「わっ、沙月、同じクラスだったんだ!良かったぁ」
新学期早々に聞こえてきた明るい声が、私をいくぶんか落ち着かせてくれる。
「おはよう、来実。私も嬉しい」
期待と不安を胸に、とかこの時期にはよく言うけれど、私は不安だらけだった。けれど来実と話すことができて少しの期待が芽吹く。
「沙月がいなかったらどうしようかと思ったよ。私、友達作るの下手だから」
「そんなことないでしょ。来実は親しみやすいし、すぐに友達できると思うよ。このクラスでも」
「えぇ、そうかなあ」
「そうだよ」
彼女は昔から人当たりが良くて接しやすい。友達ができなさそうなのはむしろ私の方だ。
いつも光っている来実に対して、私は陰。目立たないし、話しても面白くない。
去年、一年生のときも、結局いつも来実とばかり過ごしていた。
「他にはどんな人がいるかな」
くるりと騒がしい教室を見渡してみる。新しいクラスメイトたちはさっそく雑談に花を咲かせていた。この学校はクラスが多いわけではないから、顔と名前だけ知っている人もいる。
「あの子ちょっとかっこいいかも」
私と同じように教室を見ていた来実の目線が、一人の男子に止まっていた。
「確かに……」
いかにも運動部という感じで、健康的な茶色い肌、骨格の良さ、整った顔。周りの友達と話す笑顔もまた眩しい。
そのとき、私の隣でふわっとした春のような匂いと風を感じた。私と来実の目が思わずそちらに吸い寄せられる。
さらさらした髪、白い肌、綺麗な顔立ち。
私は、彼のことを知っていた。
「望月くんだ」
来実が私の耳元で囁く。人気者なのか、彼は途端に多くの男子に囲まれていた。それを横目にしながらひそひそと尋ね返す。
「望月くん?」
「うん。望月桜くん。綺麗だし優しくて頭もいいって、去年から噂になってるよ。ていうか沙月隣じゃん!羨ましい……」
そんな人間が存在するんだろうか。でも、クラスメイトと談笑する望月くんからは、沙月の言う通りの印象を受ける。
「沙月、せっかく隣なんだから、後で話しかけてみなよ」
「えぇ……。ちょっと気にはなるけど」
「でしょ?望月くんと仲良くなれたら楽しくなりそうだし」
言いながら、来実は私のひとつ結びにした髪をいじっていた。
「来実、手……」
「あっ、ごめん、つい」
「相変わらず好きだねぇ」
「さらさらしてて気持ちいいから」
私の髪はそんなに触りたくなるほどの質ではないと思う。もしそれが本当だとしても、隣の望月くんには勝てない。
でも今はその癖のおかげで上手く話題を逸らせた。正直、彼のような目立つ人が隣にいると気疲れしてしまう。気になるけど、仲良くなれるとは思えない。
「あっ、先生同じだ」
来実の視線を追うと、担任の先生が入ってきていた。新しいクラスメイトたちはがたがたと座り始める。去年と同じ人だった。
「じゃあ沙月、また話そうね。今年もよろしく」
「うん。こちらこそ」
来実が去っていった後、私はちらりと隣へ目を向けた。
彼を初めてみたのは今日ではなく、春休み中のことだった。
四月の初旬、家は居心地が悪いから、いつものように散歩することにした。
昼間の人が少ない桜並木を当てもなく歩き、春の空気を感じていた。道の両側には、鮮やかに咲く桜と、高い建物が並ぶ。そこからまた少し進むと、若緑色の土手に囲まれた広い川と、川に沿うように植えられた、こちらも桜の木。
無意識に足を止めて、私はその景色に見入っていた。
少し視線を下げたとき、私の目が土手に座っている一人の男の子の姿を捉えた。
まるで春のように穏やかな雰囲気を纏い、静かに川を見つめる男の子――。
綺麗な人だな、と直感的に思った。今まで見たことがない不思議なタイプだったから好奇心が湧き上がってきたけれど、それを抑えて私はまた歩き出した。
あれは、間違いなく望月くんだった。これほど印象の強い人を他人と間違えるわけがない。まさか同い年で、しかも同じクラスになるなんて。
来実の言う通り、話しかけてみるのもいいかなという気になってきた。それどころか、話しかけてみたい。私の奥に封印していた好奇心が蓋を押し上げてくる。
もし望月くんと仲良くなれたら、この息苦しさと物足りなさを取り払うことにつながるかもしれない。
朝礼がおわって再び教室に喧騒が訪れたとき、私は思い切って隣の彼に声をかけた。
「あのっ、望月くん!」
自分から来実以外の人に話しかけることは、そういえば久々だった。話しかけることができたのは、望月くんに親しみやすさを感じられたからだ。
望月くんはゆったりとした動作で振り向いた。彼の纏う雰囲気に呑み込まれそうになりながら、言葉を押し出す。
「はじめまして。隣の席の、姫野沙月です。よろしくね」
「こちらこそ、よろしくね。望月桜です」
桜が咲くようにふわっとした温かい声。不思議と心が落ち着いた。綺麗で優しくて頭もいい、という噂はたぶん本当なんだろうなとも思った。
「姫野さんは去年何組だったの?」
話しかけることだけに集中していてその後の会話を考えられていなかったけれど、望月くんが話題を振ってくれて、会話を続けることができた。
そんな簡単な質問で良かったのに。
「一組だよ。望月くんは?」
「僕は三組だったよ。でも一組ってことは、同じクラスだった人そんなにいないかな?」
望月くんが教室を軽く見回して言った。
「確かにあんまりいないけど……なんでわかったの?」
もっとも昨年度も同じクラスだったとしても仲が良い人はほとんどいないのだけれど。
「友達から他のクラスのこともけっこう聞いてるからね」
「他のクラスにも友達いるの!?すごいね」
「そんなことないよ。たまたまみんなが仲良くしてくれてるだけだよ」
それは望月くんの人柄ゆえだと思う。私には全くないものだ。
「でも知り合いがいないと新しいクラスで大変だよね」
「うん。だから望月くんに仲良くしてもらえたらなって……」
言ってから、この言い方はなにか違うな、と思った。そういうのは心の中に置いておくものだ。仲良くしよう、と直球で言ってすぐに仲良くできるわけじゃない。
そんな後悔をしていたけれど、望月くんはにこっと微笑んだ。
「もちろん。仲良くしようよ。よろしくね」
なんて優しい笑顔なんだろう。桜のように温かく包みこんでくれるようだった。
「ありがとう!こちらこそよろしくね」
もしかしたら、望月くんなら――。
そんな淡く醜い期待が胸に浮かび、必死に打ち消した。
今年度初の学校が終わった後、ゆっくりとした足取りで道を歩く。帰るのがいつも億劫だ。
本当は通学時間が長くかかる高校へ進学したかったのだけど、結局それは叶わず、家から徒歩圏内にあるあの学校に通うことになってしまった。
歩きでは推しであるみぞれくんの歌も聴けないし、スマホも見れない。家ではゆっくり過ごせないから、電車内で休みたかったのに。私の力不足だから、仕方がない。
すっかり見慣れた住宅街が視界を埋め尽くす。
どれだけゆっくり歩いても、三十分ほどで家に着いてしまう。
静かに玄関のドアを開けて家に入る。
「あ、おかえりなさい」
「ただいま」
ちょうどすぐそこにいたお母さんに笑顔を作って答えた。
手を洗ってから、そのまま自分の部屋に直行する。
なにもお母さんのことが嫌いだとか、家族の仲が悪いわけじゃない。ただ単に、合わないだけ。
私たちは、どこにでもいる平凡な家族、のはずだ。それなのに、私はいつもなにかが足りないと思ってしまう。
はあっと大きく息を吐いてベッドに転がった。
今日は特に勉強することもないし、このままゆっくりしよう。なんとなしにスマホを手にとってSNSアプリを開くと、リスナー、つまりファンの人たちによるみぞれくんのイラストや写真が流れてきた。それを見ていると自然と心が緩んでいく。
私はその人たちほど絵の才能も写真を盛る能力もなく、見ているだけで十分だから、投稿はしていない。
みぞれくんはネットを中心に活動している、いわゆるVTuberで、癒し系の男の子。動画配信アプリのフォロワー数は優に十万は越えていて、人気は上がり続けている。私が彼を追い始めた頃は一万人くらいだった。みぞれくんが大きくなっていくのを見ることができていて嬉しい。
今夜もみぞれくんの配信がある。あの落ち着く声が聴けると思うと今から楽しみだ。推しがいるから頑張れる。推しって、なんて大きな存在なんだろう。
みぞれくんはいつも、いてくれるだけで私の心を満たしてくれる。
――その、はずだ。
みぞれくんはいつも私たちリスナーに好きを伝えてくれる。
親友である来実も私のことを頼って好きでいてくれる。
家族との関係も険悪とまでは行かない。満たされている、はずなのに。
スマホから手を離し、仰向けになってベッドに沈む。深い溜息が出た。
どうして私は、〝もっと〟求めてしまうんだろう。
この生活に不満はないのに、そんなありふれた日常に対し、息苦しさと物足りなさを感じずにはいられない。
窓の小さな隙間から、桜の花びらが一枚舞い込んで来るのが見えた。
それは音も立てずに部屋のどこかに落ちる。一枚だけでは、ただ綺麗なだけで、なにかを変えることもできない。
望月桜くんとも、きっと私の望むような関係を築くことはできない。教室で話して少し浮かれていた自分が恥ずかしい。
みんなに囲まれ、好かれている彼こそ、私から最も遠い世界の住人なのだから――。
新学期早々に聞こえてきた明るい声が、私をいくぶんか落ち着かせてくれる。
「おはよう、来実。私も嬉しい」
期待と不安を胸に、とかこの時期にはよく言うけれど、私は不安だらけだった。けれど来実と話すことができて少しの期待が芽吹く。
「沙月がいなかったらどうしようかと思ったよ。私、友達作るの下手だから」
「そんなことないでしょ。来実は親しみやすいし、すぐに友達できると思うよ。このクラスでも」
「えぇ、そうかなあ」
「そうだよ」
彼女は昔から人当たりが良くて接しやすい。友達ができなさそうなのはむしろ私の方だ。
いつも光っている来実に対して、私は陰。目立たないし、話しても面白くない。
去年、一年生のときも、結局いつも来実とばかり過ごしていた。
「他にはどんな人がいるかな」
くるりと騒がしい教室を見渡してみる。新しいクラスメイトたちはさっそく雑談に花を咲かせていた。この学校はクラスが多いわけではないから、顔と名前だけ知っている人もいる。
「あの子ちょっとかっこいいかも」
私と同じように教室を見ていた来実の目線が、一人の男子に止まっていた。
「確かに……」
いかにも運動部という感じで、健康的な茶色い肌、骨格の良さ、整った顔。周りの友達と話す笑顔もまた眩しい。
そのとき、私の隣でふわっとした春のような匂いと風を感じた。私と来実の目が思わずそちらに吸い寄せられる。
さらさらした髪、白い肌、綺麗な顔立ち。
私は、彼のことを知っていた。
「望月くんだ」
来実が私の耳元で囁く。人気者なのか、彼は途端に多くの男子に囲まれていた。それを横目にしながらひそひそと尋ね返す。
「望月くん?」
「うん。望月桜くん。綺麗だし優しくて頭もいいって、去年から噂になってるよ。ていうか沙月隣じゃん!羨ましい……」
そんな人間が存在するんだろうか。でも、クラスメイトと談笑する望月くんからは、沙月の言う通りの印象を受ける。
「沙月、せっかく隣なんだから、後で話しかけてみなよ」
「えぇ……。ちょっと気にはなるけど」
「でしょ?望月くんと仲良くなれたら楽しくなりそうだし」
言いながら、来実は私のひとつ結びにした髪をいじっていた。
「来実、手……」
「あっ、ごめん、つい」
「相変わらず好きだねぇ」
「さらさらしてて気持ちいいから」
私の髪はそんなに触りたくなるほどの質ではないと思う。もしそれが本当だとしても、隣の望月くんには勝てない。
でも今はその癖のおかげで上手く話題を逸らせた。正直、彼のような目立つ人が隣にいると気疲れしてしまう。気になるけど、仲良くなれるとは思えない。
「あっ、先生同じだ」
来実の視線を追うと、担任の先生が入ってきていた。新しいクラスメイトたちはがたがたと座り始める。去年と同じ人だった。
「じゃあ沙月、また話そうね。今年もよろしく」
「うん。こちらこそ」
来実が去っていった後、私はちらりと隣へ目を向けた。
彼を初めてみたのは今日ではなく、春休み中のことだった。
四月の初旬、家は居心地が悪いから、いつものように散歩することにした。
昼間の人が少ない桜並木を当てもなく歩き、春の空気を感じていた。道の両側には、鮮やかに咲く桜と、高い建物が並ぶ。そこからまた少し進むと、若緑色の土手に囲まれた広い川と、川に沿うように植えられた、こちらも桜の木。
無意識に足を止めて、私はその景色に見入っていた。
少し視線を下げたとき、私の目が土手に座っている一人の男の子の姿を捉えた。
まるで春のように穏やかな雰囲気を纏い、静かに川を見つめる男の子――。
綺麗な人だな、と直感的に思った。今まで見たことがない不思議なタイプだったから好奇心が湧き上がってきたけれど、それを抑えて私はまた歩き出した。
あれは、間違いなく望月くんだった。これほど印象の強い人を他人と間違えるわけがない。まさか同い年で、しかも同じクラスになるなんて。
来実の言う通り、話しかけてみるのもいいかなという気になってきた。それどころか、話しかけてみたい。私の奥に封印していた好奇心が蓋を押し上げてくる。
もし望月くんと仲良くなれたら、この息苦しさと物足りなさを取り払うことにつながるかもしれない。
朝礼がおわって再び教室に喧騒が訪れたとき、私は思い切って隣の彼に声をかけた。
「あのっ、望月くん!」
自分から来実以外の人に話しかけることは、そういえば久々だった。話しかけることができたのは、望月くんに親しみやすさを感じられたからだ。
望月くんはゆったりとした動作で振り向いた。彼の纏う雰囲気に呑み込まれそうになりながら、言葉を押し出す。
「はじめまして。隣の席の、姫野沙月です。よろしくね」
「こちらこそ、よろしくね。望月桜です」
桜が咲くようにふわっとした温かい声。不思議と心が落ち着いた。綺麗で優しくて頭もいい、という噂はたぶん本当なんだろうなとも思った。
「姫野さんは去年何組だったの?」
話しかけることだけに集中していてその後の会話を考えられていなかったけれど、望月くんが話題を振ってくれて、会話を続けることができた。
そんな簡単な質問で良かったのに。
「一組だよ。望月くんは?」
「僕は三組だったよ。でも一組ってことは、同じクラスだった人そんなにいないかな?」
望月くんが教室を軽く見回して言った。
「確かにあんまりいないけど……なんでわかったの?」
もっとも昨年度も同じクラスだったとしても仲が良い人はほとんどいないのだけれど。
「友達から他のクラスのこともけっこう聞いてるからね」
「他のクラスにも友達いるの!?すごいね」
「そんなことないよ。たまたまみんなが仲良くしてくれてるだけだよ」
それは望月くんの人柄ゆえだと思う。私には全くないものだ。
「でも知り合いがいないと新しいクラスで大変だよね」
「うん。だから望月くんに仲良くしてもらえたらなって……」
言ってから、この言い方はなにか違うな、と思った。そういうのは心の中に置いておくものだ。仲良くしよう、と直球で言ってすぐに仲良くできるわけじゃない。
そんな後悔をしていたけれど、望月くんはにこっと微笑んだ。
「もちろん。仲良くしようよ。よろしくね」
なんて優しい笑顔なんだろう。桜のように温かく包みこんでくれるようだった。
「ありがとう!こちらこそよろしくね」
もしかしたら、望月くんなら――。
そんな淡く醜い期待が胸に浮かび、必死に打ち消した。
今年度初の学校が終わった後、ゆっくりとした足取りで道を歩く。帰るのがいつも億劫だ。
本当は通学時間が長くかかる高校へ進学したかったのだけど、結局それは叶わず、家から徒歩圏内にあるあの学校に通うことになってしまった。
歩きでは推しであるみぞれくんの歌も聴けないし、スマホも見れない。家ではゆっくり過ごせないから、電車内で休みたかったのに。私の力不足だから、仕方がない。
すっかり見慣れた住宅街が視界を埋め尽くす。
どれだけゆっくり歩いても、三十分ほどで家に着いてしまう。
静かに玄関のドアを開けて家に入る。
「あ、おかえりなさい」
「ただいま」
ちょうどすぐそこにいたお母さんに笑顔を作って答えた。
手を洗ってから、そのまま自分の部屋に直行する。
なにもお母さんのことが嫌いだとか、家族の仲が悪いわけじゃない。ただ単に、合わないだけ。
私たちは、どこにでもいる平凡な家族、のはずだ。それなのに、私はいつもなにかが足りないと思ってしまう。
はあっと大きく息を吐いてベッドに転がった。
今日は特に勉強することもないし、このままゆっくりしよう。なんとなしにスマホを手にとってSNSアプリを開くと、リスナー、つまりファンの人たちによるみぞれくんのイラストや写真が流れてきた。それを見ていると自然と心が緩んでいく。
私はその人たちほど絵の才能も写真を盛る能力もなく、見ているだけで十分だから、投稿はしていない。
みぞれくんはネットを中心に活動している、いわゆるVTuberで、癒し系の男の子。動画配信アプリのフォロワー数は優に十万は越えていて、人気は上がり続けている。私が彼を追い始めた頃は一万人くらいだった。みぞれくんが大きくなっていくのを見ることができていて嬉しい。
今夜もみぞれくんの配信がある。あの落ち着く声が聴けると思うと今から楽しみだ。推しがいるから頑張れる。推しって、なんて大きな存在なんだろう。
みぞれくんはいつも、いてくれるだけで私の心を満たしてくれる。
――その、はずだ。
みぞれくんはいつも私たちリスナーに好きを伝えてくれる。
親友である来実も私のことを頼って好きでいてくれる。
家族との関係も険悪とまでは行かない。満たされている、はずなのに。
スマホから手を離し、仰向けになってベッドに沈む。深い溜息が出た。
どうして私は、〝もっと〟求めてしまうんだろう。
この生活に不満はないのに、そんなありふれた日常に対し、息苦しさと物足りなさを感じずにはいられない。
窓の小さな隙間から、桜の花びらが一枚舞い込んで来るのが見えた。
それは音も立てずに部屋のどこかに落ちる。一枚だけでは、ただ綺麗なだけで、なにかを変えることもできない。
望月桜くんとも、きっと私の望むような関係を築くことはできない。教室で話して少し浮かれていた自分が恥ずかしい。
みんなに囲まれ、好かれている彼こそ、私から最も遠い世界の住人なのだから――。



