アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月3日・午後12時30分頃・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国・南西諸島・沖縄諸島・沖縄県・那覇市・航空自衛隊・那覇基地・格納庫付近にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







さて、沖縄の那覇基地に、次々に着陸を果たした航空護衛艦あかぎ等の航空隊は、順次、格納庫近くの駐機場で整備を受けていた。





 格納庫では、先に戻っていた那覇基地の航空隊が整備をしていた。一方の沖縄県の主要な島に展開して居た陸自の第15旅団は、警戒態勢の解除と撤収作業に掛かって居た。





「市ヶ谷の本省と交援省の連名で、連絡が今入った。」





「現時刻を持って、警戒態勢解除との事だ。」





宮代信二旅団長の一言で、第15旅団の那覇駐屯地内の司令部は、沖縄県各地に展開する陸自部隊に、各部隊が所属して居る駐屯地への引き上げを命じた。





「ふぅーっ、取り敢えずは、我々の出番が無くて良かったですね。」







「ああ、そうだな。」



「我々が戦う時は、沖縄が80年前の如く戦火に巻き込まれ、あの戦争では経験の無かったくらいかそれ以上に成るかも知れない。」



「もしかしたら、沖縄の全島が火の海に成るかも知れん。」





「出番が無い事は、真に喜ばしい事だ。だが・・・・・・・・・・・・」





「はい、第15旅団としては、政府と防衛省に装備と人員など強化を具申しなければ成らなく成りそうですね。」





「でなければ6万人以上の軍隊の攻勢に耐え切れん。」



「海自の沖縄の地方隊の強化の方はされたが、この異世界の陸軍に対抗するには、もう少し、我が旅団が率先して防衛計画を立て、旅団を強化せねば太平洋戦争の時と同じ様に成ってしまう恐れが有るのだ。」





「はっ、直ぐに我が旅団幹部らと共に、沖縄に配置されて居る海自と空自と共に、新たに異世界に措ける沖縄防衛計画の作成に掛かります。」





「特に市民の避難計画を重視する。」



「町や田畑は焼かれても、時間を掛ければ元に戻るが、国民の命は、そうはいかん。」



「政府も離島での玉砕戦は、自衛官でも避ける様にと言って居る。」





陸自15旅団は、今回の帝国軍の攻勢に対して、対抗策の検討に入るのだった。





 何せ沖縄が、全大戦以来の最前線に立たされて居る事を沖縄に配置されて居る全自衛隊や沖縄県民も改めて痛感する事と成ったのである。





 平和と言う甘菓子は、決してタダでは無いのだから・・・・・・・





 沖縄県は、この度の国境紛争で、第二次大戦以来の続いた戦後の終わりの告げて居る事を感じ取って居たのだった。









アースティア暦 1000年・西暦2030年・6月3日・午12時45分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸・ユーラシナ大陸東側地方・ローラーナ帝国領・シャッポロ州・龍雲海沖近海域付近・ドラグナー皇国領海・龍雲海上近海付近・ローラーナ帝国海軍・イースト・ウッド・ブリヂストン第一外征艦隊・第4陣・総旗艦・魔導空挺戦艦ザージェント・ギワザン・ローラーナ帝国海軍・イースト・ウッド・ブリヂストン第一外征艦隊・ドラグナー皇国軍・レッドブラッドアイゼン聖龍騎士団空挺魔導艦隊・撤退合流集結地点海域にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  













 ドラグナー皇国軍・レッドブラッドアイゼン聖龍騎士団空挺魔導艦隊本隊のドラグナー皇国艦隊は、ユウリーンに率いられて帰国の途に付いて居る。





 その途中、ローラーナ帝国海軍・第一外征艦隊とレッドブラッドアイゼン聖龍騎士団艦隊は、合流を果たして居た。





 戦地と成った海域の地点で、6時間ほど将兵の救助を行い。



 生き残った飛竜隊を空挺戦艦の甲板に収容し、中破以上の戦艦を曳航しての撤退である。





両艦隊とも艦には、酷い損傷が数多く見られて居る。



 無傷の艦はと言うのは、ほぼ無く。



 海自の攻撃が中らなかったのは、的に偶々成らなかっただけで、爆風などで破片が刺さって居る所も有った。





ヴァロニカの副官であり、第1中隊と第1空挺艦隊の隊長たるユウリーンは、団長代行として、ローラーナ帝国海軍・第一外征艦隊の総司令官であるシドウ・ギワザンが乗艦して居る艦隊の総旗艦・魔導空挺戦艦ザージェント・ギワザンの司令室を訪れていた。





 ギワザンも、敵の射程範囲外まで撤退した事も有って、大分頭が冷えて来たて居り、冷静さを取り戻して居た。





「それで・・・・・ヴァロニカ王女殿下は、ニホン軍と停戦をしたと言うのだな?」





「はっ、閣下に措かれましては、真に口惜しいと事とは存じますが、既に我がレッドブラッドアイゼン聖龍騎士団艦隊とローラーナ帝国海軍・第一外征艦隊の双方は、残念ながらこの戦に関して、惨敗が確定したかと思われます。」





 ギワザンは深くを目を閉じた。





「口惜しいが貴様の言う通りだ。」



「艦隊が、この様な状態では、継戦する事は不可能だ。」



「停戦するのは、仕方が無いだろう。」



「それで・・・貴様の主であるヴァロニカ王女殿下は、今何所で何をして居られる?」





ギワザンは鋭い目付きで、ユウリーンを威圧する。





 それは、裏切りを警戒しての威圧であった。





「我が主、ヴァロニカ様は、軽症を負われましたが、無事だと言う事です。」と説明するユウリーン。



 ヴァロニカが軽傷を負って居ると言うのは大袈裟な話に過ぎないが、ヴァロニカが日本に留まる理由を一つでも増やす為の方辺で在り、帝国政府やギワザンから疑念を逸らす為に必要な事であるのだった。



「今後に付いては、ニホン艦隊と同行し、彼の国に赴き停戦とニホン軍に捕縛された者達などの処遇、その他の戦後処理交渉に向うとの報せが、先ほど伝令官が我が艦隊へと報せて参りました。」



「また、我々との連絡経路として、コヨミ皇国を使いたいと申し上げて置きます。」





「うーむ。」





 ギワザンは、ヴァロニカの申し出と行動に、疑念が無いかを考える。



 その懸念とはドラグナー皇国の旧同盟国であるコヨミ皇国が、戦後処理の仲介を行うからだ。





「閣下、もしや、いえ、疑われるのも仕方の無い事かと思われますが、今はこれが最上の手段だと思われます。」





「最上の手段?貴国の謀反を疑われると分かって居てか?」





「はい。」





そう、ヴァロニカの行動と提案は一つ間違えば従属国としての謀反を疑われかねないやり方だった。





「コヨミ皇国とは、袂を分かった国同士では有りますが、古い縁を大事にする国でも有ります。」



「我が国と二ホン国との交渉の仲介を快く引き受ける事でありましょう。」



「それも裏表の無い形であります。」



「それに交渉の相手・・・・・ニホン国と言うのは、未だ謎に満ちた未知の国家。」



「そして、我らからすれば、その所在地が不明の国でも有ります。」



「彼の国との最低限の交戦規定を設けて置く事も、立派なお手柄に成るのでないでしょうか?」





「しかしだな・・・・・・・・・・」





「それと言伝を申し使って居ります。」





「ほう、ヴァロニカ王女殿下は。何と言って居るのた?」





「もし、わが国と私に疑念を抱いて故国を火の海にする様な事を有らば、残存するドラグナー軍をニホン国の力を得て、東方地域の帝国軍を一掃し、何れは貴様と皇帝、皇族を討ち尽くす。」





「貴様に、その覚悟を有るならば、さっさとしたい様に好きにしろっ!!!と、仰って居られまする。」





「ぐっ!それ成らば致しかたあるまい。」



「私の権限の範囲内で、帝国東方軍総司令部に上申して置く。しかし、それだけでは足りない。」





ギワザンもまた、ヴァロニカを恐れている帝国人の一人でもある。



 だからヴァロニカが、脅し文句を突きつければ、それに屈するしか無いのであった。



 ヴァロニカは、帝国の国力に屈したのであって、帝国自体に屈した訳では、無いと堂々と言ってのけたのである。







「足りないと仰れますと?」







「そうだ、この際だから何でも構わない。」





「ニホン国に付いての情報を我が帝国に持ち帰って欲しいのだ。」





「ですが閣下、彼のニホン国とて間抜けで無い筈です。機密に触れる様な情報を帝国に、おいそれと手渡す様な真似をするとは思えません。」





「そんな事は、貴様に言われんでも、この俺でも分かり切って居る。」



「だから手に入る情報は何でも良いと言う事にする。」



「これならヴァロニカ王女殿下も立場も少しは良く成られるし、ニホンに関する情報も多岐に渡るから我々としても助かる上に、この情報で帝国上層部等からの何とかキツイお咎めからも脱却できるかも知れん。」



「それに何でもなら、二ホンの奴らも如何でも良いと思って居る情報が、我が方に取って実は有益と言う事が有るかも知れんのだ。」



「だから何でも良いから情報収集をして来て欲しいと伝えるのだ。」



「承知致しました。」



「それでは、我らはこれより帰国後に、コヨミ皇国へと向います。交渉は二ヶ月ほど掛かる事を見込んで居ります。」





「分かった。好きにするが良い。」





「期日まで纏まらなければ、報告するのだ。」





「その後を如何するのかは、私とドラグナー皇国政府を交えた上で決めるとする。」



「ご苦労だった。ユウリーン・キルカヤ中佐。」





「はっ!失礼致しますっ!」





 ユウリーンは、司令官室を退出する。





「ふっ、彼の化物姫が、何を企んで居るのかは、何れ分かる。」



「今は大人しくして居るが、あの小娘が本当に大人しくして居るのが不思議でならん。」



「まぁ、祖国を人質に取られて居る状態で謀反を起す素振りすら出きないだろうが、追い詰め過ぎるのも危険だ。」



「飼い殺しにして居れば、我が帝国には損は無いのだ。」



「何方にしても私の責任は無い。」



「くっくっくっ、精々己が立場を悪くしない様にするのだな小娘よ。」







ギワザンは、司令室の窓から東を見て、此処には居ないヴァロニカの動向と監視に余念が無いのだと呟くのであった。





 ドラグナー皇国は、未だ虜囚同然の従属国家なのである。



アースティア暦 1000年・西暦2030年・ 6月3日・午前13時25分頃・アースティア世界・ユーラシナ大陸東側地方・西太平洋地域・日本列島・日本国・九州地方・福岡県・福岡市・福岡市東部郊外地域・神部町・異世界国家交流総合支援省・大臣執務室にて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 









「くううぅぅぅーーーっ!!こりゃキツイよ。」





何所かの魔法学園の学園長の如く、書類に目を通して、判子とサインをして行く竜史。これが本当に地味に辛いのだ。





 だから、この手の職務をする人は息抜きに、暇を上手く作って仕事を脱け出す事が多かったりする。





「さっさと終わらせれば、夕方までには終わります。」



「他の職員も頑張って貴方を支えて居ます。」



「ですから日本に居る時くらいは、書類仕事をして下さい。」





大臣秘書達に、説明を受けながら公務に励む竜史。



 彼は国外と福岡で異世界の要人や担当官僚と会う機会が多いし、交援省は仲介人の仕事や御用聞きの雑務に長けて居る所だ。





 なので竜史不在か手が空かない場合の書類関連の最終判断は、東京の交援省副大臣の白洲志郎が引き受けている。





 竜史が福岡に戻って居る時は、この様な有様に成るのだ。其処へ内線電話が鳴り響く。 





「はい。竜史です。」





「はい、はい。分かりました。」





「すみません。ちょっと席を外します。」





「何か有りましたか?」





「ちょっと西方で、ダバ派遣艦隊が向かった先で厄介事があったらしいのです。」



「もし、間に合わない分は、白洲さんに頼んで貰って良いですか?」





「そう言う事でしたら、仕方ありませんね。」





「それとヴァロニカ殿下との会談と視察先の手配の状況は?」





「それは問題無いとの連絡が来ております。」





「高見大臣の会談の指定先である下仁田町の日勝軒のマスターも了承済みです。」





 竜史はヴァロニカとの密談場所として、行きつけの洋食屋さん会場の提供をお願いして居た。



 快く引き受けてくれた日勝軒のマスターは、まさか後に自分の店が歴史的な対談をした場所として、国指定史跡として登録されてしまうとは、夢にも思わなかったのであった。

 





「有難う御座います。それでは・・・・・・・」







竜史は執務室を出て行く。



 果たして西方でダバ派遣が向かった先での厄介事とは、一体何であろうか?



 この電話には、日本国に別の戦端の火蓋が切られ様とする前触れなのであった。