「初めまして。俺は君と同い年の小野寺啓哉です」


…あれ？私、小野寺くんにこんなこと言われたことあったっけ…？

真っ暗な世界の中、小野寺くんの声だけが私の耳に鮮明に届いてきた。

だけどいつこんなことを言われたのか思い出すことができない。


なんとか思い出そうと考えているうちに、いつの間にかそんなことも忘れて真っ暗な沼の底に落ちていった…。


「ん…」


目を開けると、カーテンから漏れている光が眩しくて思わず目を細めながらベッド脇に置いていたスマホを手に取る。

珍しく今日はアラームが鳴る五分前に起きることができた。

むくっと起き上がり目をこすりながら、まだぼんやりとする頭を働かせる。

何か夢を見ていた気がするけど、よく思い出せない…。

そのままぼーと考えているうちに結局いつもと同じ時間になってしまい、慌てて朝の支度に取り掛かった。

＊

「あ、莉奈おはよー」

「おはよう、凛々ちゃん」


凛々ちゃんに挨拶を返しながら、まだ小野寺くんが登校してきていないことに気づく。