それでも思い出に残るような学校生活を経験したいという気持ちを諦められず、自力で頑張って高校受験も合格したというのに入学式の日に大きな手術が決まり参加すらできなかった。

成功する確率は低いけど、もしも成功すればもう苦しむことなく高校生活を謳歌することができるのだ。

医師からの提案に私は迷うことなく手術を受けることを選んだ。

お母さんとお父さんは心配していたけど、今のまま高校に行ったってまた入退院の繰り返しで苦しい日々は死んでるようなものだから、たとえ手術が失敗してしまっても構わないと考えていた。

お母さんが言うには昏睡状態だったけど今こうして起きられたということは、手術は無事成功したのだろう。

念願の高校生活を送れるのだ。


「桂木さん、起きたんだね。さっきそこでちょうど桂木さんのお母さんとすれ違って起きたこと教えてもらったの」

「…え?凛々ちゃん…?」


凛々ちゃんは小さな花束を抱えて病室に入ってくると、怪訝そうに首を傾げていた。


「あ、えっと…学級委員長の高峰さん、だよね?なんで、ここに…?」


この世界の私と凛々ちゃんは今初めて会うのだ。

名前呼びでいきなり呼ばれたら怪訝に思うに決まっている。


「同じクラスなんだから、お見舞いに来て当たり前でしょ?クラスメイトたちも早く桂木さんに会いたいっていつも言ってるよ」


ふと、前までは寂しかった病室に綺麗なたくさんの花が飾られていたり千羽鶴が置かれていて、クラスメイトたちや凛々ちゃんがこの世界でも気にかけてくれていた事実に胸が温かくなる。