後世の個人が書き記した歴史書にコーキン日誌と言う物が有ります。



 その書物中には、ドラグリア白龍大帝国の大帝たるエリノア・ドラグリアこと、通称名エリンが、アースティア大戦終結に向けた本格的に表舞台に出始めた出来事が書き記されて居ました。





 エリンは、表向きには、勇名が轟き、知的な白龍大帝として知られて居ますが、隠居後に高見竜史に嫁いだエリンを良く知って居る高見家では違った話が伝わって居るそうです。





アースティア暦1000年・6月2日・早朝未明の事でした。





 その日、ドラグリア白龍大帝国の大帝たるエリノア・ドラグリアこと、通称名エリンは、南方の国々に潜伏させて居る諜報部隊から送られて来た、各国々の情勢の定期報告を聞いて居ました。











 諜報部隊は、他の亜人族と竜人族の一部の種族に備わって居る人の姿への変身能力を駆使して諜報活動を行って居る事は、公然の秘密であり、それらが居るかも知れないとの噂が今日の時代でも囁かれる居ります。







 その中で白竜人族こと、ホワイト・シャイニードラグリア族は、最強の種族と謳われる色竜人族の一角の一種部族の一つです。







 色竜人とは、世界各所に居構えている色を持った肌の竜人族達の総称で、白龍帝・赤龍帝・黒龍帝・黄龍雷帝、紫龍帝・緑風龍帝・青龍帝と様々な色彩の竜人族が居り、白竜人の長たるエリンもその一人なのです。





 この日から続くエリンの足取りを日記に書いた人物が居ました。



 それはドラグリア白龍大帝国軍・統合将軍にして、ドラグリア白龍大帝国・国軍総務省を兼務するエリンの親友たるユキカゼ・コーキン。





 後にコーキン日誌と言う日誌が、ユキカゼの遺族たちによって、コーキン家の蔵の中から発見され、アースティア大戦初期に措けるエリンが何故、二ホン国と独自に接触が出来のか?を知る貴重な歴史的資料と成って居ますが、その内容を知った歴史家たちらは、大笑いしたらしく。



 日誌に書かれて居た出来事の真相を確かめるべく、隠居後に高見竜史に嫁いだエリンを良く知って居る高見家に尋ねに行く事に成ったでした。



 するとエリンの子や孫たちらは、大笑いで話してくれたそうです。



 家に良く遊びに来て、色々と遊んでくれたユキカゼおばちゃんが、若き日に、そんな愚痴を日記帳に書いて憂さ晴らしをして居た事にでした。



その日記は以下の通りと成って居ました。



「アースティア暦1000年・6月2日・早朝。天気は晴。」



「この日は、あのエリンの奴が面倒な煩わしい気性が騒ぎ出した・・・・・・くっ!!今から思い出しても腹が立つっ!!」



「何でっ!!何時もっ!!何時もっ!!何時~もっ!!面倒くさい騒動にっ!!この私が巻き込まれなきゃ成らないんだっ?!」と言う文面から始まって居た。



「そう、あの日は、朝の朝礼報告会の中で・・・・・・・」と続き、その日の朝からのあらましが書き記して行くユキカゼ。







「南方・西方・東方諸国の情勢報告は以上です。詳細は提出した報告書をご覧下さい。」











「ご苦労であった、下がって良いぞ。」











「はっ!」











 配下を見送ると、近くに居る直臣らと受けた報告と報告書の中身に付いての話が始まります。











 その相手は、この国の総司令官を意味するドラグリア白龍大帝国軍・統合将軍にして、ドラグリア白龍大帝国・国軍総務省を兼務するエリンの親友たるユキカゼ・コーキンが執務室に残り、コヨミ皇国に来たと言う鋼鉄の艦隊と鋼鉄の車の軍隊の報告を精査し始めるのでした。















「かかかっ!!彼のコヨミ皇国内が、何やら面白い事に成っとる様じゃのう。」











「面白がって居る場合かっ!!今の状況では、敵か味方か分らないのだろう?」











 キツイ、ツリ目を更にキツくした目で睨むユキカゼ。











 だが、そんな程度では動じないエリンは、満面の笑みでニヤニヤと笑いながら報告書を読んで居た。











(あ~あ~、エリンのあの目は、新しいオモチャを見つけた時の顔付だ。)







(くくぅぅっっ!!胃がっ、胃がっ、胃がっ痛いっ!!これはきっとロクでもない事に成るぞっ!)











 目の前に居るエリンは、ユキカゼとは500年以上もの付き合いのある親友だった。











 自由奔放の性格して居るその親友の行動に、ユキカゼは、頭痛所か胃痛を起こさせる悩みの尽きない相手だった。



(ううっ!!思い返しただけで、腹が立つのを通り越してっ!!胃が痛く成って来たっ!!)





(エリンは、新しいおもちゃや遊びを見つけると、それを直ぐにでも手に入れたい、取りに行きたいと言って、居ても立っても居られなくなって、飛び出して行く悪癖が有る。)



(それも友人・知人・臣下を派手に巻き込んでだっ!!)



(本当に迷惑この上ないっ!!全くっ!!巻き込まれ身にも成って欲しい物だなっ!!)と日記帳に愚痴るユキカゼは、更にブツブツと呟きながらストレスを発散させるようにして書き記して行く。







「おおっ!そうであった。これを受けとって居たのじゃった。」











 彼女の懐から取り出したのは和紙製の手紙である。











 手紙の差出人はコヨミ皇国皇女である紅葉であった。











 それを見たユキカゼは、少々驚き目を丸くする。











「その手紙は?」











「コヨミ皇国の小娘からじゃ。」











「コヨミ皇国の紅葉様から?で、何と書かれて居るんだ?」











「それがじゃな。コヨミ皇国の近海に、異界からニホンなる国家が現れたと言うて来ておる。」







「更に南方にも、ニホンと同じ異世界から来た国々も在るらしいのじゃっ!」















「エリンっ!まさかっ!最初から知ってたのかっ?!何故それを早く言わないっ!」









「スマン、スマン。ツイツイうかっりして居っての。ちょっとだけ忘れて居たのじゃ!」







「忘れて居たでは・・・・・・・・」





(そうよっ!!忘れてじゃ無いわよっ!!知って居るなら早く言いなさいよっ!!もうっ!!昔から誰にも知らない、自分だけが知って居る事柄を自慢げに言いふらすのが面白いからってっ!!全くもって迷惑な奴だっ!!)と書いて行くユキカゼ。





「ごっ、コホン。それは・・・・由々しき事態では無いのですか?」











 ユキカゼは、悪戯ぽっく事態を面白がるエリンに大して怒るが、遠くでは従者や護衛の兵士が居る手前、親友としての態度から慌てて臣下としてユキカゼ戻るのだった。











「ユキカゼ、お主が懸念する様な事は起こらんっ!心配は無用じゃ!」











「何故ですか?」















「彼の国は、比較的温和な人種が治める国だと言う事が書かれて居る。」











「今は国交の交渉の最中だと言って居るのじゃっ!」











「各地の国家にも、似た様な手紙を送って根回しをしたとも書いて居る。あの小娘め、相変わらず打つ手が早いのう。」











「で、我らは如何が致しましょう?」











「そうさのう、折を見て接触するのが良いと思っておるのじゃっ!」











「ニホンとやらの判断材料は、コヨミ皇国の小娘とダバード・ロード王国の小娘の動きが活発に成って来て居るとの報告も在るからの。」











「その関係事で、面白い事が起こりそうなのじゃっ!」











(うっかりが多い割には、相変わらず耳の早い奴っ!こう言う所が癪に障るのよね。はぁ~・・・・・・・)





(改めて思い返すが、うっかりが多い割には、相変わらず耳の早い奴っ!こう言う所が癪に障る奴だっ!!だがしかし、上手いこと、変な所で辻褄を合わすのが奴の悪癖でも良い所・・・・・と言いたいが、黙って置かない後で調子に乗るから言わないで置く・・・・)



(この日記帳も見られる訳には行かないからな。絶対にバカにするだろうし・・・・・・)と想い出と愚痴を徒然ままに書き記して行くユキカゼ。





 ユキカゼは、いい加減な性格とうっかりがちょっだけ多い親友の『てへぺろ』な態度を見て、半ば諦めた様に心の内で溜息を付いて居た。











「それで・・・・その面白い事とは?」











 ユキカゼは、自由奔放のエリンの考えが分らず首を傾げる。











「諜報情報庁と外交省の知らせ以外で動きがあった。」











「それはダバード・ロード王国のアーヤの小娘からの手紙が来て居っての。近々パイプ・ライン大河をニホン国の海軍が遡上するらしいとの事じゃっ!」







「アーヤの小娘は、こうも言って居ってな。ワシに共にニホン行かぬかと、誘って来て居るのじゃよ。」











「えええっ!?陛下もニホンへですか?」







「アーヤ様が、ニホンへと赴くのは、外交の為と理解が出来ますが、ニホン艦隊は、ダバード・ロード王国へ何をしに行くのでしょうか?」











「詳しくは書いて居らんが・・・・もし、パイプ・ライン大河で、ニホン軍に遭遇しても迂闊な行動を取るなと書かれて居るな。」











「まぁ、バカ正直に国旗を揚げて、船を動かして居れば良いらしいぞ。」







「それとな。ニホン国旗と軍旗の絵図、ニホン国の事が書かれた二ホン国内情報案内書籍が送られて居るな。」







「どれどれ・・・・・・・・・おおっ!!これは凄いのじゃ!!!」











「たた、確かに・・・・・・・・」











 送った絵図とは写真の事であり、日本政府がカタログと揶揄した本として印刷された中に載せられて居た物が送れられ来ていた。











 それを見た二人は、その内容に大変に驚いて居た。







 初めて見るフルカラー写真の絵図で、それ等を初めて見る彼女達に取って、それは衝撃的な内容であったのだ。





(二ホン国・・・・確かに二ホン国内情報案内書籍は、凄いものだったけど・・・・・・思えば、これを見た事で、更なる厄介ごとが舞い込んで来るのが決定的ななったのよね。)



(単純に二ホン国へ物見遊山・・・・・国交樹立に向けた視察旅行に行くだけだったらどんなに気楽で、楽な事だった事か・・・・はぁ~、また思い返しただけで、腹が立つのを通り越してっ!!胃が痛く成って来たっ!!)



(くくぅぅっっ!!胃がっ、胃がっ、胃がっ痛いっ!!くううっ!!)と、思い出すのを止めれば良いのにと思うが、何故か親友からの無茶苦茶な付き合いで溜まるストレスを発散させるに、日記帳で愚痴を書き捲くるのがストレス発散差と言う面倒くさい性格のユキカゼは、本人相手に言えない愚痴を書き捲くる。



 そうする事でストレスを大いに発散させてスッキリするのが、日常生活でのルーティンと成って居た。





「ほほう・・・・この絵図は、本物をそのまま写し撮った様じゃな。」











「ええ、素晴らしい技術ですよ。これは・・・・・・」











「これを元に国中に振れを出せっ!パイプ・ライン川にて所要の有る者は、ニホン軍の呼びかけに対しては、大人しく従えとな。」











「では直に報せを出しましょう。所で先ほどの面白い事とは、ニホンの動きに付いてなのですか?」











「その通りなのじゃっ!」







「そ・こ・で・じゃ。どうじゃ、これから一緒に近くに来ると言うニホン海軍を見物せんか?」











「ななな、なっ、何ですってっ!!!艦隊の見物っっっうううぅぅぅぅーーーーーっ!?」











「そっ、そそそれはっ!如何なる考えで言って居るのですかっ!?陛下っ!!!」











「まあまあ、そういきり立つな。ユキカゼっ!」







「公然と見に行くは言うては居らんから安心せいっ!」







「それでもですっ!大帝と言う身分を弁えて下さいよおっ!!もうっ!!!」







「まぁまぁ、お忍びで行くのから平気なのじゃっ!!龍化して野生の龍族に紛れ込んでの物見遊山よ。」











「はぁ? ええええええぇぇぇぇぇーーーーーーーーーっっっっ!!??」











龍化とは、そのままの意味である。











 竜人族が、凡そ15メートル以上の龍の姿に変身する事である。







 変身後のサイズは、個人によって自在で有るが、個々人に由るサイズの変化の差も有るが、下は15メートルから上は30メートル以上のサイズも有ると言う。











 変身は個人差がある為に、一概にコレと言う決まった全長は無いとされて居る。











「なっ、なななっ!!何を考えて居るのよっ!!エリンっ!!!」







「貴女は只でさえ、敵対国から目を付けられて居るのよっ!!!例え貴女を倒せる者が居ないにしてもよっ!!!」











 余りにも無茶で大胆な行いと思ったユキカゼは動揺して、すっかり親友口調に戻ってしまって居た。











「護衛の武官も付けるから平気じゃぞっ!!政務なら妹等に任せて置けば良いのじゃっ!」











「セレノア様に政務を全部丸投げって・・・・・はぁ~、貴女って人は・・・・何を言っても無駄なのよね。」











「無駄じゃっ!それにいい加減この姿も窮屈じゃし、偶には羽を伸ばしたいのう。」







 それは文字通り羽を伸ばすと言う龍人族達共通の性質の悪い笑えないジョークを言うエリン。











「でも、ダメですってっ!!!」











 当然、ユキカゼは、どんな理由で有ろうともお忍びを却下した。











「やだやだやだーいっ!!!やだやだやだやだーーーっ!!!行きたい、行きたいっ!!!行きたいっ!!!行きたーいっ!!!」











「ユキカゼのいけずーーっ!!!もうっ!!!執務室ばかりに籠ってはかりの詰まらん政務ばかりは飽きたーーっ!!!」







「わしだって偶には、羽を伸ばしたーいーっ!!!お外行きたいーっ!!!遊びに行きたいーっ!!!」











 本音が駄々漏れで、ジタバタと動き回り駄々を捏ねる姿は、子供かゲーム風の異世界に転移してしまったと言う、何所ぞの女中堅ギルド長の言う姿と変わりない。











 こう言うときだけ子供みたいな事を言う奴は、ある意味ズルいが憎めない物だろう。











「はぁ・・・・分ったわよ。それじゃ、近衛や警備兵を集めるから大人しくしてなさい。」











「やったーっ!!!流石は大親友のユキカゼなのじゃっ!!!愛して居るのじゃぁぁーーーーーーっ!!」











こうなったら梃子でも諦めないし、言う事も聞かないエリンだ。











 仕方の無いと呆れ顔で観念したユキカゼは、各方面に色々な理由を付けて連絡を取るのであった。











 そして、その日の内にドラグリアの国境に移動したエリンら一向は皇族と女性上級軍人が主に使用する秘密要塞であるバラウール大要塞に入るのでした。





(はぁ~、もう駄々っ子に成ったエリンは、誰にも止められない。)



(セレノアも、『ユキカゼ、何時も姉上が我が儘ばかり言って居てごめんなさい。でも、言い出したら親・兄弟・姉妹・親族が束に成っても言う事を聞かないので、諦めて下さい』と言って苦笑して居るし、後始末はユキカゼにっ!!って、何で私がエリンのお守りと後始末しなければならないのようっ!!)と書いて行く。



 そんな時である。



「お嬢様、エリン様からお呼び出しです。登城のご用意をっ!!」とコーキン家に仕えて居る侍女からの呼び出し声が聞こえて来た所で、ユキカゼは筆を置いて、日記帳を金庫へとしまったのであった。