やっぱり、小野寺啓哉という人物は夢の中で私が作り出したイマジナリー的存在だったんだ。

もう二度と会うことができない…。


「そろそろお母さん戻ってくるだろうし、私はもう行くね。また学校で」

「あ、うん…!来てくれてありがとう」


泣きそうになるのを必死に堪えながら、なんでもないように凛々ちゃんに手を振り返す。


初めからわかっていたことだけど、小野寺くんがいないこの世界で生きていくなんて苦しい。

忘れていなかっただけまだマシだけど、たとえ夢の中だったとしても私の支えだった存在であることに代わりはない。

小野寺くんはどうして無理矢理幸せだった私の夢を壊してしまったんだろう…?

この世界で昏睡状態の娘に目を覚ましてほしいと願っていた私のお母さんとお父さんのため?

まだ一回も行けていない学校で待ってくれている優しいクラスメイトたちのため?


理由はなんにしても、小野寺くんは誰よりも優しいから、甘い夢の中に堕ちて二度と戻ってこれなくなりそうだった私をきっと苦しみながらも助けてくれたんだ。

幸せなことにも私を待ってくれていた人たちがこの世界にはたくさんいたから。

君だけがいないこの世界に…。


「そんなの意味がないじゃん…っ」