小野寺くんは私の世界を変えてくれたんだ。


「桂木さん、何か飲み物取りに行かない？」


人気者の小野寺くんと席が離れてしまい、積極的に話しかけてくれるクラスメイトたちにそろそろ限界を感じていた頃、学年一の美人だと噂されている学級委員長の高峰凛々(たかみねりり)ちゃんが話しかけてきて、ひゅっと言葉を失う。

小首を傾げている仕草で、私の中途半端に伸びっぱなしにしているセミロングの髪とは違い、サラサラの上質な長い黒髪がさらりと揺れていてそれだけで見惚れてしまう。


「桂木さん？」

「ふぁ、は、はい…！い、行きます…」


これ以上善良なクラスメイトたちに囲まれていたら、花に変換するのが限界を迎えまた喋れなくなってしまう。

ここは一度外に出て、リフレッシュした方が…。


「桂木さんは何飲む？歌歌ってると炭酸飲みたくならない？」

「え、えっと…た、たしかに…？う、烏龍茶にしようかな…」


クラスメイトたちに囲まれていた時よりも、ずっと緊張してしまうのはなぜだろう。

高峰さんを花に例えるなら、高貴なイメージがあるユリとかかな。

綺麗で色白な肌なんかもどこかユリを連想させる…。