「んーわかんないんだけど、桂木さんが倒れてるって聞いて、気づいたら走ってたんだ。行かなきゃって思って…」


嬉しかった。もしかしたら凛々ちゃんが言っていたように、小野寺くんの中で私は少しだけ特別なんじゃないかと勘違いしてしまいそうになる。


「なんて、そんなの怖いよな。もうすぐ先生戻ってくるかもしれないし、俺ももう戻るよ。安静にしてて…」

「行かないで…」


気づいたら、小野寺くんの腕を掴んで引き止めていた。

もし小野寺くんが体育館に戻ってしまったら、また女子たちに注目されてしまう。

これ以上、小野寺くんのことを好きにならないでほしい…。

小野寺くんが誰かを好きになるかもしれない未来を想像したくない。

小野寺くんの特別に、彼女に…私がなりたい。


「…桂木さん?」

「私じゃ釣り合わないってわかってるけど、それでもこの気持ちだけは消えてくれないの。今だって見つめられてるだけでドキドキするし、触れたり触れられたりするだけで何も考えられなくなる…」


–––「ちゃんと伝えないと、後悔したって遅いんだからねー?」

後悔したくない。

自分の気持ちを伝えられるようになったのは、他の誰でもない小野寺くんのおかげだから。

また今までみたいに気持ちを押し殺してなかったことにするなんて、嫌だった。