「親の都合?もしかして離婚とか?」

「違う違う!父さんも母さんもラブラブの熱々だよー」


早速クラスメイトから囲まれている小野寺くんの茶化しに、みんながどっと笑っていた。

その輪の中に入る勇気もなく、私は空気と化しながらこっそり会話を盗み聞く。


「じゃあなんだ?転勤とか?」

「まあそんな感じかな。てか、超ど田舎から来たから、東京すごすぎてびびったわー。コンビニとか等間隔にあるんだな!」

「あはは、そこからー?」


さりげなく話題を変えている小野寺くんに、もしかして転校してきた理由はあまり聞かれたくないのではないかと勝手に推測する。

私だったらプライベートをズカズカと聞ける勇気なんてないし、ましてや答えたくないことを聞かれた時にあんなにうまく切り返すことはできない。

うまく人付き合いができる人たちが、小野寺くんとも話せるんだろうな…。


「ねえ、桂木さんだっけ?桂木さんも放課後カラオケ行かないー?」

「…へ?」


考え事をしていたため、突然小野寺くんに話を振られ間抜けな返事をしてしまう。


「今日の放課後にみんなが俺の歓迎会してくれるんだって。お隣になったことも何かの縁だし、桂木さんも来ない?」