティア暦1000年 及び西暦2030年6月19日の午前8時30分丁度に、セイジョン・ローグリア城北門攻略軍は、約20万人の大軍勢で攻め掛かる。



 同時に日シベ合同作戦軍の各方面からの援軍を防ぐ為に、グリクス地方軍団は、同時に各戦線に陽動攻撃を開始した。





「各部隊へっ!前進せよっ!」



「但しっ!城内の中には攻め入るなっ!」



「矢を射掛け、魔導大砲や通常大砲、魔法攻撃を撃ち込みつつ、攻めるフリだけに徹せよ。」



「歩兵も盾を掲げながら進んでは下がり、進んでは下がり、進んでは下がりを繰り返し、敵を我らに注意を引き付けて、釘付けにするのだ。」



 キゼン少佐は、前回の失敗を教訓にして、作戦会議で打ち立てられた作戦と戦術を駆使して、セイジョン・ローグリア城攻略に闘志を燃やしていた。





「重機動師団と歩兵各大隊の各隊へ、我らも攻めるフリを繰り返すのだ。」



「迂闊に敵の有効打撃の間合いに入るのだけは気を付けつつ、前進と後退を繰り返せっ!」



 オバム大佐も、自分が得意とする戦法を活かした大立ち回りで、日シベ合同作戦軍に陽動攻撃を仕掛ける。



 対する日シベ合同作戦軍側の迎え撃つ体勢は、陸自隊員が東門と南門に1千人づづ配置されて居た。



 それに加え、それぞれ部隊展開して居る方面には、120ミリ迫撃砲と81ミリ迫撃に加え、戦車等からの支援砲撃が予定されて居る。



 一方の北門では、4万人のアルガス公国騎士団と2千人のアセリナ聖天使隊と陸自隊員2千人が集結して居た。



 この2千人とは、ダバ派遣隊の追加補充部隊である。



 もしも一度に、中規模から大規模な戦闘と成れば、人手が足りなくなる場合を見越しての派遣で、日本政府と防衛省のパイプ・ライン大河周辺の情勢分析を鑑みての判断して追加部隊と成って居るのだった。



 その判断と読みは的中してしまい。



 ダバード・ロード王国への到着が、かなり遅れる見込みの予定と成ってしまって居た。





「陸自普通科各部隊へ・・・・・・・構えっ!」



 普通科隊員の手に有る小銃や迫撃砲の他、火器類が晴れて来た霧の中から現れたグリクス地方軍団へと向けられる。





 隊員らは、土壁や塹壕等に身を隠しつつ、攻撃命令を静に待って居た。



「こちら井上だ。」



「北門以外の普通科各隊へ、東門と南門は陽動だ。」



「決して、本気で相手に成るなよ。」



「本気で向っ来るのが見えたら撃ち込めば良い。」



「それ以外は、スピーカーの銃声音と砲撃音で、やり過ごせっ!」



 無線通信を通じて、事細かな指示を言う井上一佐。



 此処まで至る中で、実戦経験を積んだ彼も、本格的な攻城戦は初体験である。





 緊張して居ながらも、しっかりとした口調で話して居た。



 敵側の事前情報を知って居た日シベ合同作戦軍は、無駄な攻撃を避ける為に、自衛隊派遣隊は、銃声音と砲撃音を収録した音を大音量スピーカーで流すと言う手立てを講じて対抗する。





 それも最大音量で敵に向けて流すので、戦場内では、遠くでもとても良く聞えて居る筈である。



 それでも地球では有り得ない敵軍の陣容に緊張が高まる隊員達。





 今彼らは、元の世界に居たら体験する筈も無い未知の異世界大戦の真っ只中に居るのだ。



 それも国外の紛争地域地帯を通り、魔導機兵を受け取る輸送任務の序でに、西側諸国の国家元首と使節団と言う秘密の荷物をも運び出す、特命護衛任務なるオマケを付けられて居る。





 まだ彼らは、こんな辺鄙な戦地を通る面倒な派遣任務に、派遣されて居る理由を詳しくは知らない・・・・・・・・・・



だが、今は帰り道と特命護衛任務通行の妨げと成る。



グリクス地方軍団・レジェンダリア諸島遠征軍を討ち破らねば成らない。



 この戦いが終われば、地球で米国が中心と成って有志連合が行って居た、アデン湾とホルムズ海峡の護衛通行任務なんて物は、今の状況からすれば、何て生易しい物だったと鼻で笑う事だろう。



 敵の残りは、24万人とそれらが扱う兵器類が数千。



 対する味方は、たったの5万1500人で、兵数だけ見るならば無謀な戦いだ。



 こんな戦力差で戦えと言う話は、軍の関係者であっても素人であっも常識的な見解をするのならば、必ず誰しもが一言で無謀だと言うだろう。



 だが、其処は知恵と勇気と互いの信頼でカバーすると言う気休め程度の簡単な言葉でしか、この戦地に立ち向かう自衛官らには、それしか言えないのであった。







「先陣部隊5万に告ぐっ!!これより敵城塞へと行軍開始するっ!!!」



「総員っ!!北城門へと前進せよっ!!!」



「総員っ!!武器を構えええええぇぇぇぇぇーーーーーーーっ!!!」





 ダニーガン中佐の命令に主力軍に参加して居る将兵等は、鎧をカチャカチャと音を立て、手にして居た武器を構え、何れかの騎乗して乗って居る兵器や家畜兵器の手綱に力を込めていた。



 ダニーガン中佐は、歩兵大隊と重機動師団を合わせた、先陣部隊5万人を揃えていた。





 その大部隊で北門に攻め入ろうと言うのだ。



 その中には、魔導機兵隊のイースト・エンペラル隊が300機。



 フレイムランドドラゴンが300騎。



 トリプトドンが500騎と補充や入れ替えで運ばれて来た物を取り揃えて万全の体制で、彼はこの戦いに挑む。



「こちら北門です。」



「井上一佐、敵は凡そ20万っ!!!敵は20万人ですっ!!!」





「20万だと?!」



「はい・・・・」





 想像予想してい数を裏切る程に、想定を上回る軍勢を北門に差し向けて来たグリクス地方軍団の数を聞いて、流石の井上一佐も緊張と焦りを感じていた。



(むう・・・・・・・これが実戦か・・・・・・・)





(パソコンでのコンピューター・シュミレーションや実技へ兵棋演習を繰り返しても、生の人の動き分からないものだな。)



(この軍勢を差し向けて来た敵司令官は、思い切った事を思い付く。)



「事前予想では16万人までは、予想して居たが、それを大幅に上回るとは・・・・」



「ええ、軍勢の数だけは、間諜活動行為をして居る者に聞かれるのを警戒して居るのか、聞き取る事すら出来ませんでしたからね。」



 敵の動きを直に偵察していたアルガス魔導師団のニュール・レイダー第四騎士団長は、割り込み通信で会話に入ると、ある意味、敵司令官に裏を掛かれたと言う。





「グリクス地方軍団総司令官、ガミトフ・バイマン中将。油断の成らない相手と言う事か・・・・・・」 



 井上一佐は、ガミトフの巧みさと狡猾さに舌を巻く。



 そんな事を考えて居ると、敵に動きが見られた。



「敵に動き有り、南側の各門を攻め始めました。)



(向かって来た軍勢は、凡そ二万程度です。」



「これは予想通り、陽動だと思われます。」







 各地の通信指揮所を受け持って居る陸自隊員から、敵の動きに付いての情報が寄せられる。





「井上一佐からダンブルド・アーシダ第三騎士団長へ、北門は任せます。」





「了解した総副司令官殿。」





「ビダインっ!!レイダーっ!!やるぞっ!!」



「自衛隊の奴らばかりに頼っては、ユーラシナ大陸にその名を轟かせたアルガス騎士団の名折れだ。」



「ガミトフの首を討ち取る気で行くぜっ!!!」



「それはまた・・・・・」



「随分と剛毅なこと・・・・・・・・・・・」



 二人は呆れて居たが、その顔付きは、不敵な笑みを浮かべつつも、何故か自信に満ち溢れて居たのである。





 さぁ、間も無く、第二次セイジョン・ローグリア城攻城戦が始まる。





「陽動各軍、攻撃開始っ!」



「南側各門のシベリナ連合軍を釘付けにするのだっ!」



「決して、北門に援軍を差し向けさせるなっ!」



 

 ガミトフは攻撃命令を下す。





 彼は命令を迅速にする為に、実際の命令よりも早く伝え、己が命令を言い出すタイミングと同時に攻撃出きる様に仕向ける。



 それを分かって居る南方陽動軍の各軍は、城門から離れた所で、歩兵大隊を中心にして、亀甲隊形を取りつつ迫る。





 それに続く重機動師団も、歩兵大隊に歩調を合わせた軽微な攻撃に留まる。



「撃ち方よーい。構えええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!!」



 南方各城門の各陸自中隊等が敵を照準機に捕らえ、銃や火砲の射撃体勢を取って部隊長の指示を待つ。



「掛かれええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーっ!!!」



「「「「「うおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!!」」」」」





 威勢の良い声を上げて、各部隊は城門や城壁へと迫る。



「撃てえええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!!!」





ズダダダダダタダダダッ!!!ズダダダダダタダダダッ!!!



ズダダダダダタダダダッ!!!ズダダダダダタダダダッ!!!



ズダダダダダタダダダッ!!!ズダダダダダタダダダッ!!!



ズダダダダダタダダダッ!!!ズダダダダダタダダダッ!!!



ズダダダダダタダダダッ!!!ズダダダダダタダダダッ!!!





 89式小銃と5.56ミリ機関銃MINIMIの銃撃音が、迷路各地から同時多発的に鳴り響く。





 だが、倒れ者は少数で、討ち取るまでには至らない兵士が多く見られた。





 自衛官の腕の差でも、撃ち損じたた訳でもない。



 敵は前進と後退をしつつ、敵が確実に自分達を討ち取れる間合いを直感で避ける様に努めて居たからである。



 その甲斐もあって、兵力の被害を抑えられて居た。



「半装填良しっ!」



「撃ち方はじめっ!」



「てえええええぇぇぇぇぇーーーーーっ!!!」



 普通科隊員らの手によって、120ミリ迫撃砲と81ミリ迫撃から砲弾が撃ち放たれた。



 ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!



 ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!



 ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!



 ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!



 ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!



  砲弾が空へと舞う数分間、僅かに不気味な静けさが訪れる。





「弾着10秒前、9、8、7、6、5、4、3、2、1、弾着っ!今っ!」





 東門と南門方面に展開して居る120ミリと81ミリの迫撃砲は、オバム大佐とキゼン少佐の軍団へと降り注いで行く。





「砲撃が来るぞっ!」



「物陰に隠れろっ!」



 

 ズバババアアアァァーン!!ズバババアアアァァーン!!



 ズバババアアアァァーン!!ズバババアアアァァーン!!



 ズバババアアアァァーン!!ズバババアアアァァーン!!



 ズバババアアアァァーン!!ズバババアアアァァーン!!



 ズバババアアアァァーン!!ズバババアアアァァーン!!



 迫撃砲の弾は東門と南門の先鋒隊の頭上で破裂し、破片の雨を降り注がせた。



 多数の死傷者が、グリクス地方軍団側には出てしまう。





 今のグリクス地方軍団者達は、例えるのなら奉天会戦でのロシア軍を相手にして居る日本軍の様な状況だった。



 余り良くない旧装備や数少ない新装備に加えて、備蓄量と生産力が十分ではない銃弾と砲弾しか無い状態で、総力戦と言う決戦に挑む愚作。



 だが、彼らは国是と軍団の意地の為に前進を続けるしかない。



 そう、自分達が勝利を手にするまで・・・・・・・・・・



「第一波砲撃命中、砲撃先の位置修正の必要を認めらず。」



「了解。第二波装填。」



「発射体勢を維持したまま待機。以後の命令を待てっ!」



「了解っ!!」



 グリクス地方軍団の陽動部隊は、一度目の砲撃で受けた被害を立て直し、再び体勢を整えて前進と後退を繰り返す。





 陸自派遣隊は、相手との距離を見て実弾を撃つのか、砲音を撃つのかを判断しながら、陽動部隊への牽制を続けて行くのである。



「敵の砲撃です。」



「凄まじい威力と的確な命中率で多数の死傷が出て居ますっ!」



「うぬぬぬっ!!此方も撃ち返せっ!」



「各方面軍にも同様にだっ!」



「ははっ!」



 オバム大佐も額に血管を浮かび上がらせ、怒りを露にする。



 味方の被害が増える一方で、自軍と敵の兵器の性能との差が余りにも大きく有り過ぎる事に苛立って居るのだった。



 ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!



 ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!



 ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!



 ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!ズドドンッ!!





 オバム大佐が各方面軍の火砲大隊とグリクス地方艦隊に対して支援砲撃を命じた。



 ヒュウウウウゥゥゥゥゥゥゥッ・・・・・・・・・・・



「むっ!敵砲撃っ!来るぞおおぉぉっ!」



「塹壕に退避ぃぃっっ!」



「伏せろっ!」



「シールドっ!」



ズバババアアアァァーン!!ズバババアアアァァーン!!



ズバババアアアァァーン!!ズバババアアアァァーン!!



ズバババアアアァァーン!!ズバババアアアァァーン!!



ズバババアアアァァーン!!ズバババアアアァァーン!!



ズバババアアアァァーン!!ズバババアアアァァーン!!



 グリクス地方軍団の砲撃は、僅か数分の時間だったが、防御陣地の最前線に降った砲弾の雨は凄まじく、近くの塹壕で待機して居たアルガス魔導師団の魔導師団員らの手による防御魔法で辛うじて防がれて居た。