そう言うことがわかっていたかのように、小野寺くんはにっと眩しく笑った。



「や、やっぱり、私…」


カラオケ店が近づくに連れて、やっぱり行くのをやめようかなという気持ちが強くなってくる。

もちろん行きたい気持ちだってあるけど、それよりも不安が膨らんできて心臓がさっきからとてつもなく速く脈打っている。

手汗だってじわりとかいてきて気持ち悪い。


「緊張してうまく話せないなら、相手を人間だと思わなければいいんだよ」

「に、人間だと思わなければいい…?」

「たとえば、相手が花だと思えばいい。さっきだって中庭の花が相手だったらスラスラ喋れてたただろ?試しに今目の前にいる俺をなんかの花に置き換えてみてよ」


小野寺くんを花に…。

じっと小野寺くんを見つめながら、なんの花が似合うんだろうと思い浮かべる。

明るくて眩しくて、真っ直ぐな人で。そんな小野寺くんはまるで、ひまわりのようだ。


「…本当だ。小野寺くんをひまわりだと思ってみたら、さっきまで感じてた緊張がちょっと解れたかも」 

「ふっ、ひまわり?俺ってひまわりっぽいんだ」

「あ、ご、ごめん…!失礼だよね…」