「片倉さん、良かったじゃないですか。おめでとうございます」
何とか笑顔を作り、言葉を喉から引っ張り出した。不自然になっていなければいいが。
紡木の思いとは裏腹に、片倉の表情はまだ固い。何か気持ちを飲み込んでいるように見える。
「迷惑じゃなければ……パティスリーのオープンまでは霊界でお手伝いさせてもらってもいいでしょうか?」
片倉の提案は、意外なものだった。霊界にとどまるより、みんな早くに天界へ行きたいんじゃないのか。片倉も例外なくそうだと思っていた。
「いや、俺としては嬉しいですけど……あ、いや、その、開店準備を手伝ってくれるとありがたいですけど、片倉さんはいいんですか? 早くに天界へ移籍しなくても」
「……その、せっかく牧瀬さんと会えたのに、ここで途中離脱したくないなって。もしお邪魔じゃなかったらの話なんですけど」
「邪魔なんてとんでもない。片倉さんがいてくれたら百人力ですよ」
開店準備だけじゃない、本当に片倉にいてほしいのだ。そう言ってしまいたい自分を何とか抑える。片倉はモンブランの未練を解決出来たお礼を兼ねて、手伝うと言ってくれているのだろう。その気持ちだけでもありがたいのだ、これ以上望むものはない。
「良かった。宣伝も荷物運びも頑張るので、何でも言って下さいね」
「助かります。頼りにしてます」
片倉がいずれいなくなることは、今は考えたくない。紡木は切なくなる胸を宥めながら、片倉と握手をして笑い合った。パティスリーのオープンまで、余計なことは考えない。
翌朝、コーヒーを飲みながら、生きている時にあたためていた新作の案をパソコンに打ち出している時に、店のドアベルがカランコロンと鳴った。
「牧瀬さーん、書留です。印鑑お願いします」
え、また? 紡木はいぶかしく思いながらドアを開けた。最初に受け取った時と同じ、霊界庁からの書類封筒だ。一体今度は何の知らせだろう。
中から出てきたのは、「天界移籍勧告」。おそらく片倉が受け取ったものと同じ通知だった。
「え、なんで? 俺の未練は……」
思わず声が出る。片倉を見送ったあとも、この霊界にずっといるものだと思っていた。霊界に残る覚悟は出来ているはずなのに一体どういうことだろう。
霊界庁の五番窓口で説明を受けた時、支援対策が必要そうなら三番窓口へという言葉をもらった。自分の未練について何か情報を得られるかもしれない。
行ってみよう。自分の未練がどうなっているのか知りたい。
何とか笑顔を作り、言葉を喉から引っ張り出した。不自然になっていなければいいが。
紡木の思いとは裏腹に、片倉の表情はまだ固い。何か気持ちを飲み込んでいるように見える。
「迷惑じゃなければ……パティスリーのオープンまでは霊界でお手伝いさせてもらってもいいでしょうか?」
片倉の提案は、意外なものだった。霊界にとどまるより、みんな早くに天界へ行きたいんじゃないのか。片倉も例外なくそうだと思っていた。
「いや、俺としては嬉しいですけど……あ、いや、その、開店準備を手伝ってくれるとありがたいですけど、片倉さんはいいんですか? 早くに天界へ移籍しなくても」
「……その、せっかく牧瀬さんと会えたのに、ここで途中離脱したくないなって。もしお邪魔じゃなかったらの話なんですけど」
「邪魔なんてとんでもない。片倉さんがいてくれたら百人力ですよ」
開店準備だけじゃない、本当に片倉にいてほしいのだ。そう言ってしまいたい自分を何とか抑える。片倉はモンブランの未練を解決出来たお礼を兼ねて、手伝うと言ってくれているのだろう。その気持ちだけでもありがたいのだ、これ以上望むものはない。
「良かった。宣伝も荷物運びも頑張るので、何でも言って下さいね」
「助かります。頼りにしてます」
片倉がいずれいなくなることは、今は考えたくない。紡木は切なくなる胸を宥めながら、片倉と握手をして笑い合った。パティスリーのオープンまで、余計なことは考えない。
翌朝、コーヒーを飲みながら、生きている時にあたためていた新作の案をパソコンに打ち出している時に、店のドアベルがカランコロンと鳴った。
「牧瀬さーん、書留です。印鑑お願いします」
え、また? 紡木はいぶかしく思いながらドアを開けた。最初に受け取った時と同じ、霊界庁からの書類封筒だ。一体今度は何の知らせだろう。
中から出てきたのは、「天界移籍勧告」。おそらく片倉が受け取ったものと同じ通知だった。
「え、なんで? 俺の未練は……」
思わず声が出る。片倉を見送ったあとも、この霊界にずっといるものだと思っていた。霊界に残る覚悟は出来ているはずなのに一体どういうことだろう。
霊界庁の五番窓口で説明を受けた時、支援対策が必要そうなら三番窓口へという言葉をもらった。自分の未練について何か情報を得られるかもしれない。
行ってみよう。自分の未練がどうなっているのか知りたい。



