「みーあかっ!今日はクッキーやでー!」
教室に入るなり、三つ編みの少女が美朱に抱き着いてくる。この少女は美朱の一年生の時からの親友『日向メグミ』
メグミは紙袋から手の平サイズの小包(こづつみ)を取り出し、美朱に手渡した。その中身はうさぎや小鳥などに型抜きされたクッキー。
「可愛ええな〜!流石、家庭科部員」
「やろ?また感想聞かしてやー」
「うん!ありがとう」
メグミの作ったお菓子を貰い、感想を言う。出会ってから変わらない美朱とメグミの習慣だ。
「なぁなぁ、そこのコンビニに出る不審者って知ってる?」
不意に、何かを思い出したように言った。
「え、何それ、、、出るの?」
「そう、自分の名前を名乗って唐揚げとガムと命を頂戴とか言うんやって、怖いよね〜」
「ちなみに名前は、、、?」
「おおいさん」
そのことが頭に引っかかって、授業内容は右耳から左耳に抜けていった。
その日の夜、赤ペンのインクが切れかかっていたので、近くのコンビニに買いに行った。
赤ペンを手に取り、シュークリームやプリンなどが並ぶスイーツ棚を眺めていると、一人の男性が入店してきた。
その男性はガムを一つ手に取り、レジに置く。
「おれねー、おおいさん。煙草とー、唐揚げとー、あとガムとー」
無邪気で奇妙な声音だった。
(出た!不審者おおいさん!!)
店員さんがレジを打って、商品を袋に詰めていると「あとねー、どっちかの命頂戴」とおおいさんは冗談じみた声で言った。
勿論、店員さんは苦笑いで対応する。
「じゃー、あの子の命頂戴」
ぐるりと店内を見渡したおおいさんは私をすっと指差す。
私が困惑していると、おおいさんは笑いながら小銭と針金細工をカウンターに置いてコンビニを後にした。
(ぶ、不気味な人やん、、、!!)
美朱もお会計を済ませ、コンビニの外へ出ると夜の冷たい風が頬を撫でた。
寒気を覚えながら帰路を歩いていると目の前に鉢植えが落ちてくる。
幸い、美朱は靴紐が解けたので結び直していたので当たらずに済んだ。
「あれー?何でたすかっちゃうのー?」
ひゅっと空気が喉を通り抜けた。
目の前に立っていたのはさっきコンビニでで出会ったおおいさん。
「何で、、、」
自分でも声が震えているのが分かる。きっとこの人は人間じゃない。
鞄から札を取ろうとして、サーッと血の気が引くのを感じた。
(ヤバい、、、お札忘れた、、、!)
妖怪や怪異と呼ばれるモノを祓うには霊符と呼ばれる特別なお札を使う。美朱はその霊符を作ることが出来る数少ない陰陽師だ。怪異から襲われやすい美朱を守ってくれる南天の役に立ちたくて自ら陰陽師になった。と言ってもまだ半人前だが。
おおいさんが近付いてくる。
「ひっ!」
霊符を持っていなければ、陰陽師であっても怪異を祓えない。
美朱は咄嗟に逃げようとしたが、足がもつれて上手く動けない。
「や、、、南天!!」
そう叫んだのと同時に、おおいさんが「ぎゃ」と短い悲鳴を上げて掴まれている感覚が消えた。
「美朱、大丈夫か!」
慌てた様子で美朱を助け起こしたのは、家にいたはずの南天だった。
美朱を抱き寄せると、ぎゅっと抱きしめて背中を撫でる。
「何となく心配で見に来たんだけど、、、良かった、間に合って」
ほっとしたように小さく呟く。
「ごめん、近くだからって油断してた、、、お守りも霊符も持たずに」
「大丈夫。僕も一人で行かせて悪かった」
南天はもう一度、美朱の安全を確かめるようにぎゅっと抱きしめる。
美朱はもう中学生なのだからコンビニに一人で行けて当たり前だ。南天は美朱を過保護に甘やかし、守ってくれる。そのことに安心感を覚えると同時に、未だ守られてばかりなことに申し訳なさも感じた。
「私、南天に守られてばかりやね、、、」
「良いよ、美朱を守るのは僕を役目だからね」
南天は美朱を慰めるように頭を撫でて、落ちていたコンビニの袋を拾い上げる。
「、、、茶菓子、多いね」
「アハハ、、、迷っちゃって〜」
「三日で全部食べてしまいそうだ。さて、帰ろうか」
教室に入るなり、三つ編みの少女が美朱に抱き着いてくる。この少女は美朱の一年生の時からの親友『日向メグミ』
メグミは紙袋から手の平サイズの小包(こづつみ)を取り出し、美朱に手渡した。その中身はうさぎや小鳥などに型抜きされたクッキー。
「可愛ええな〜!流石、家庭科部員」
「やろ?また感想聞かしてやー」
「うん!ありがとう」
メグミの作ったお菓子を貰い、感想を言う。出会ってから変わらない美朱とメグミの習慣だ。
「なぁなぁ、そこのコンビニに出る不審者って知ってる?」
不意に、何かを思い出したように言った。
「え、何それ、、、出るの?」
「そう、自分の名前を名乗って唐揚げとガムと命を頂戴とか言うんやって、怖いよね〜」
「ちなみに名前は、、、?」
「おおいさん」
そのことが頭に引っかかって、授業内容は右耳から左耳に抜けていった。
その日の夜、赤ペンのインクが切れかかっていたので、近くのコンビニに買いに行った。
赤ペンを手に取り、シュークリームやプリンなどが並ぶスイーツ棚を眺めていると、一人の男性が入店してきた。
その男性はガムを一つ手に取り、レジに置く。
「おれねー、おおいさん。煙草とー、唐揚げとー、あとガムとー」
無邪気で奇妙な声音だった。
(出た!不審者おおいさん!!)
店員さんがレジを打って、商品を袋に詰めていると「あとねー、どっちかの命頂戴」とおおいさんは冗談じみた声で言った。
勿論、店員さんは苦笑いで対応する。
「じゃー、あの子の命頂戴」
ぐるりと店内を見渡したおおいさんは私をすっと指差す。
私が困惑していると、おおいさんは笑いながら小銭と針金細工をカウンターに置いてコンビニを後にした。
(ぶ、不気味な人やん、、、!!)
美朱もお会計を済ませ、コンビニの外へ出ると夜の冷たい風が頬を撫でた。
寒気を覚えながら帰路を歩いていると目の前に鉢植えが落ちてくる。
幸い、美朱は靴紐が解けたので結び直していたので当たらずに済んだ。
「あれー?何でたすかっちゃうのー?」
ひゅっと空気が喉を通り抜けた。
目の前に立っていたのはさっきコンビニでで出会ったおおいさん。
「何で、、、」
自分でも声が震えているのが分かる。きっとこの人は人間じゃない。
鞄から札を取ろうとして、サーッと血の気が引くのを感じた。
(ヤバい、、、お札忘れた、、、!)
妖怪や怪異と呼ばれるモノを祓うには霊符と呼ばれる特別なお札を使う。美朱はその霊符を作ることが出来る数少ない陰陽師だ。怪異から襲われやすい美朱を守ってくれる南天の役に立ちたくて自ら陰陽師になった。と言ってもまだ半人前だが。
おおいさんが近付いてくる。
「ひっ!」
霊符を持っていなければ、陰陽師であっても怪異を祓えない。
美朱は咄嗟に逃げようとしたが、足がもつれて上手く動けない。
「や、、、南天!!」
そう叫んだのと同時に、おおいさんが「ぎゃ」と短い悲鳴を上げて掴まれている感覚が消えた。
「美朱、大丈夫か!」
慌てた様子で美朱を助け起こしたのは、家にいたはずの南天だった。
美朱を抱き寄せると、ぎゅっと抱きしめて背中を撫でる。
「何となく心配で見に来たんだけど、、、良かった、間に合って」
ほっとしたように小さく呟く。
「ごめん、近くだからって油断してた、、、お守りも霊符も持たずに」
「大丈夫。僕も一人で行かせて悪かった」
南天はもう一度、美朱の安全を確かめるようにぎゅっと抱きしめる。
美朱はもう中学生なのだからコンビニに一人で行けて当たり前だ。南天は美朱を過保護に甘やかし、守ってくれる。そのことに安心感を覚えると同時に、未だ守られてばかりなことに申し訳なさも感じた。
「私、南天に守られてばかりやね、、、」
「良いよ、美朱を守るのは僕を役目だからね」
南天は美朱を慰めるように頭を撫でて、落ちていたコンビニの袋を拾い上げる。
「、、、茶菓子、多いね」
「アハハ、、、迷っちゃって〜」
「三日で全部食べてしまいそうだ。さて、帰ろうか」



