アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月6日・午前2時00分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸中央地域・シベリナ中央地方・パイプ・ライン大河中央流域地方・ブラキュリオス湖畔南部地域・グリクス地方・ローラーナ帝国・ローラーナ帝国領・グリクス地方州・グリクス地方軍団・グリクス地方西方戦線区・グリクス市・グリクス要塞から西へ凡そ、60キロ付近・グリクス第7要塞近隣から13キロ地点・日シベ合同作戦軍第二部隊にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







日シベ合同作戦軍第二部隊の機甲部隊を指揮して居る冬眞一射は、何の対策もせずに、エレクドラリュウム・ゴーレムと戦えば、下手をすれば、戦線の崩壊を意味して居た。



「冬眞一射、此処は仕方がありません。」



「此処は海自に支援要請をして、対艦ミサイルでっ!!」



「冬眞、聞えるかっ!?」



「井上一佐?」



「そっちに1人、ゴーレム退治に詳しい人物を向かわせた。」



「後は彼女の指示に従え。」



「それって?」



「よっと。冬眞さん聞える?」



「リナさん?」



「今丁度、貴女が乗って居る戦車の真上に居る。」



 井上一佐は、苦戦して居る10式戦車隊に対して、リナを寄越してくれたのだった。



「あっちゃーっ!!居る居るわっ!帝国軍の連中も必死だねこりゃ!!」



「エレクドラリュウム・ゴーレムが3体に、フレイムランドドラゴンやトリプトドンもか・・・こりゃ纏めて吹き飛ばさないとダメだな。」





「うん、これは戦車だけじゃ、不利ね。」



 戦車と言う兵器の使い勝手の良さを理解して居るリナだが、数を揃えて居ないと不利な兵器でも有ると言う事も理解して居た。



 こうなると、リナの様な広範囲型の攻撃魔法の使い手が、有利と言える。



「まぁ、ハンナが居れば、更に楽だったと言えるけど、あの子の力は、使い辛いから要塞制圧に向いてないのよね。」



 そう、ハンナは要塞の制圧より、単純な撲滅破壊戦の方のが向いて居ると言えた。



「冬眞さん、部隊単位で、一斉射する形で撃ったら、各部隊に後退してって、指示を出して貰える?」



「あたしも、一緒に牽制するから」



「りょ、了解っ!!」



 冬眞一射は、リナの提案に同意して射撃を指示を出した。



「各隊っ!!撃てっ!!」



「ライトニング・グランド・クラッシヤーーーーーーっ!!!」



 87式自走機関砲2両と10式戦車3両は、車載されている武装を用いて、一斉射する。



 リナも冬眞達の動きに合わせて、雷撃の閃光を地面から走らせる魔法を撃ち放った。



 ライトニング・グランド・クラッシヤーは、地面に雷撃と爆撃を合わせた攻撃魔法の一種で、術者が狙い定めた目標へと地面を破砕させながら敵の足場を爆砕させる物である。



 これを受けた敵は、地面から複数の岩石の破片が突き刺さったり、挟まれたりして身動きが取れなく成ったり、場合によっては即死する事も有るのだ。



 用途によっては、足止めにも使われる強力な魔法である。



「今だっ!!!みんなは急いで後退を!!!」



「サンダーボールっ!!!」



 陸自部隊に合図を出したリナは、サンダーボールを連続で撃ちつつ、10戦車に乗ったまま後退する。



 その横で冬眞一射は、重機関銃を撃って敵部隊の進軍を出きる限り遅らせようと奮戦する。



「了解っ!!」



「前線指揮車より各車各部隊へっ!!要塞から5キロ後方へ後退せよっ!!繰り返すっ!!総員っ!要塞から速やかに後退せよっ!」





「広範囲撲滅高位魔法が放たれるぞっ!!!急げえええええぇぇぇぇぇーーーーーーっ!!」



「各隊っ!!後退っ!!後退ーっ!!」



「ヘリ各機も、5キロ以上後方へと撤退し、エンジンを停止っ!」



「他の者は、2キロ後退して身を縮めろっ!」



「雷帝の強烈な一撃が来るぞっ!!」



「各隊は身を守る事だけを考えろっ!!」



 各戦闘車両隊は、交互に後退を始めた。



 リナの一撃必殺のアレを撃つ為にである。



「むう、どうやら物資は、手に要られらんらしいな。」



「雷帝のリナ。彼の魔導師の一撃に巻き込まれば、我らもタダでは済みません。」



「だな。我が隊も後退するぞっ!」



「はっ!」



 アルガス公国軍のゼータ・ビダイン軍団長も、通信の内容から状況を察して、噂に聞くアレが撃ち放たれると考え、前線からの後退を素早く判断する。

 



「敵が引き上げて行くぞっ?」



「攻め切れないと考えたのか?」



「よーしっ!!今度は我らが攻勢に出る番だっ!!!」



「散々好き放題しくれたツケをその身で払わせてやるっ!!」





 第7要塞で粘って篭城して居た帝国軍は、突然の第二合同部隊の撤退に、歓喜の声を上げて、守勢から攻勢に転じて行く。



「行くぞおぉぉぉぉーーっ!!」



「「「「「うおおおおおおーーーっ!!」」」」」



 怒号と共に生き残った8千の軍は、雪崩を打って要塞外へと出て行く為に、北門へと向うのであった。



「んん?」



「何だ、女が1人だと?」



 余りにも不信で有り、訳が分からない状況に戸惑う彼ら。



「げへへっ、そんなのは、どうでも良いじゃねぇかっ!!!」



「そうさ、襲ってきた連中は人身御供として、おの女一人を置いて逃げ果せ様って考えてるんだぜっ!!!」



「蛮族が思い付きそうな馬鹿な手だな。」



「全くだぜっ!」



「「「「「ガハハハハハっ!!」」」」」



 自分達こそが、世界の頂点だと思って居る彼らには、この様な頭の悪い発言が顕著に出ており、とても目立って居るのが、ローラーナ帝国軍と言う国軍組織だった。





 まあ、何所の世界の覇権国家にも、居そうな輩とも言えた。



「おっ、おい。」



「あ・・・ああっっ!あああっ!!」



「まっ!まっ、ままっ、まさか・・・・」



 一部の兵士や騎士、将校の一部が顔を真っ青にしていた。



「そそっ、そんなバカなっ!!ありゃ、多分・・いやっ!!間違いない雷帝だっ!!!」



「雷帝?何だそりゃ?」



「リナだっ!!リナっ!!!リナ・ミーサガ・リンバースっ!!!」



「だからっ!何処の誰だよっ!!!そいつはよぉっ!?」



「ドラサダ・・・・」



「ドラザダ???」





「「「「「えっ?まままっ、まさかっ!!あの噂の雷帝かっ!?」」」」」





 名前を耳にし、顔が真っ青になる若い兵士達は、狼狽していた。更には顔が、真っ青に成って行く。



「そうだっ!!今日は何て、ツキが無い日だっ!!!」



「あの連中がリナの関係者なら、あの化物染みた強さにも、納得が行くっ!!!」



「そう、我が帝国に取っての死神と言われて居る女だっ!!!くそっ!!、悪魔の様な奴らめっ!!!」



 どうでも良いのだが、彼らの上層部は日本国の事を少ない情報収集から得て居る筈なのだ。



 その日本が攻めて来たとは、誰も考えないのだろうか?



 しかしながらローラーナ帝国軍の末端には、上層部からの日本国の情報が、情報精査中と言う事も有ってか、全く伝わって居ない様であった。



 何れにしても、とある将校が悪態を付いて、自らの運命を呪った。



「雷光の魔術師に喧嘩を吹っ掛けたら、己の無能を悔やめっ!!」



「アセリアの頭の可笑しな聖光の天使に、罰を下されたなら自身の愚考を後悔しろっ!!」



「ドラグナー皇国のアイアン・ブラッド・プリンセスと戦場で出会ったら、戦神を呪えっ!!」



「白龍大帝に睨まれたのなら逃げられるとは、決して思うなっ!!」





「これ等の者達に、鍛えらし、雷帝に出会ったなら人生の終わりと諦めろって、世間では噂されて居る魔導師なのだっ!!」





「最近じゃ、冥界の王だろうと魔王だろうと、偉大なる天界の神々だろうと、いや、他にも破壊神、古代兵器だろうと、天空の彼方の怪物や異界の魔神王さえ、一撃で滅すると言う。」



「今では、世界最強の生物の一つである竜族の一匹が、奴の殺気と落雷を恐れて避けて跨いで、逃げ行くと言うのを見かけた奴が居るらしい。」



 何かまた、台詞が変ってるし、それに居るらしいってだけだよね。



 その噂話・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「兎に角、噂の絶えない女魔導師なのさっ!!」





「だから、ドラサダなのか?」





「そうそう、俺が知ってる話じゃ、途轍もない美女で、それに似合わず、凶暴で胸がデカイが態度もデカイっ!!」



「直にキレるし、ガメツイ、賊徒と帝国兵士をいびり倒す、ローラーナ帝国軍キラーと呼ばれてったけ?」



「奴の通り過ぎた跡は、草木も残さず、全て焼け野原の荒野と化して回る怪物の様な女ってらしいと言う噂も・・・・・・・」





 また、別の噂が流れて、噂に脚色が付け加えられ上に、余計なアレンジされて、尾鰭が付き捲って居る様だった。





「けどよ、その二股なんとか四つ股とか言う女の噂なんて所詮は・・・・・・・」



「だーかーらーっ!!ドラサだって言ってるだろがっ!!!」



「噂じゃ無いってのっ!!!」



「この要塞にも、あの女に、殺られて生き残った部隊の生き残りも多い。」



「真実だってっ言ってるだろうがっ!!」





 それを聞いて後づさりをし始める者達。



 だが、もう遅かった。



 目の前の雷帝様は、雑魚に過ぎない帝国兵達の脚色され捲くった悪口を聞いて、プッツンしてしまって居る。



 今更謝ろうが、逃げようが消し炭にされる事は、雷帝裁判の法廷で意義ありっ!!と弁護士が叫んでも、裁判官であるリナ自身が、確実にローラーナ帝国に人権はなーいっと言い放って、死刑執行が決定されて居た様な物である。



「ふふふふっ、うん、もう分かってる。」



「毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回毎回っ!!御丁寧なご紹介・・・・・どうも有難う。」



「で、そんでもってっ!!アンタ等全員っ!!死刑確定っ!!!!弁護の余地無しっ!!!!」



 リナは帝国軍の全ての者に向けて、親指で首を切る仕草を見せ付け、宣告する。



 死刑と・・・・・・・・・・・・・・・・・





「「「「「ひええええええええぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーっ!!!!」」」」」



「あのっ!!道端に転げ落ちていたっ!!黒焦げた死体の数々はああおああぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」



「ドラさっサダっの仕業っ!?」



「美人なのに性格は最悪、胸もデカイが態度も更にデカイっ!!」



「帝国と世界の最悪と災厄な敵。帝国いびりの帝国キラーっ!!」





「ドラサダのリナ・ミーサガ・リンバースうううううぅぅぅぅぅーーーーーーーーーっ!?」







「もう終わりだあああああぁぁぁぁぁーーーーーーーーっっっっ!!」







「うああああぁぁぁぁーーーーーーっっっ!!こっころっ殺されるうぅぅぅぅぅぅーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」







「おおおっ!!神よっ!!この我等に対して、如何して、この様な無慈悲な仕打ちはっ!!!!」





「もう、おそーーーーーーいいいぃぃぃぃーーーーーーーーーっっっっ!!!!」





 帝国軍の兵士らは、逃げたり腰を抜かしたり、神に祈ったりと様々な様相を呈して居た。



 リナは無慈悲にも、己が最も得意とする、雷撃魔法を撃ち放とうと呪文詠唱を始めた。





「我は風と天と請い願わんっ!!我と汝ら世界の理を操りて、我の前に立ち塞がる全ての愚かなる者共にっ!!」



 リナが呪文を唱え始めると、バチバチと手の平の中で、電撃が光輝いて居る。



「等しく雷帝の裁きを与えん事をおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!!!」





「サンダースレイィィィブウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっっ!!!!!」



 リナの放つ雷光魔法の輝きは、帝国軍8千人と要塞に向って閃光が解き放たれて行った。





 そして、激しい閃光と爆風が周囲を包み込む。





 ドッゴオオォォぉーーーーンン!!!!!と言う地響きと共に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





「来るぞっ!!!総員っ!!対衝撃閃光防御体制ええええええぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーっ!!!」



 井上一佐は、リナの撃ち出す最強魔法に付いての前もって説明を受けて聞いて居た。





 その威力と恐ろしさを今身をもって体験し、その凄まじい威力に驚愕してしまう。



 リナ生み出したご自慢の雷撃魔法の衝撃体制を作戦に参加する日シベ合同作戦軍第二部隊の全員に告げた。



「ぐううううぅぅぅぅ。」



「これは・・・・物凄いっ!衝撃だっ!!」



「耐えろおおおおおぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!!」



 丸で核弾頭が爆発したかの様な衝撃を襲い掛かる日シベ合同作戦軍第二部隊の面々は、ガタガタと車両や馬車が激しく揺れ、その震動に恐怖する。





 リナの放ったサンダースレイブで、グリクス第7要塞は半壊し、エレクドラリュウム・ゴーレム3体と陸竜騎兵隊は殲滅するのだった。



 奇襲作戦は大成功を収め、日シベ合同作戦軍第二部隊は、消滅から残った使えそうな物資を要塞の施設から引き上げさせると、意気揚々と引き上げて行くのであった。